矢野経済研究所
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2月16日、曙ブレーキ工業は国内で製造する自動車用ブレーキ製品の検査に不正行為があったと発表した。不正は国内4工場で約20年にわたって行われてきたとし、完成車メーカーに報告された19万件の約6割、11万件で不正が確認された。
国内メーカーの品質不正が後を絶たない。近年では2017年に発覚した神戸製鋼所のアルミ製品の事案が記憶に新しいが、これ以降も日産、SUBARU、宇部興産、日立化成、スズキ、KYB、東洋ゴム、住友重機、IHIなど、日本を代表するメーカーやその関連会社においてデータの改ざん、試験条件の逸脱、試験の未実施が相次いで発覚する。いずれも一定期間以上の長期に及んでおり、 “メード・イン・ジャパン” に固有の構造問題であるとの批判は免れまい。

不正発覚直後の、「多大なるご迷惑とご心配」を詫びる経営トップの姿はもはや日本産業界の風物詩とも言えるが、繰り返される “お詫び” も一向に他山の石とはならないようだ。
今回、曙ブレーキの記者会見では「製品の性能に問題はなく、リコールには発展しない」とのコメントがあったが、検査不正を起こした多くの企業に見え隠れするのは「機能的に必要な品質は担保されており、ゆえに問題はない」との自己正当化の論理である。もちろん、過剰品質を要求する側にも問題はあるが、所謂 “擦り合わせ” に象徴される日本のものづくり業界特有の取引慣習が双方に甘えと驕りの風土を醸成させてきたと言える。

2018年11月、日立化成の調査委員会もこの点に言及した。その一部を要約すると、「日立化成では “規格値を外れても実際の性能には影響がない” との慢心のもと顧客の要求には表面上従っておくという、言わば面従腹背の姿勢で不正が行われていた」と顧客に対する背信行為を指弾、過去の独禁法違反を引用しつつ、「顧客からの要求やプレッシャーに正面から向き合うことを避け、安易に顧客に迎合する姿勢が、一方で従業員をカルテル行為に走らせ、他方で検査データの改ざんに走らせた」と断じる。
そのうえで、「顧客の側にもサプライチェーンを展望した責任を果たすことと相容れない態度があり、日立化成も対応に苦慮したケースがある」と優越的地位にある顧客側の問題点を指摘、「サプライチェーンを構成するすべての当事者が協働して、我が国のものづくりの信頼回復を実現して欲しい」と結ぶ。まさにその通りである。しっかりしてくれ、日本製造業。

今週の“ひらめき”視点 2.14 – 2.18
代表取締役社長 水越 孝