酒井幹夫次期社長
(画像=酒井幹夫次期社長)

〈油脂事業、チョコレート事業に次ぐ第3の柱を育てる〉
不二製油グループ本社は1月25日、4月1日付トップ人事に関するオンライン会見を開き、清水洋史社長と、新社長に就任予定の酒井幹夫取締役上席執行役員ブラマーチョコレートカンパニー会長兼フジスペシャリティーズ社長が出席した。

酒井氏は、「清水社長が大きく舵を切ったESG経営を貫いていき、その具体化、具現化を進めていく。創業来の社是にも近いコンセプトであるプラントベースドフードソリューションズ(PBFS)の考え方を貫いて、油脂事業、チョコレート事業に次ぐ柱を育てたい。グローバル経営に大きく舵も切っているが、コロナ禍の厳しい状況の中、まずは経営基盤の強化を図り、引き継がれた意思と伝承、成長戦略を目指す」と強調した。

酒井氏は第3の柱について、「昨今のESG経営の背景となっている地球温暖化、環境破壊など、地球と人々の困りごとを、我々の持つ技術で解決していきたいというのが創業来の考え方であり、グループ憲法の『人のために働く』という考え方に通じる。当社の強みは加工技術にあると考えており、油脂の分別、調合、硬化、発酵、乾燥、乳化、酵素反応などを組み合わせ、植物性たん白もしくは植物性を主原料を中心とした加工食品事業でESG経営を進めるような事業にしていきたい。大豆ミートを発展させた事業をイメージしている」と説明した。

大豆ミートを含むPBF(植物性由来食)の展開について、「大豆は日本、中国、東南アジアでは昔からよく食べられていた。しかし欧米ではそうではなく、さらに昨今はアレルギー問題などで大豆を少々避ける傾向がある。植物性たん白原料を大豆だけに頼るのではなく、PBF(植物性由来食)であらゆる植物性たん白素材を検討したい。その一つとして、ドイツで水溶性えんどう多糖類の生産を(今春予定で)始める。もう一つは、多くのスタートアップが、大豆ミート食材を初めており、当社はプラスアルファで差別化できないかと考えている。技術はいろいろとある。工業生産ベースにもっていけるかが大きな課題であり、研究所を中心に解決し、事業化を目指す」との考えを示した。

直近の課題については、「2020年度はコロナで各事業、大きな影響が出ている。同時に、国際的なガバナンスの観点では未達の部分が多い。利益をもとにして新しい事業の立ち上げ、推進を行うため、まずは経営基盤の強化を直近の課題にしたい。コスト管理、収益確保を含めてエリア制をとっているが、本社とエリアの機能を明確に決めてKPIを進めたい。ガバナンスの面では、取締役会と経営会議の役割、使命に少しコンフリクトがある。役割分担と責任を明確にし、経営基盤を固めていく上で、第3の事業の柱を育てたい」とした。

経営基盤の強化では、「当社のチョコレート事業の会社のうち、日本の生産効率、利益率が圧倒的に高い。生産現場の効率性にかなりの差がある。まずは足腰を整えたい」とした。

〈清水社長「本質的に海外のガバナンスをわかっている人物、最適の人事」〉
清水社長はトップ人事の決め手について、酒井氏の経営手腕を挙げ、「コロナを契機とした新常態の中で時代が大きく進んでいる。これをあえてチャンスと呼ぶが、チャンスを果たしてくれるのは酒井さんである。本質的に海外のガバナンスをわかっている人物であり、最適の人事ができた」と強調した。また、「不易流行の精神で大きく変革することが、社長として最大のKPIだと考えていた。世界のエリアマーケティングの導入や、経営のサステナビリティ軸を強くしたり、PBFSを強く進め、実績もてきてきた。しかしまだ、利益になっていない。方法論がわかっている酒井氏に譲ることが重要」との考えを述べた。

清水社長は、4月1日付で取締役相談役に、6月開催の株主総会で取締役を退任し特別顧問に就任する。「(執行権のある)会長制度は私の代でやめる。私は知恵の手助けをする。とくにPBF、サステナブル、ESGについてアドバイスしたい」と今後の役割を話した。

〈大豆油糧日報2021年1月26日付〉