2021年1月1日、今治造船とジャパンマリンユナイテッド(JMU)は両社の営業部門と設計部門を統合した新会社「日本シップヤード」(出資比率:今治51%、JMU49%)をスタートさせた。
世界の造船市場は韓国勢と中国勢で計6割を占める。一方、日本勢は同2割、国内1位の今治と2位のJMUを合わせるとその半分、世界市場の1割となる。しかし、国費を投じて大型再編を進める中国、韓国勢に対して規模の優位は望めない。環境性能など高い技術力を武器に新たな需要開拓を目指す。
6日、同社は記者会見で「現時点で今治とJMUが保有する造船所の統廃合は考えていない」としたうえで「日本に造船所を残す」と表明した。しかしながら、受注環境は厳しい。2019年、世界の新造船受注は前年比の3/4と低迷したが、昨年1-6月期は新型コロナウイルスの影響もあり、その2019年の1/2以下に落ち込んだ。昨年6月末時点での手持ち受注量は1.05年分、安定操業に必要な受注量の半分である(日本造船工業会資料より)。
造船業は国内生産比率84%、部品国内調達率94%、地方生産率が93%に達する内需産業であり、地方経済とりわけ瀬戸内から九州沿岸地域の重要産業である(国土交通省海事局資料より)。ただ、上記のとおり眼下の市場環境は厳しい。業界再編は避けられないだろう。しかし、均衡と効率の追求では縮小は避けられない。
米中対立やパンデミックによる停滞はあっても長期的には海上輸送は拡大する。環境規制に対応した新造船需も見込めるはずだ。下請事業者をコスト競争に押し込めたままのサプライチェーンを維持することが「日の丸造船」の再生ではあるまい。2016年夏、当社は「2030年の日本を考えるプロジェクト」を実施した。ビジネスマンの4割が日本は “先端技術立国” あるいは “研究開発型ものづくり立国” を目指すべきと回答した。そう、海事クラスターの技術基盤をマザー工場として承継させ、技術力の高い地方企業の自立とグローバル競争力の強化を促すことも重要だ。現行産業構造からの脱却、言い換えれば、受注トン数や竣工隻数では測れないビジネスモデルを創造することが日本の造船業ひいては地方経済にとっての活路となる。
今週の“ひらめき”視点 1.3 – 1.7
代表取締役社長 水越 孝