元コミュ障アナウンサーが考案した 会話がしんどい人のための話し方・聞き方の教科書
(画像=fizkes/stock.adobe.com)

(本記事は、吉田 尚記氏の著書『元コミュ障アナウンサーが考案した 会話がしんどい人のための話し方・聞き方の教科書』=アスコム、2020年8月22日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

悩み 誰にでも使える会話のテーマが知りたい

武器 「相談する」というスタイルは万能!

第2章で触れた、大宮エリーさんによる矢沢永吉さんインタビューに学ぶ「武器」です。相談スタイルは、自動的に自分の「弱点をさらす」ので相手に親しみを持たれやすいというメリットもあります。「どうしたらいいでしょう?」というように、こちらから質問する形になり、相手からはそれに対する答えが返ってきます。必ず解決しなくてはいけないわけではないですし、話しているうちに、いいカードがドローできればそちらに話題を持っていってもいい。相手からいい回答をもらえたら、むしろ儲けものです。普段から、相談できる悩みのネタを用意しておくといいですね。事前に相手の得意分野を知った上で、それに合わせて相談ができると、なおよいでしょう。

× 自分 「○○さんってモテそうですよね。うらやましいなあ」

○ 自分 「 ○○さんってモテそうですよね。私は恋愛関係が全然ダメなんです。モテるための秘訣ってどんなことですか?」

○ 自分 「 ○○さんってモテそうですよね。私、今好きな人がいるんですけど、全然仲良くなれなくて。できることを教えてください!」

私自身の実践例をひとつお話しします。私は童顔のせいなのか、どうもスタッフに軽く見られがち。その悩みを番組のゲストに来てくださった方に相談してみたら、「ヒゲを生やせばいいんじゃないか?」という答えをもらえました。でも、私はもともとヒゲが非常に薄くて、あんまり生えない体質なんです。問題は解決しませんでしたが、「ヒゲ」という他愛ないきっかけから、他のインタビューとはまるで違う内容に発展しました。

相談スタイルは、する側もされる側も割合スムーズにお互いの経験や考え方、本心を出しやすいんです。長い間抱えている悩みは、誰にでもありますよね。TPOに応じていくつか出せるようにしておくと、かなり使える「武器」になります。

悩み 質問が下手で話がすぐ終わってしまう

武器 魔法の言葉「H O W 」を活用しよう!

質問を投げかけるのは会話を継続させるための基本スキルですが、「5W1H」のうち一番使えるのが「HOW=どうやって」です。「なぜ・どうして」と聞くところを「どうやって」に変えると、話が広がっていきます。それは、相手が「単語」で返答するのではなく、描写として「文章」で答えなくてはならないからです。より具体的で面白い情報を話してくれる可能性が高く、よいカードがドローできることになります。

× 自分 「○○さんは登山が趣味なんですね。なんで山がお好きなんですか?」

 相手 「ええまあ、何となく昔から……」

○ 自分 「 ○○さんは登山が趣味なんですね。山って、どうやって登るんですか?」

 相手 「 山にもよりますね。この間行った○○山は、まず登山口まで車で行くんですけど週末は駐車スペース確保が大変で。それで金曜の夜から……」

《実践例1》

サロン参加者:HOWで聞くと質問も具体的になるし、道具や経緯など細かいアイテム名が出てきて話が広がりました。聞かれている相手も、好きなことだとうれしそうに説明してくれます。

吉田:相手が楽しそうにしてくれるのは重要なことです。会話は相手の話を聞くことが目的ですから、楽しそうに話してくれたり、いろいろ細かく説明してくれたりしたら大成功ですね。結果として、いいカードもドローし放題。ぜんぜん知らないジャンルの話でも、自分の知っていることと思わぬ共通点が見つかったりもします。登山に興味がなくても車のことならわかることがあるかもしれない。登山用具には詳しくなくても、登山関係の店がいっぱいある御茶ノ水や神保町のことなら、「あそこにあるカレーのおいしいお店、行ったことありますか?」なんて話になるかもしれません。あなたの得意分野にも、そういうプラスアルファ、ありますよね?

《実践例2》

サロン参加者:新入社員に「どうやって会社まで通っているの?」と聞いてみたら、交通手段から経由地、途中にある便利な店、買い物の中身など、すごく話が広がって親しくなれました。

吉田:いいですね!大成功!初めての相手とのなんということのない会話だからこそ、HOWが有効的に活用できたんですね。新入社員も緊張をしていたでしょうけど、自分が経験していることなので比較的楽に答えられたのではないでしょうか。これであなたは、新入社員にとって「話しやすい先輩」という印象になったかもしれませんね。

「サロン」では、スーツを着ていた参加者に「今日はどのような仕事をしてきたのか?」と描写を促す実験をしたところ、「普段はオフィスカジュアルで勤務しているが、今日はたまたま取引先と打ち合わせがあった」という返答がありました。そこから話がどんどん広がりました。

どんな仕事?

広報の仕事

広報の仕事ってどんなことをするの?

広報と広告ってどんな違いがあるの?

最近自分も金曜はオフィスカジュアルになったんだけれど、服装困らない?

そのネクタイってどこで買ったの?……

などなど、会話が尽きることはありませんでした。HOWが引き出す物事の描写は具体を呼び、具体はそのまま会話のカードになるわけです。本当は「WHY」で答えを聞きたい場合でも、HOWを経由した方が、深くて本質的な返答にたどり着けたりもします。

元コミュ障アナウンサーが考案した 会話がしんどい人のための話し方・聞き方の教科書
吉田 尚記
1975年、東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。ニッポン放送アナウンサー。ラジオ番組でのパーソナリティのほか、テレビ番組やイベントでの司会進行など幅広く活躍。またマンガ、アニメ、アイドル、デジタル関係に精通し、「マンガ大賞」発起人となるなど、アナウンサーの枠にとらわれず活動を続けている。2012年に第49回ギャラクシー賞DJパーソナリティ賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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