広報戦略
(画像=STOATPHOTO/stock.adobe.com)

利便性の高い商品やサービスを生み出しても、世の中に認知されなければ意味がない。商品やサービスを必要としている人に広めるには広報戦略が必要だ。

今回は中小企業の経営者に向けて、広報戦略の立て方やポイント、事例などを解説していく。

目次

  1. 広報戦略に注目が集まる背景
  2. 企業が広報戦略を立てる理由
  3. 広報戦略の立て方から評価まで
    1. ステップ1.広報の対象と内容を決める
    2. ステップ2.広報の方法を決める
    3. ステップ3.広報戦略を実行する
    4. ステップ4.広報戦略を評価する
  4. 広報戦略のポイント3つ
    1. 広報戦略のポイント1.自社分析
    2. 広報戦略のポイント2.社員を巻き込む
    3. 広報戦略のポイント3.効果測定
  5. 広報戦略の成功事例2選
    1. 広報戦略の成功事例1.スターバックスコーヒー
    2. 広報戦略の成功事例2.ハーゲンダッツ
  6. 広報戦略は事業の成長を加速させるエンジン

広報戦略に注目が集まる背景

かつて人々は、実際に足を運んで商品を選んでいた。その頃は、競合他社と物理的な住み分けを行うだけで、自動的に顧客を確保できた。

しかし、現在はインターネットが存在する情報社会だ。人々は商品・サービスを買う前に、インターネットで情報収集・比較検討する。さらには通信販売も活用しつつ、場所を問わず商品・サービスを入手する。人々の購買行動は、数十年間で大きく変化した。

人々が情報を重視する以上、商品・サービスを提供する側としては、正しい情報を発信しなければならない。インターネット社会だからこそ、広報戦略の重要度が増しているといえるだろう。

企業が広報戦略を立てる理由

そもそも広報とは、「一般人に広く知らせること」をいう。つまり企業の広報とは、自社と商品・サービスを人々に広く知らせることだ。

現代において、情報を知らせる手法はさまざまある。看板、テレビCM、電車の中吊り広告、インターネット広告、SNS、インフルエンサーマーケティングなどがよい例だろう。

ただし、現代人は日ごろから多くの情報にさらされていることから、興味をひけなければ広告はスルーされてしまう。

したがって、情報を伝えたい相手を明確にするだけでなく、頻繁に利用される媒体まで知る必要がある。そこで不可欠なのが広報戦略だ。広報戦略とは、商品やサービスを広めるのに必要な行動や施策を組み立てることをいう。

広報戦略を立てることで、必要としている相手に自社の商品・サービスを届けられる。その結果、企業は利益を伸ばし、事業として発展していく。

広報戦略の立て方から評価まで

広報戦略にもとづいて効果的に情報を届けることで、商品・サービスが売れる仕組みを構築できる。広告戦略の立て方について解説していく。

ステップ1.広報の対象と内容を決める

広報戦略を立てるうえで、まずは伝える対象と内容を決める。定まらないと情報は正しく伝わらない。

広報の対象は、できる限り具体的にイメージしたほうがよい。たとえば、年齢・性別・住んでいる地域・趣味・嗜好などを想定し、商品・サービスの情報を届ける相手を明確にしていく。

広報の内容は、商品・サービスの強みを絞り込み、効果的な伝え方を含めて考える。

ステップ2.広報の方法を決める

広報の対象と伝える内容が決まったら、伝える媒体を検討する。

自社の公式HPを充実させたり、インターネット広告で公式HPへの流入を増やしたり、SNSでファンを獲得したりするなどの方法がある。伝える対象と内容によって、適切な媒体を選択しなければならない。

自社の広報活動について現状を知ることも大切だ。たとえば会社の認知度が高い場合、商品・サービスを印象づける広報が重要だ。

一方、商品・サービスが知れ渡っているのに自社の認知度が低いなら、会社の認知度を向上させる広報を意識する。

ステップ3.広報戦略を実行する

伝える対象と内容、方法が決まったら、広報戦略を実行する段階へと移る。

実行の際には、細かい表現によって対象の感情が変化するケースがある。したがって、担当者や責任者が異なるときには、情報共有を怠らずにメッセージ性を統一するように心がけるとよい。

ステップ4.広報戦略を評価する

広報戦略を実行したら定期的に効果の測定と成果の確認をする。具体的な分析対象は、イベントの集客数やメディアからの反応などだ。

結果によっては広報戦略を見直さなければならない。ブラッシュアップしていくことで、商品・サービスを必要としている人に正しい情報を届けやすくなる。

広報戦略のポイント3つ

広報戦略の立て方を紹介したが、効果を高めるために知っておくべきこともある。ここからは広報戦略の効果を高めるポイントを3つ解説する。

広報戦略のポイント1.自社分析

自社の現状を分析しないと、広報を打ち出す対象と伝えるべき内容を誤ってしまう可能性がある。

自社を理解しているつもりでも、客観的な視点に欠けているケースも少なくない。まずはフラットな姿勢で、情報をゼロからすくいあげることが大切だ。

自社分析の方法としては社内外を対象としたアンケートがある。用紙やWebなど手段は問わない。社員や取引先、顧客などから客観的な意見を集める。

集めた情報については、SWOT分析や3C分析といったフレームワークを活用して分析するとよい。

※関連記事
3C分析やSWOT分析を戦略立案に活かすには?効果を上げるための注意点も解説

広報戦略のポイント2.社員を巻き込む

広報戦略を成功させるには社員の協力が不可欠だ。経営者や広報担当者だけで取り組んだり、社員のモチベーションが低かったりすると、素晴らしい広報戦略でもうまくいかない。

少なくとも、広報の対象と伝える内容は全社員で共有しなければならない。

社員の協力が得られると、ターゲットと年齢や性別の近い社員から、集客媒体に関するアドバイスをもらえることもある。

商品・サービスを販売する営業部隊や、クレーム対応を引き受ける管理者から、良質な意見がもらえるケースもある。したがって、社員を巻き込んで広報戦略を実行することが大切だ。

たとえば、社員にアンケートや説明会を実施して、それぞれのモチベーションを引き出す。広報戦略の必要性を理解してもらい、一緒に創り上げていく感覚を持つことが大切だ。

広報戦略のポイント3.効果測定

広報戦略でもPDCAが大切だ。PLAN(計画)とDO(実行)を終えたら、必ずCHECK(評価)とACTION(改善)を行う。このサイクルを回すことで、広報戦略の精度を高められる。

効果の測定において、実感だけではあてにならない。広報戦略の実行前からKPI(重要業績評価指標)を設定し、数字を追いかけていくことが大切だ。

たとえば、問い合わせ数や成約数といった達成目標にかかわるKPIを設定し、広報戦略の実行前後で比較する。

問い合わせ数の項目はさらに細分化し、電話での問い合わせ数や公式HPからの問い合わせ数などまで分析する。HPのアクセス数やSNSのフォロワー数をKPIにするのもいいだろう。

広報戦略の成功事例2選

広報戦略は、効果的に運用できれば大きな成果を発揮する。そのことがわかる広報戦略の成功事例を2つ紹介していく。

広報戦略の成功事例1.スターバックスコーヒー

スターバックスコーヒーの事例は、広報戦略によって大きな成功を収めた代表例だ。当時の市場価格よりはるかに高い価格設定にもかかわらず、スターバックスコーヒーのブランドは全世界に数えきれないほどのファンを生み出した。

スターバックスコーヒーが力を入れたのはブランディングである。会社や商品のイメージを作り上げ、それを浸透させることを目指しながら、社員の意識づけも大切にしてきた。

その過程で獲得した多くのファンと、SNSを通じてコミュニケーションをとることで、関係性を強化した。

新作を出せば、ファンがこぞってSNSにアップし、商品を宣伝してくれる。パソコン作業や勉強の様子を撮影するとき、スターバックスコーヒーを写り込ませる人も多い。

スターバックスコーヒーが自社の商品を宣伝しなくても、ファンが自動的に広報を代行してくれる仕組みは見事だろう。

広報戦略の成功事例2.ハーゲンダッツ

ハーゲンダッツもSNSを通じた効果的な広報戦略を行っている。ハーゲンダッツは、フレーバーの人気投票に抽選プレゼントの仕組みを組み合わせた。人気ランキング1位を獲得したフレーバーに投票した人は、抽選でミニカップをもらえるという企画だ。

双方向性のある企画は人々の関心を集めやすい。企業が商品をアピールするより、ファンが商品の魅力を比較するほうが説得力は増す。

現在はSNSでユーザーと気軽にコミュニケーションをとれる時代だ。その機会を賢く活用し、広報戦略に活かしていきたい。

広報戦略は事業の成長を加速させるエンジン

商品やサービスを比較検討する際の情報源は、看板や電車の中吊り広告からテレビCM、そしてインターネットへと移っていった。

さらに細かくいえばインターネットにも、SNSや公式HP、オウンドメディアなどのさまざまな媒体がある。情報を取得して商品やサービスを購入・利用する流れは、今後も続くだろう。

したがって、広報ではターゲットと伝えたい内容、伝える方法を明確にし、必要としている人に正しく情報を届けることが大切だ。そのベースとなる広報戦略は、利益の確保、事業の拡大、企業の安定に不可欠なエンジンとなるだろう。

文・木崎涼(ファイナンシャルプランナー、M&Aシニアエキスパート)

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