独立を考えたらまっさきに読む医業の承継開業
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(本記事は、医師が開業時に、すでに存在する医院やクリニックをM&Aすることで承継し開業する方法を説明する伊勢呂哲也氏の著書『独立を考えたらまっさきに読む医業の承継開業』クロスメディア・パブリッシングの中から一部を抜粋・編集しています)

開業に備えて専門以外の勉強

開業及び承継するにあたって、自分が今まで専門としてきた診療科目をそのまま引き継ぐことができればそれに越したことはありませんし、多くの開業医の場合そうしているのではないかと思いますが、私の場合、これを伊勢呂式とさせていただくとすれば、自分の専門科目だけでなくプラスして診れることができればと考えました。私の専門科は泌尿器科ですがそれに加えてということです。

つまり他科の勉強をして一人の患者さんを広く、たくさんのアプローチから診られたらいいなというのが、そもそものスタートでした。もちろん消化器科の先生にお願いして勉強したわけですが、「真剣に勉強したいのです」と真面目に、少し図々しくお願いすれば、だいたい教えてくれると思います。例えば胃カメラなどは、模型を使っての練習を経て、消化器科の先生の合格をもらい経験を積んでいき、アルバイトなどの口があれば、どんどん出かけていきました。泌尿器の医師が練習したくらいで、胃カメラの仕事があるのかと思われるかもしれませんが、何も専門医でなくても腕と経験さえあれば働くことには問題ありません。次に、勤務医でありながら他科の勉強をする時間なんてあるのかということですが、実は勤務医は、結構時間がとりやすいのです。常に診察がつまっている日ばかりではありませんので、オペが終わって胃カメラを見せてもらったり、教えてもらったり、オペをやって他科の勉強、そしてまたオペをやってという具合に合間を有効活用しました。時間をつくろうと思えばその点は全然問題ありませんでした。私の場合は一日休みという日もありましたので、そんな日は一日中勉強していました。勉強の期間は1年半くらいで1年が過ぎたころからは消化器外来で胃カメラを使った診察もできるようになりました。そして残りの半年間はいろいろなところの消化器外来のアルバイトに行きまくり、そうして数をこなし経験を積んでいったわけです。現在でも、何かあれば当院に来てくれている消化器専門医に質問したり相談したりするという貪欲に学び取るスタンスは続けています。

この他にも、消化器科を引き継ぐにあたって必要だったので乳腺の先生にお願いして、乳腺の読影についても教えてもらい、マンモグラフィの認定Aも取得しました。また産業医の資格もとっています。本来なら当該科の医師を雇ったり、外注してもいいようなことでも、はじめから資金が潤沢にあったわけでもなかったため、なんでもかんでも外注するというわけにはいかなかったという事情もあります。

現在は、診察よりも経営者の方面に力を入れていきたいという考えもあり、マンモグラフィなど数が増えてきているものは他の人に任せて、自分はあまり手を動かさないようにしていますが、やはり他人にお願いするにしても責任をとるという立場である経営者自身が知っておかなければいけないと考えています。私自身が他科にもかかわらず一生懸命勉強し修得する姿があって、はじめて周りも他科を診療科目として標榜することに納得するものだと思っています。

独立を考えたらまっさきに読む医業の承継開業
伊勢呂 哲也
大宮エヴァグリーンクリニック院長。名古屋大学医学部医学科卒業。JAあいち豊田厚生病院初期研修医を経て、JAあいち豊田厚生病院腎臓泌尿器外科に勤務(若手研究B 科研費取得)。その後、2014年に医療法人仁生会高木病院、医療法人誠高会おおたかの森病院を経て現職。おおたかの森病院では、泌尿器科を新規の診療科として立ち上げ、科の長として運営に携わる。2019年、第三者承継によって大宮エヴァグリーンクリニック院長に就任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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『独立を考えたらまっさきに読む医業の承継開業』シリーズ
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