『ASEAN M&A時代の幕開け』
(画像=Natee Meepian/stock.adobe.com)

本記事は、日本M&Aセンター海外事業部の著書 『ASEAN M&A時代の幕開け』(日経BP 日本経済新聞出版本部)より一部を抜粋・編集しています。

広義であれ狭義であれ、海外進出の選択肢としてM&A戦略が最も有効だとの認識が急速に広まっている。

M&Aは実際に活動している企業を買うのだから、生産も販売も即戦力の経験者集団を使うことができる。しかも、今あるマーケットにダイレクトに参入するスピード感のある企業成長を可能にする。まさに時間を買う戦略だ。

特に海外企業とのM&Aは、ビジネスの舞台を広げ、規模拡大やシェア拡大をもたらす。 人材や設備、ノウハウなど、自社にないものが手に入る。ビジネス環境は今、変化の時代、不確実性の時代といわれるほど目まぐるしい。経営の多様化は強みになる。また、成長途上の地域に入り込むことで、風向きを即座に読み取り対応することができる。経営のフットワークが軽くなるのも大きなメリットだ。

一方で、まとまった資金をつぎ込むため、失敗したときのリスクが高まる点はデメリットといえる。それだけに、M&A成立後、期待通りの成果を上げられるよう、しっかりした企業戦略が必要になる。さらには、それを遂行するキーパーソンも必須だ。

「ウチにはそんな人材はいない……海外企業の買収なんて手が出せない」

そんな中堅・中小企業経営者の声もよく聞く。確かに海外での仕事は国内とは異なり、各国それぞれのお国事情を踏まえたうえでの異文化交流になる。商慣習の違いや現地スタッフの管理、現地でのコンプライアンス(法令遵守)、言語の問題などたくさんのハードルがある。それらを乗り越え、両社の発展のための新しい経営方針を現地企業と共有し、それに即した経営の舵取りを共にしていかなければならない。

だが、「適当な人がいない」と考えてしまえば、極端な話100年経っても「適当な」人材は出てこない。大手企業だろうと中堅・中小企業だろうと、企業は新たな事業に乗り出すたびに人材を育て、従業員は期待に応えてきた。海外M&Aも同じことである。何より大切なことは、経営者が「やるぞ!」という意志を強く持ち、突き進んでいくことだ。

海外事業への情熱をあらゆる機会をとらえて社内に示し、自ら率先して現地へ赴いてほしい。強い想いが周囲を変えていく。当社がこれまで手掛けてきた案件を見ても、経営者自身のパッションが海外M&Aの成功を引き寄せるといっても過言ではない。海外M&Aは、まわりを巻き込むくらいの勢いでちょうどいい。従業員たちは、きっと応えてくれる。 もしどうしても不安がぬぐえないなら、人材不足を補う手段は他にいくつもある。

○M&A後、長期引き継ぎ期間を設ける。売り手企業のオーナーに、引き続き3~5年、経営に携わってもらえれば安心だ。
○株式を100%取得するのではなく、売り手企業(オーナー)に残しておく。またはマイノリティから出資する。どちらも継続して経営に携わってもらうための手段だ。
○経験のある外部の人材をヘッドハンティングする。
○会計税務は外注する。

足りないものを嘆いていても始まらない。信じて道を邁進すれば、未来は必ず開けるはずである。

ASEAN M&A時代の幕開け
日本M&Aセンター海外事業部 編著
1991年日本M&Aセンター創業。事業承継にいち早く着目し、中堅・中小企業向けにM&Aを通した支援を行う。 2013年、海外M&A支援業務に注力した海外支援室を設立。2016年シンガポール、2019年インドネシア、2020年ベトナムとマレーシアに進出し事業部として拡大。ASEAN主要国をカバーし、シンガポールでは最大級のM&Aチームに成長している。

編著者代表
大槻昌彦(おおつき まさひこ)
日本M&Aセンター常務取締役 兼 海外事業部事業部長
大手金融機関を経て2006年入社。主に譲受企業側のアドバイザーとして数多くのM&Aに携わり、自社の東証1部上場に主力メンバーとして大きく貢献。現在は海外事業部をはじめ、日本M&Aセンターグループ内のPEファンドやネットマッチング子会社等、M&A総合企業としてのグループ会社全体を統括する。

尾島 悠介(おじま ゆうすけ)
日本M&Aセンター 海外事業部 ASEAN推進課 マレーシア駐在員事務所 所長
大手商社を経て、2016年入社。商社時代には3年間インドネシアに駐在。2017年よりシンガポールに駐在し現地オフィスの立ち上げに参画。以降は東南アジアの中堅・中小企業と日本企業の海外M&A支援に従事。2020年にマレーシアオフィス設立に携わる。現地経営者向けセミナーを多数開催。

この章の執筆者

尾島悠介
株式会社日本M&Aセンター
マレーシア駐在員事務所長
尾島悠介(おじま・ゆうすけ)
大手商社を経て2016年日本M&Aセンターに入社。商社時代には3年間インドネシアに駐在。入社2年目よりシンガポールを中心にマレーシアやタイ、フィリピンのM&A案件を取り扱う。
現在はシンガポールを拠点に、アジア諸国の中堅中小企業と日本企業との海外M&Aに従事。2020年3月よりマレーシア駐在員事務所長に就任。
『ASEAN M&A時代の幕開け』(日経BP 日本経済新聞出版本部)シリーズ
  1. 劇的に成長しているASEANへ 今こそ、M&Aでさらなる可能性に挑戦を
  2. 海外M&Aはなによりも経営者が「やるぞ!」という意志を強く持つことが大切
  3. 既に高齢化社会に突入している国も。ASEANでも深刻な後継者難
  4. 【シンガポールの経済・M&A事情】安心できる国で、手堅く伸びる。高い付加価値を生む小さな国
  5. 【マレーシアの経済・M&A事情】良質の労働力プラス消費市場の魅力
  6. 【インドネシアの経済・M&A事情】リスクを取って、大きな成長を買う
  7. 【ベトナムの経済・M&A事情】遅れてきたASEANの大型新人
  8. 【タイの経済・M&A事情】巨大な日本人マーケットを持つ世界的製造国家
  9. 海外M&Aは相手の会社ではなくオーナー個人を評価すべし!積極的に関係を築く努力が必要