食品宅配市場は、子育て・共働き・高齢者のニーズに応えて成長を持続
~軽減税率適用のデリバリーサービスが充実、外食・ファストフード宅配市場が活況~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内食品宅配市場を調査し、業態別8分野の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。
食品宅配市場規模推移(主要8分野合計値)
1.市場概況
2018年度の食品宅配市場規模(主要8分野合計値)は前年度比102.8%の2兆1,399億円と推計した。2016年度に2兆円の大台に乗り、少子高齢化の進行で国内の食関連市場が縮小傾向にあるなか、堅調な伸びを示している。
少子高齢化や女性の社会進出といった社会的要請を受けて、食品宅配サービスは年々その重要性を増しているが、異業種のみならず、業態間の競争も激化している。
2.注目トピック
ミールキット(料理キット)市場
レシピ(献立)と調理に必要な人数分の食材(カット済みの肉や野菜、調味料などを含む)がセットになった「ミールキット(料理キット)」が好調である。“手作り”にはこだわりたいが、毎日の献立作りや買い物、調理には時間をかけられない現代人のニーズに応えた商品である。
ミールキット(料理キット)は従来、食材(惣菜)宅配分野の商材であるが、近年は生協やネットスーパーなどが参入して調理メニュー(献立)が拡充され、品質も向上している。主要なユーザー層は、家事(調理)の時短ニーズが高い子育て・共働き世帯であるが、昨今は高齢・単身世帯の需要も高まっており、参入各社は大きな成長を見込んでいる。
需要が拡大するミールキットの利用実態を把握するため、2019年7月に三大都市圏(首都圏・中京圏・近畿圏)在住の女性(20代~60代以上)のミールキット利用経験者1,090名を対象に、インターネットアンケート調査を実施した。「ミールキットを利用する理由」(複数回答)について、「毎日の献立を考えるのが面倒」(46.7%)が最多で、次いで「料理に時間をかけたくない」(35.7%)、「食材が余らない(ゴミにならない)」(31.0%)であった。本調査結果からは、調理にかかる時間や手間をできる限り削減したいという時短ニーズに加えて、余計な食材を買って余らせたくない(ゴミにしたくない)という需要も高いことが示された。
3.将来展望
食品宅配市場規模(主要8分野合計値)は、引き続き順調に推移し、2023年度の市場規模は2018年度比113.0%の2兆4,172億円に達すると予測する。
少子高齢化と女性の社会進出、ライフスタイルの多様化を背景に、食事や食品の宅配需要は確実に増加しており、食品宅配市場は成長を続けている。今後も食品宅配はシニア層や共働き世帯を主要なターゲットに日常利用が加速し、生活に不可欠なサービスとして定着するものと考える。