これまでは、「着用したままだと失礼」という認識のあったマスクも、コロナウィルスの影響によって「着用が当たり前」の時代になった。

ただ、WITHコロナ時代に突入してから、まだ日が浅いということもあり、ビジネスマナーとして確立していない分、判断に迷うところもあるのではないだろうか。

そこで、コロナ時代のマスクの取り扱いをはじめとした訪問先でのルールについて説明したい。

WITHコロナ時代のマスクの取り扱い

マスクはつけたままが基本

実は、室内では基本的にマスクをずっと着用したままが望ましい。
例え、ソーシャルディスタンスが取れていても相手に不安を抱かせることは避けるべきだからだ。

初対面の相手との挨拶や顔合わせ時などでも基本的にマスクは着用したままがマナー。
その際に「はじめてお目にかかりますが、このような時期ですのでマスクをつけさせていただきます。(いただいてもよろしいでしょうか)」と一言伝えたい。

初対面の相手と名刺交換を行う際には、オンライン名刺のQRコードやSNS連絡先などを添え、顔写真が後日見れるようにしておくと、その後の関係性も築きやすい。

ただし、相手がマスクを外した場合は、自分も合わせて外すか、「社内規定によりマスクの着用を義務付けられておりますのでこのままで失礼いたします」など一言伝えたほうがコミュニケーションがとりやすくなる。また、帰る際など相手との距離がある場合はマスクを外して挨拶してもよい。

なお、いづれも場合もマスクを着用すると声がこもり、表情もわかりにくくなる。面談の際には普段よりも大きく口を広げ、ワントーン大きな声で話すように心がけよう。その時、相手に同意する、相槌を打つ際なども普段よりも大きくうなずく、笑顔を表すなど少しオーバーなくらいのリアクションを心掛けたい。

ただし、屋外では十分に距離が取れている場合などは「十分な距離を取りますのでマスクを外してもよろしいでしょうか」と相手の許可を得てマスクを外してもよい。

忘れがちなマスクマナー

飲食を行うなど一時的にマスクを外す場合があるかもしれないが、見た目にも見苦しいほか、マスクのゴム部分が伸び、機能も損ねるため、マスクを顎にかけたままのいわゆる「顎マスク」を長時間行うのは避けたほうが良い。

また、髪や爪を商談相手の目の前で触らないのと同様、相手の目の前で何度もマスクに触るのも相手に良い印象は与えない。ビジネスマナーとしても着脱時以外にはマスクには基本的に触れない方がよい。

一時的にマスクをはずす際には、一言「失礼いたします」と相手に伝えてから両耳からマスクを外し、ポケット入れるのが基本的な所作だ。このとき、外したマスクを机に置くのも相手に不潔な印象を与えるのでやめたほうがよい。外したマスクはそのままポケットにしまってもよいが、マスクケースに入れると相手にスマートな印象を与える。

余談だが、マスクを外した時、内側(口に触れる部分)が汚れていると非常に不潔な印象を与える。 カレーやトマトパスタ、脂っこいラーメンなど唇を汚す食べ物を食べた後は、ティッシュできれいに拭いておくように心がけよう。口を拭く時には口角(唇の両端)に汚れが残っている場合が多い、口を拭く際には、口をわずかに開け、口角の汚れもきれいに拭き取ろう。

なお、紙パックなどストローで提供された飲み物を飲む際にはマスクをつけたまま、マスクの下にストローを差し込んで飲んでもよい。この時、コーヒーなどでマスクが汚れないように注意が必要だ。特にガーゼマスクなどは液体が染み込みやすいので注意しよう。

ビジネスに適したマスクは?

布製マスク、使い捨てマスク、あるいはフィルターのみを取り換えるプラスチックマスクなど色々なマスクがあるが、ビジネスマナー上ではどちらを用いてもよいとされている。ただ、フォーマルウェアと同じく、華美な装飾、派手な色は避け、清潔感のある色、ドット、ストライプなどシンプルな柄を選んだほうが良い。

色のあるマスクを着用する際にはネクタイやスカーフと同系色のマスクを選ぶと、コーディネートとしても馴染みがよい。

また言うまでもないことだが、何度も使う布マスクはシミ・汚れのない清潔なものを用いるのが鉄則だ。スーツや鞄などが汚れていると不快感を覚えてしまうものだが、マスクは顔に着用する医療・衛生用品なだけに汚れがあると非常に目立つ。

2020年4月~5月にかけて慢性的にマスク不足が続いたときには、ガーゼや木綿の布を用いた手作りのマスクが流行したが、ガーゼや木綿生地のマスクは、ほこりや飲み物のシミなどが目立ちやすいため気をつけたい。また、耳にかけるゴム部分もよれたり、毛玉がついたりしやすいのであらかじめ確かめておきたい。

スーツのポケットや、鞄に入れるとどうしても汚れやすくなるので、使わないときには紙封筒やジッパー付きのビニール袋、マスクケースなどに収納しておくとよい。

使い捨てマスクは、常に清潔なものを利用できるという点でおすすめだ。中国製のマスクは国産のマスクに比べ品質が落ちるという話もあるが、日常で使用する分には布マスクよりも効果が高いとされている。使い捨ての不織布マスクは布マスクと比べ、独特のニオイがある。そういったときには、アロマオイルなどを配合したスプレーなどをワンプッシュしておくとニオイも気にならないだろう。

なお、使用前にはパッケージに記載のある使用方法をチェックし、表裏、上下を間違いないようにしたい。基本的に使い捨てマスクは、再着用すると効果が落ちるとされているので一度着用したらあまり触らない方がよい。

布マスク、使い捨てマスクのどちらの場合も、白いマスクは、マスクから出たもみあげや首・顎周りの剃り残しが目立ちやすい。耳の真下や顎下は特に念入りにチェックしよう。

また、昨今の飲食店や商業施設などで見かけることの多いフェイスシールドや顎部分を覆う透明マスクだが、これは隙間があるために室内での面談にはふさわしくない。

屋外や十分にソーシャルディスタンスの取れた場所(展示場、展示会など)では使用してもよいだろう。

WITHコロナ時代。マスクのほかに気をつけたいマナー

手の消毒、検温について

会社によっては入室前に検温や手のアルコール消毒を求められることが多いだろう。 額の検温を行うときに気をつけたいのが、頭皮のニオイだ。

検温時はどうしても相手に頭や額を近づけるために頭皮や額のニオイが気になりやすい。消臭効果のあるボディー・フェイスシートで拭う、頭皮用の防臭スプレーを使用するなどして対策しておきたい。 また、脂性肌(オイリー肌)の場合にはあぶらとり紙との併用もおすすめだ。

また、冬場は空気が乾燥しフケが出やすくなる時期でもある。訪問前には髪の毛や上着の肩などをチェックしておこう。 鞄にコンパクトサイズの洋服ブラシを入れておくと重宝する。

手のアルコール消毒

会社によってはエントランスや受付にアルコールスプレーが置いてない場合もある。そんな時は、自身で携帯型のアルコールスプレーやハンドジェルなどを持参しておこう。また、来訪客向けに設置されたもの以外は勝手に使用してはいけない。どうしても迷ったときには持参したものを使用した方が無難だ。

相手企業からも「きちんとした人」という印象を与えることができる。

なお、通された部屋で持参した消毒液で手の殺菌を行うのは相手に対して失礼に当たる可能性もあるので避けたほうが良い。

新しいビジネスマナーをみにつけよう

かつて、ヨーロッパではスープなどを1つのスプーンで回し飲むことが一般的なマナーだった時代がある。 その時のマナーブックには、「2回スプーンをくわえない」「スープに口ひげがつからないように注意する」など独自のルールがあったとされている。

その風習も疫病などの影響によって改められ、それぞれにカトラリーが配られるようになったという。

ビジネスマナーもアフターコロナの影響によって大きく変わろうとしている。 マスクがマナー違反だった時代から、当たり前の身だしなみとなり、会話、商談、飲食時にもマスクありきの立ち振る舞いが求められるようになった。

時代やTPOに応じてマナーは変化する。 「相手に不快な思いをさせないこと」を念頭に置きつつも、マナーで損することのないような立ち振る舞いを身に着けたい。

山本拓宜さん
THEOWNER編集部 山本拓宜(やまもと・ひろのり)
THEOWNER編集部、副編集長
THEOWNERの取材記事、YOUTUBE動画などを担当。地方銀行員のM&A活動を取材した「BANKERS」の連載記事。ウェビナーでは海外M&Aをシリーズとして実施。
過去の担当記事・動画・セミナー
【YOUTUBE】ファンドってそもそもなに?日本投資ファンド専務取締役に徹底インタビュー
【記事】“Design Future With You”お客様とともに明るい未来を描く、宮崎銀行のBANKER
【ウェビナー】中小企業の社長が1から海外M&Aを学ぶセミナー マレーシア編 など