国内インポートブランド市場,2019年
(写真=Rrrainbow/Shutterstock.com)

2018年の市場規模はブランド側のミレニアル戦略の本格化が追い風となり大幅な伸び

~大型ブランドの業績拡大が際立つ年に~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)は、日本国内におけるインポートブランド市場を調査し、現況、ブランド動向、将来展望を明らかにした。

国内インポートブランド(主要15アイテム)小売市場規模推移

国内インポートブランド(主要15アイテム)小売市場規模推移

1.市場概況

2018年の国内インポートブランド(主要15アイテム分野)の小売市場規模は、前年比6.8%増の2兆4,420億円と、大幅な伸びを示した。背景としては、株高による富裕層消費の活性化、インバウンド(訪日外国人客)需要の拡大、さらにミレニアル世代※の消費拡大が挙げられる。2017年以降のインポートブランド市場は、ブランド側のミレニアル戦略により大きく活性化している。ブランド側では、既存のブランドイメージを大きく変える、もしくは新機軸を打ち出すなどに本格的に取り組んできた結果、ミレニアル世代の消費に加え、従来の顧客層(富裕層や一部の中間層)の消費拡大にも繋がった。既に2017年に一部のブランドではその成果が業績に表れていたが、多くのブランドで奏功したのは2018年であり、結果的に市場規模の大幅な拡大になったものと考える。

※ミレニアル世代とは諸説あるが、本調査では1980年代~1990年代後半に生まれ、2000年あたりに社会に出てきた世代とし、2019年時点では、20代前半から30代後半くらいの若者世代をさす。

2.注目トピック

ミレニアル戦略の拡大と課題

2017年から本格化したミレニアル世代をターゲットとした販促活動は、ミレニアル戦略と呼ばれ、一部の有力ブランドに止まらず、殆どのブランドに広がった。具体的な戦略としては、デザイナー交代による商品の刷新を起点に、その世界観を既存店舗やECサイトに反映させるための積極的な投資、ブランド側と顧客との双方向コミュニケーションの強化、若者に支持されるストリート系ブランドやアーティスト等とのコラボレーションの実施等が挙げられる。ブランド側の狙い通り、世界的にミレニアル世代が飛びつき、顧客層が大幅に入れ替わったブランドも少なくない。日本市場においても、ミレニアル世代(インバウンド含む)の消費は活性化され、ミレニアル戦略が奏功したトレンドブランドのみならず、多くのブランドで新規顧客層が増加した。更に、ミレニアル戦略によるブランドの活性化により、従来の顧客層(富裕層や一部の中間層)の消費拡大にも繋がった。

一方、ブランドの顧客としてミレニアル世代の購買を維持・拡大させることができるのかという課題も抱えている。トレンドブランドへの反応が早いということは、その逆も然りで、ミレニアル世代の消費行動は移り気な面も多いといわれている。次のトレンドブランドが出れば、そちらに流れるだけでなく、ブランド品以外の別のことへの興味が移ることも十分にあり得る。また、今後の消費の主役がミレニアル世代に移っていくとは言え、日本において、その購買力は、人数、金額の両面で、団塊世代や団塊ジュニア世代よりも弱いことが懸念されている。今後、世界的にはミレニアル世代の購買の維持・拡大、その下の世代であるZ世代に対する販売促進へと進んでいくものと思われるが、前述の理由から、その流れに便乗するだけでは、現在の事業規模は維持できないものとみる。中長期的にどのようなビジョンで日本市場での事業展開を行っていくのか、目指すべき方向性やターゲットとすべき顧客層、こうした顧客層とのコミュニケーションを含めた関係性の構築を真剣に考える必要に迫られている。

3.将来展望

2019年もブランド主導による市場活性化策は続くとみるが、2018年に比べると、市場環境にやや不安定要素もあるものとみており、株価の不安定な変動による国内富裕層における消費活動への影響や、為替相場の円高傾向によるインバウンド(訪日外国人客)需要の縮小などが懸念される。
また、主要15分野をアイテム別で見ると、2019年も引き続き拡大傾向のアイテム分野もあれば、2018年の反動減が見込まれる分野もあることから、2019年の国内インポートブランド(主要15アイテム分野)の小売市場規模は前年比1.0%増の2兆4,664億円を予測する。