(本記事は、牧野 剛氏の著書『15分で儲かる会社に変わる! ~ぐるぐるフセン会議の魔法~』=ぱる出版、2020年8月24日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
実例4 機械部品メーカー D社
赤字の工場が、3カ月で単品粗利500%アップ達成!
大成功の秘訣は、儲けの仕組みの理解から
◎会社概要と「ぐるぐるフセン会議」導入前の課題
ここまで「売価上げ」の例を3社ご紹介しましたが、最後に「原価下げ」の例としてD社のケースをご紹介します。
D社は金属プレスで機械部品を作るメーカーです。中堅手企業のグループ会社のポジションにあり、社長を含めて6名のこぢんまりした会社です。D社の最大の問題は、原価管理の理解が不充分である点です。そのため収支の把握ができず、慢性的な赤字に悩まされていました。
実はこのような悩みは、D社のような大手の下請け企業や昔ながらの町工場などではよく見かける状況です。特に営業活動をせずとも受注が続くので、今ひとつ危機感を持ちにくいのですが、商品ごとの収支を見ていないので、どの商品が黒字でどの商品が赤字かの把握ができません。結果としてギリギリの自転車操業になってしまうケースが本当に多いのですが、あまりにどんぶり勘定すぎてどこに赤字の原因があるかもわからず改善のしようがないのです。
D社も同じ状況に陥っていましたので「ぐるぐるフセン会議」に入る前の下準備として、まずは製造業の原価管理の基礎から学んでいくことにしました。
また、D社はある1つの製品を作る場合でも、外部の別会社と仕事を分担して進めています。しかしこれも担当者間のコミュニケーションが不足していたために業務効率が上がらないという課題がありました。
そこで私は、今回は別会社の社員の方も一緒に「ぐるぐるフセン会議」に取り組むことをおすすめしました。コミュニケーション力に基づく課題についても「ぐるぐるフセン会議」で改善していくことができると考えたためです。
◎実際の進行
今回の「ぐるぐるフセン会議」を行なったのは工場の現場作業員の方々です。工場現場では、お客さまに直接交渉をして売価を上げることができませんから、粗利総額アップの基本作戦としては「原価下げ」となります。
これまでD社では目標値を立てる習慣がなかったため、「チーム目標額」は手探りでの設定となりましたが、ひとまず「3カ月で粗利12万円アップ!」と決めました。
◎実際のフセン
これが実際のフセンの内容です。参加メンバーのYさんとIさんは、別会社に所属しているので、現状出しも各自で行なうことにしました。
- 現状出し(PROBLEM 現在うまくいっているので続けたいこと)
・ Yさん 適正な生産数を把握していないので生産計画が立てられない/在庫管理ができていないので過剰発注をしてしまう
・Iさん 現場の整理整頓ができていない
↓
アイデア出し(TRY 新しく始めたいこと)
1.Yさん 商品ごとに、日々の生産計画を見える化する
Iさん そうじの計画を立てて実行する
2.(リーダーシップを発揮する)
↓
今週のチーム行動
1.各自の目標を達成する
2.(リーダーシップを発揮する)
Yさんは主に生産管理を担当しています。現状出し作業では、発注や在庫管理に関する問題点を数多く見つけることができました。
Iさんは無数のパーツや取引先から預かっている金型などの管理を担当しています。現状出し作業を通じ、現場の整理が行き届いていないことで、業務効率が落ちていることを再認識できました。
この結果を受けて、アイデア出し作業(TRY 新しく始めたいこと)ではそれぞれ、
Yさん《商品ごとに、日々の生産計画を見える化する》
Iさん《そうじの計画を立てて実行する》
として、1つ目の「今週のチーム行動」は「各自の目標を達成する」とまとめました。
2つ目の「今週のチーム行動」は、私から提案して《リーダーシップを発揮する》にしてもらいました。D社は「ぐるぐるフセン会議」を始めて日が浅いので、まずは1人ひとりに主体性を身に付けてもらうことを目的としたものです。
◎実際の「今週の約束」
Yさんは「今週の約束」を《在庫票を更新して棚卸数量を入力する》と決めました。適正な生産数の基準値を把握するため、これまで作ってきた製品の数をまずはコツコツ集計するところから取り組みを開始しました。
Iさんは「今週の約束」を《毎日の清掃で作業の効率を向上させる》とし、業務効率アップという明確な目的意識を持って清掃や整理整頓を実行しました。
これらの行動結果は毎日「スコアボード」にマーカーで塗られ、目に見えて成果が積み上がっていきました。
◎「ぐるぐるフセン会議」導入の成果
◆粗利アップ目標額:12万円→達成額:60万円(達成率500%)
以前は原価管理や粗利の知識が不足していたために、大量の受注をこなしても赤字続きの状況でした。ですが今回「ぐるぐるフセン会議」を体験したことで、自分たち自身で問題点を発見し、黒字化に向けて効果的な行動をとることができました。
Yさんは、日々の生産・加工数をカウントして現状を「見える化」したことで、前日・前月と比べられるようになり、収支改善への道のりが見えてきました。
Iさんは計画的に清掃を行ない、作業スペースや通路が広くなったため、金型や製品の移動にかかるタイムロスが減少して業務効率を上げることができました。
また、これまでは社員同士の連携が不足しており、互いの生産性を考えることはありませんでした。ですが「ぐるぐるフセン会議」を通じて「リーダーシップ」の発想が生まれたことで、チームワークをもって業務を進められるようになりました。みんなで協力して業務指示書を改良し、残業も減らすことができました。
これらの成果は「スコアボード」に記録していくので、日々の頑張りが目で見てわかります。自分たちのアイデアが業務改善につながっていくと、ますます仕事が楽しくなり、粗利総額も上がるという良いサイクルが生まれます。D社では3カ月でメンバーのモチベーションが大きくアップし、チーム目標額も予定額の5倍達成という劇的な結果につながりました。
「ぐるぐるフセン会議」を繰り返して行なうことで、メンバーは利益を生み出す仕組みをしっかり理解でき、会社は黒字体質に生まれ変わりました。これもメンバーの皆さんがコツコツと継続してきた当然の結果なのです。
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