(本記事は、牧野 剛氏の著書『15分で儲かる会社に変わる! ~ぐるぐるフセン会議の魔法~』=ぱる出版、2020年8月24日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
自身も苦しんだことから生まれた「ぐるぐるフセン会議」
実は、社員教育の大切さは私自身の実体験から理解したことです。それというのも過去、私も一経営者として社員を育てて会社を盛り立てていくことの難しさに悩んでいた時期があったからです。
それは私が社労士として独り立ちし、自分の事務所を構えて奮闘していた頃の話です。その当時、事務方として会社を支えてくれていたのは地元の主婦パートの方たちでした。彼女たちはとても優秀だったので、希望者には正社員になってもらうことを考えました。
全員と毎日話し合いを重ね、待遇などの諸条件も整えて、いよいよ正社員登用の話も大詰めとなったある日、その出来事は起こりました。メンバーのなかでも特に優秀で、私も期待を掛けていた1人のパートさんが会社を辞めたいと言い出したのです。突然の申し出でした。
それまで彼女はまったくそういったそぶりを見せず、元気に働いていた様子だったので私は動揺しましたが、よくよく話を聞いてみると、実は近くの大企業が同じタイミングで正社員を募集しており、彼女はそちらに採用が決まったということでした。私の事務所での仕事内容や人間関係に問題はなく、むしろ楽しくやりがいを持って働いていたそうです。しかし、今回採用が決まった大企業は、わが社よりだいぶ賃金が良かったそうなのです。
私は打ちのめされました。小さな事務所なりに毎日小さな工夫を重ね、パートさんもそれに応えてくれて社内が落ち着いてきたと思っていたのに、最後の決め手はやはり待遇面だったという現実が重くのしかかりました。
そこで私は一念発起しました。会社を支えてくれるような良い人材を集めるには、やはり第一に待遇を改善することだと目が覚めたのです。
そこからはひたすら待遇改善の研究を始めました。厚待遇というのは、つまり賃金を高くしてと労働時間を短縮することです。そして、この2点を実現するためには会社が儲けるしかない、より正確にいうなら「粗利総額を増やすしかない」ことに気づいたのです。
粗利総額を増やせれば待遇を改善でき、優れた社員を集められます。優れた社員が集まれば会社が成長し、さらに収益が上がります。人材と収益の関係は、卵とニワトリのように循環し、切っても切り離せない関係にあるのです。
人材確保と増収を実現するために、無数の試行錯誤を繰り返した結果完成したのが、対人面から社風改善にアプローチする「〝できました〟メソッド」(『社員は1分で変わる!──儲かる会社をつくる「できました」の魔法』、牧野剛著、自由国民社刊)と、本書でご紹介する「ぐるぐるフセン会議」です。
「ぐるぐるフセン会議」の仕組み
「ぐるぐるフセン会議」では、身近な文房具である「フセン」と「KPT(ケプト)」と呼ばれる会議手法を使用します。
KPTとはソフトウェアの開発に由来するアメリカ生まれの会議手法で、大まかにいうと、日々の行動を「継続すべき良い行動」と「問題が発生しているため改善すべき行動」に振り分け、振り返りを繰り返すことで、行動内容を改善するというものです。
【K】KEEP=現在うまくいっているので続けたいこと
【P】PROBLEM=改善したいこと
【T】TRY=新しく始めたいこと
私は、このKPTの手法を誰にでもできるくらいカンタンかつ効果を最大にするにはどうしたらいいかを考えました。そして限界までシンプルな形に生まれ変わらせたのが「ぐるぐるフセン会議」です。
KPT(ケプト)と呼んでいるフレームワークとフセンを用いて、ワイワイと楽しみながら会議を進めていきます。
「ぐるぐるフセン会議」は会議という体裁を取っていますが、実はその本質は「行動と検証」の反復トレーニングです。
「ぐるぐるフセン会議」は、実際の会議と、それをふまえた行動の改善が1セットになっています。
毎週1回このセットをこなしていくうちに、それぞれの社員に必要な能力が定着し、さらに伸びていきます。このように、1つのセットを繰り返すうちに能力はぐるぐるとスパイラル状に上昇していくので、このメソッドを「ぐるぐるフセン会議」と名付けました。
「ぐるぐるフセン会議」は企業の粗利総額のアップを目的としてメソッドが考えられていますので、毎週会議を繰り返すたびに参加メンバーの社員には、実践的に粗利アップの意識が浸透していきます。社員1人ひとりが育っていくと、やがて会社自体が大きく変化します。
会社自体を〝儲け体質〟に根本から変えてしまうのが、この「ぐるぐるフセン会議」なのです。
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