日本全国の地域金融機関でM&Aや事業承継を担当されている行員(BANKER)に各行の取り組みや銀行のカラー、地域の事業承継事情など他行への参考になる情報をインタビューした。

静銀経営コンサルティング株式会社はM&Aや事業承継、経営課題解決などのコンサルティングを中心に行う静岡銀行のグループ会社。

第二回目は、多方面における企業買収や支援を行っている静銀経営コンサルティング 営業部 主任コンサルタントの山田 友也氏にインタビューした。

――静銀経営コンサルティング様が持つM&Aコンサルに対するこだわり、強みはなんだと思われますか?

BANKERS

山田:山田:強みとしては営業店のM&A・事業承継への意識が高まっていること、また案件相談に関して弊社のみではなく銀行本体のソリューション営業部でも初期対応を行うことにより、案件を前捌きする・情報を開発するという入口の部分と、弊社で案件を仕上げていく出口の部分が上手く機能してきていることが大きいと思います。

また、静岡は中小企業数が多い地域であり市場にも恵まれていると思います。 M&A、事業承継コンサル業に関しては、元々静岡銀行では弊社(静銀経営コンサルティング)でしか手掛けていなかったのですが、多くの案件相談があるなかで、ソリューション営業部と連携した初期対応により、実人数よりも多くの手を使って案件対応をしていると考えています。

また、弊社では売上規模5億円未満の譲渡案件が7割を占め、小型のM&A案件もたくさん手掛けております。

M&Aは企業規模の大小に関わらず難易度は大きくは変わりません。そのため結果的に我々がお手伝いしたM&Aの案件数に比例して蓄積されるノウハウも多くなっています。我々のように別会社でM&A専門部隊があるというのは、M&A業務においてすごく大事だと感じております。

――たくさんのM&A案件を同時に進行する際には何を工夫されていますか?

山田:何か特別なことをしているわけではありません。ただ、社内全体の知見、経験値が底上げされてきたというのはあると思います。

というのも、弊社では私がM&A担当として8年目で、9年目の社員もおります。少し前までは長くても5年程度で銀行本体や別会社への異動となったため、経験やノウハウの蓄積が困難でしたが、数年前より弊社の業容拡大に向け人員を増加すべく異動(転出)を減らし在任期間を延ばしました。

その結果として社内にM&A経験者がどんどん増えてきました。そして、各現場の判断を最優先に考えて案件対応を行っていった結果として成約案件が増えたものと考えております。

やはり経験は大切で、座学で学んでいても実際社長と膝を付け合せて話をしたり、売り手と買い手の間に立った条件調整というのは、なかなか経験できることではないので、そのあたりはキャリアを積んでいく事が必要ですし、そういう人材が必要だと思います。

――新しい取り組みにも意欲的に取り組まれていると伺いました

山田:直近では弊社としては初めてDMを発送しました。

これまで営業店からの情報中心で営業してきましたが、期初からコロナの影響により銀行本体は緊急融資対応に追われたこと、またお客さまとの面談も難しい状況のなか、本年4月よりオプトアウト方式による銀行本体の法人顧客情報を共同利用が可能となったこともあり、銀行本体と連携しM&Aニーズ喚起のDMを発送しました。

当社としては初めての試みであり様々な課題も見つかりましたが、今後の効果・検証を含めお客様へダイレクトに接触する機会を増やしていきたいと考えています。

――静岡県は水産、農業、製造業など、各分野の産業がバランス良く発展していますよね。売り買いのシナジーや案件の専門性についての戦略については、どういった工夫や対応をされているのですか?

山田:静岡県内には新幹線の駅が6駅あるように、横に広く、移動時間も相当掛かるので、メンバーとしては首都圏、東部、中部、西部(愛知を含む)の4エリアに分けて担当を配置しています。また一つの案件に対して担当者を二名つけるようにして、牽制やチェック機能が働くようにしています。

業種ごとに専任担当がいるわけではないのですが、「医療・介護」や「運送業」などのM&Aに関しては経験豊富な担当者を副担当につけ、主担当の支援やノウハウの共有をよりスムーズな案件進捗を目指しています。

またM&A担当者が10人程度の会社なので、週1回の会議に加えて、月に1回は2~3時間の会議を行い、担当者全員でマッチングアイデアやノウハウ・失敗事例等の共有を行うなど、知識・経験の共有により経験の差を埋めるようにしています。

――最近の静岡県内の経済事情はいかがでしょうか?

山田:コロナの影響もあり厳しいニュースが多いです。

特に国内・インバウンドともに急減した観光・レジャーや自動車・二輪関連や工作機械など製造業への影響が大きいと感じています。

地域経済への影響が引き続き懸念されるなか、銀行グループ全体で地域やお客様の支援を最優先に考え力を注いでいます。

M&A業務においては、先行き不安を理由としたご相談も増えております。経営者の方々も生き残りをかけ、また事業継続のために必死で日々戦っていると思いますし、その解決方法の一つとしてM&Aもより重要な経営判断の選択肢になっていくものと考えています。

――日本M&Aと連携したM&A案件で印象に残っているものは?

BANKERS

山田:昨年6月に成約した案件です。最終的に異業種の買い手が事業拡大を目的に買収したのですが、異業種なので買い手が慎重になる部分があったり、対象会社が従業員持株会を組成しているなど、いろいろ工夫が必要な案件でしたが、鏡味さんに上手に進めていただきました。

実は、元々は弊社単独で買い手を探していましたがなかなか良い相手が見つからず難航しているなか、鏡味さんに協力いただいたところ、その後は順調に成約に至ることができました。

――日本M&Aセンターに今後どんなことを期待するのか教えて頂けますか?

山田:引続き良好な関係を継続したいと考えています。

特に、全国規模でのマッチングを希望する案件や、海外子会社がある案件などは弊社での対応にも限りがあるため、日本M&Aセンターの情報網や知識・経験を活用させていただきながら、スムーズな案件進捗を図っていきたいと思います。

また、鏡味さんのように優しく押したり引いたりしながらもしっかり案件を進めてくタイプの人は弊社のカルチャーにとてもフィットしていると思いますし、安心してご協力をお願いすることができます。

――静銀経営コンサルティング様は支店レベルから現場のモチベーションが高いと感じています。

山田:銀行にはエリアやブロック、カンパニーというグルーピングがあるのですが、鏡味さんにそれぞれのグループごとに勉強会等をして啓蒙活動をして頂いた効果も非常に大きかったと思います。

銀行本体や弊社で勉強会を開くこともありますが、勉強会の資料や説明の聞きやすさなどには大きな差がありますし、説得力も違ってきます。日本一のM&A仲介会社から来た方が「これはこうしませんか?これを変えていきましょう」とスキルアップ、モチベーションアップにつながる勉強会を行っていただける。それは我々にはできないことです。

そういった部分でも日本M&Aセンター様、鏡味さんに助けられている部分は大きく、静銀コンサルティング、静岡銀行の両方のモチベーション向上にもつながっていると思います。