アパレル業界,破綻
(画像=ThamKC/stock.adobe.com)

コロナウイルスで、多くの企業が存続の危機に立たされている。特に、外食や旅行、航空産業が厳しいと言われているが、それらの産業同様に厳しいのが、ファッション業界だ。大手企業のレナウンが民事再生を申し立てたのは大きなニュースになった。今後、ファッション業界はコロナでどのように変わっていくのか、解説する。

目次

  1. コロナウイルスで多くの企業が倒産
  2. コロナウイルスで苦境に陥ったアパレル企業
    1. レナウンが民事再生を申請
    2. セシルマクビーは全店閉鎖
    3. 上場アパレル各社も不振
    4. 海外でも多くの企業が倒産
  3. ファッション産業はコロナショックを乗り切れるか
  4. ファッション産業は転換期にきているかもしれない

コロナウイルスで多くの企業が倒産

今、コロナウイルスで、多くの企業が苦境に立たされている。東京商工リサーチのデータによると、6月15日現在、コロナウイルス関連の倒産は245件にも及んでいる。4月からは毎月80件以上が倒産しており、6月に入ってさらに倒産ペースが上がっているのが実情だ。

業界別にみると、飲食業37件、宿泊業35件に続き多いのが、アパレル・小売り関連企業である。実際、マッキンゼーの調査によると、日本の消費者のファッション関連の消費意欲は落ち込んでおり、外食と同様の水準にある。現時点ではやはり、厳しい状況にあるといえるだろう。

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コロナウイルスで苦境に陥ったアパレル企業

では、どういった企業が、コロナウイルスで苦境に立たされているのか、具体的な事例を見てみよう。

レナウンが民事再生を申請

業界を驚かせたのは、1902年創業の老舗企業である「レナウン」の民事再生だろう。レナウンは現在、中国のファンドの資本下で経営を続けていたが、2019年12月決算で約65億円もの赤字を出し、そして2020年の5月に民事再生を行った。

レナウンが苦境に立たされた要因の1つに、親会社・山東如意科技集団の子会社への53億円の売掛金を回収できなかった、というものがある。しかし、2018年12月期の決算でも赤字を出しており、ビジネスの構造的に厳しい部分があったのも事実だ。主要取引先の百貨店がシュリンクする中、ビジネスモデルを変化することができず、売掛金の未回収、コロナショックが後押しする形となったと言えるだろう。

セシルマクビーは全店閉鎖

また、2000年代のギャル系ファッションを牽引していたブランド「セシルマクビー」も、2021年2月までに全店舗を閉鎖すると発表した。セシルマクビーを運営するジャパンイマジネーションは、複数のブランドを所有しているが、今後は事業を「アンクルージュ(ANK ROUGE)」「ジェイミー エーエヌケー(JAMIE エーエヌケー)」などの独自性の高いブランドに集約する予定だ。

セシルマクビーはギャル系と言われる渋谷の若者を中心に絶大な支持を得ていたが、トレンドの移り変わりとともにターゲット層が減少。比例して売上も徐々に減少していた。時代の流れとともに、ギャル路線からフェミニンカジュアルへの移行を図ったが、競合がひしめき価格戦争が起こるカジュアルファッション業界は厳しく、これも失敗に終わったと言える。

上場アパレル各社も不振

苦境に立たされているのはレナウンやセシルマクビーだけではない。上場しているアパレル企業12社のうち、直近の決算では、半数の6社が赤字に転落しているのだ。

たとえば、同じく百貨店を主戦場とする三陽商会は4期連続の赤字だし、同じくアパレル大手のオンワードホールディングスも大きな赤字に転落している。もともとアパレル企業が利益幅の小さい構造ではあることを考慮しても、大きな影響をコロナによって受けているといえるだろう。

同様に、百貨店業界も苦戦している。百貨店業界の雄ともいえる三越伊勢丹HDは、2020年3月期に赤字転落している。さらには、全国の百貨店の売り上げは、4月で前年比-72%と大きく落ち込んでいる。緊急事態宣言に伴う店舗閉鎖が主な要因だが、営業を再開しても、今までのような客足が戻ってくるかどうかについては、疑問が残る。

海外でも多くの企業が倒産

ファッション産業が不振なのは日本に限った話ではない。

アメリカでは、大手百貨店である、ニーマンマーカスが破産法適用を申請しているし、ヨーロッパでは、日本でもおなじみの「ローラアシュレイ」が、コロナを引き金に経営破綻している。7月に入ってからは米老舗紳士服ブランド「ブルックス・ブラザーズ」も破産法適用を申請した。コロナウイルスにより外出が自粛となり、そしてそれをきっかけに洋服の需要が減少するということは世界中で起こっているのだ。

ファッション産業はコロナショックを乗り切れるか

では、今後、ファッション産業はどのようになっていくのだろうか。

まず1つ考えられるのは、今後も、企業の倒産や吸収合併などがあり得る、ということだ。アパレルというのは、とにかく製品になるまでのリードタイムが長い。そのため、多くの企業は、「売れていない」春夏ものの在庫を抱えることになる。現在、多くの企業がセールを行って在庫の消化を行っているが、それでは企業に利益は残らない。

また、在庫が消化できなければ、企業のキャッシュフローにも問題が出てくる。キャッシュが尽きてしまえばそれは倒産につながるだろう。レナウンが特殊だっただけではなく、今後、第二、第三のレナウンが生まれても何ら不思議ではない。

さらに、夏をうまく越せたとしても、次は秋冬のシーズンがやってくる。秋冬のシーズンはコロナにおびえながらのシーズンになるだろう。当然各社の商品開発や仕入れは、減らすはずだ。そうすると、店頭に魅力がなくなってしまい、消費者がさらに遠のいてしまうという悪循環が起こってしまう可能性もある。

残念ながら、アフターコロナの目立った施策がない以上、多くの企業にとって、しばらくは厳しい時代が続くのではないだろうか。

ファッション産業は転換期にきているかもしれない

コロナウイルスは、上場企業であるレナウンが倒産するなど、ファッション産業にも多くの爪痕を残した。そして、旅行や外食と異なり、「在庫」があるビジネスという点で、ファッション産業はさらに苦境に立たされているといえるだろう。

今後、ファッション産業はコロナウイルスの収束とともに復活するのか、それとも低迷を続けるのか。ビジネスモデルそのものの転換期に来ているといっても過言ではないだろう。

文・THE OWNER編集部

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