2017年度の国内パン市場規模は前年度比101.4%の1兆5,582億円
~高級食パンブームや大手ホールセールメーカーブランドの食パンの商品リニューアル等で、高品質なプレミアム商品が市場を牽引する~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内のパン市場を調査し、パンの市場規模、商品別や小売チャネル別の市場動向、将来展望を明らかにした。
国内のパン市場規模推移
1.市場概況
2017年度の国内パン市場規模(メーカー出荷金額ベース)は、前年度比101.4%の1兆5,582億円となった。2016年度の伸長率は同101.8%で、ここ数年プラス成長が続いている。
戦後最長の好景気と言われ、輸出型産業を中心に企業業績は堅調であったが、家計所得の増加が認められず、これまでパンを含む食品消費支出は伸び悩んでいた。しかし、2016年度以降、高級食パンや大手ホールセールメーカーブランド食パンの商品リニューアル等、市場を牽引する商材の存在感が増したことがパン市場を後押しした。大手ホールセールメーカー主導による「こだわりシリーズ」などの展開や使用原材料の向上等により、以前は低価格志向に走っていた消費者の購買力が高まったと考える。
2.注目トピック
根強い高級食パンブーム
ここ数年、使用材料や食感、食味に徹底的に拘った「高級食パン」専門店が、東京や大阪、そして地方の中核都市に多数出店している。
「ふんわり」「もちもち」「生」「健康に良い材料」「キメ細かい」など、高級食パンの商品コンセプトはさまざまで、使用する材料も国産小麦100%やカナダ産小麦、蜂蜜など様々である。新規開店から数年経っても毎朝オープン前から行列ができる店もあり、出店空白地域を目指して、現在も新規出店が続いている。高級食パンの商品価格は1斤480円、2斤800円、1本1,000円などで、大手ホールセールメーカーブランドの一般的な食パン(超熟、本仕込、ロイヤルブレッドなど)が1斤150~200円で販売される中、その数倍の価格で販売されている。
数年前から続く高級食パンブームの火付け役となったのが、大阪市内で創業した「乃が美」である。また、「日常の食卓に幸せを」との想いから、焼きたて食パン専門店を全国展開するのが「一本堂」である。この他にも、多くの有名店や高級ベーカリーの「ドンク」、「ポンパドウル」、「アンデルセン」も高級食パンを取扱っている。
高級食パンは毎日食べられる価格帯でないこともあり、大手ホールセールメーカーブランドの食パンの市場を脅かす程の規模にはならないと思われる。しかし、既にコアなファンを掴んでいることから、仮にここ数年でブームが去ったとしても、根強い「高級食パン」ファン層に支えられ、今後もパン市場の一翼を担うものと考えられる。ただし、「高級食パン」専門店が現在のような新規出店ペースを今後も続けることは難しいと思われる。
3.将来展望
少子高齢化が進み、生産人口の減少が予測される日本では、パン市場は長期的には縮小傾向が続くと予測する。なお、新興国での需要拡大や世界的な天候不順により、小麦粉や油脂類などパンの原料価格の上昇は今後も継続すると考える。
一方、市場拡大要因としては、高品質で高単価なプレミアム商品や、爆発的な大ヒット商品の発売、フランスパンやバラエティブレッドに代表される食事系のパンによる夕食需要増加などが、挙げられる。また、海外労働者や移民による人口増加は、パン市場にプラスの影響を与えるであろう。
こういった点を考慮し、数量の微増と単価の増加により、国内のパン市場は今後も微増推移すると見込む。2022年度の国内パン市場規模(メーカー出荷金額ベース)は1兆6,245億円になると予測する。