会社を売買する際、その会社の株式の値段はどのように決まるのだろうか。一般に株式評価方法には大きく分けて3つのアプローチがある。以下では、それぞれのアプローチにもとづく株式の評価方法と小規模会社における評価実務について確認みたい。

株式評価には3つのアプローチがある

小さな会社,売買,株式評価
(画像=PIXTA)

株式を評価する方法には様々なものがあるが、おおむね「コストアプローチ」「マーケットアプローチ」「インカムアプローチ」の3つに大別される。特定の評価方法を単独で使用するだけでなく、併用法や折衷法といった形で各種の評価方法を組み合わせて使用する場合もある。

そのうち併用法というのは、複数の方法で評価した結果の重なり具合などを考慮しながら評価額を決定する方法である。これに対して、折衷法というのは、それぞれのアプローチの評価結果に折衷割合を乗じて評価を行う方法である。

財務内容などに着目するコストアプローチ

コストアプローチとは、ネットアセット・アプローチとも呼ばれ、対象会社の貸借対照表の純資産に着目して価値を評価する方法である。コストアプローチに分類される具体的な評価方法としては、「簿価純資産法」や「時価純資産法」などがある。

このうち「簿価純資産法」とは、帳簿上の純資産額に基づいて一株当たりの純資産額を計算する方法だ。これに対して「時価純資産法」では、貸借対照表の資産や負債を時価で評価し直したあとの時価純資産額にもとづいて一株当たりの純資産額を計算するという違いがある。

ただし、実務的にはすべての資産や負債を時価評価するのは困難であることから、土地や有価証券など主要な資産のみを時価評価する「修正簿価純資産法」も使用される。

市場価値などに着目するマーケットアプローチ

マーケットアプローチとは、上場企業であれば株価を参照することによって、非上場会社であれば上場している同業他社の株価や類似取引事例などと比較することによって対象会社の価値を評価する方法である。このマーケットアプローチに分類される具体的な評価方法としては「類似上場会社法」などがある。

「類似上場会社法」では、上場会社の株価と比較して非上場会社の株式を評価するのが基本となる。具体的には、類似する上場会社と評価対象会社の一株当たり利益や純資産などの財務数値を計算した上で倍率を割り出す。その倍率を比較対象となった上場会社の株価に乗じて買収先の株価を算出するという方法だ。その計算方法から「倍率法」、「乗数法」ともいわれる。

将来の利益などに着目するインカムアプローチ

インカムアプローチは、対象会社が生み出すと期待される利益あるいはキャッシュ・フローにもとづいて価値を評価する方法である。インカムアプローチに分類される具体的な評価方法としては、「フリー・キャッシュ・フロー法」や「利益還元法」などがある。

「フリー・キャッシュ・フロー法」は、企業が将来生み出すと期待されるフリー・キャッシュ・フローを現在価値に換算して株式の価値を評価する方法である。これに対して、「利益還元法」は、会計上の純利益を一定の割引率で割り引くことによって株主価値を算定する方法であり、「収益還元法」とも呼ばれる。

規模の小さな会社の評価方法は?

監査法人やファイナンシャルアドバイザリー会社に詳細な株式評価を依頼すると、各種の手法を組み合わせて評価が実施され、数百ページにおよぶレポートが作成されることもある。しかし、小規模な会社を対象とするM&Aでは詳細な評価はコスト的にも見合わず、必ずしも要求されない。

小規模な会社を対象とする場合、よく使用される株式評価手法としては、「時価純資産プラス営業権法」がある。これは上述のコストアプローチで触れた時価純資産法に営業権の評価を加味したものだ。営業権は向こう3年間の予想利益額などで評価することが多い。

コストアプローチの考え方を軸にインカムアプローチの要素が加味されており、簡便ながら使い勝手の良い評価方法といえる。M&Aの初期段階で暫定的に株式価値を評価する際にもこうした方法を活用すると良いだろう。(提供:ZUU online