矢野経済研究所
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8月15日、内閣府は4~6月期のGDP速報値を発表、輸出が+2.0%(実質ベース、以下同)、設備投資が+1.3%と成長をけん引、年率換算で+1.0%と5四半期連続でプラスとなった。株式市場も好調。18日の終値は日経平均株価4万3714円31銭と先週末に続き史上最高値を更新、為替が円安に振れていることもあるが、米国との関税協議が一応の決着をみたことによる先行き不透明感の軽減が“買い”基調を促す。

とは言え、懸念もある。中小企業は依然厳しい。構造問題としての人手不足の深刻さは言うまでもないが、ここへ来て不況型倒産が増えつつある。4~6月期はアジア向け電子部品等の輸出がGDPを押し上げたが、米国向け輸出は自動車をはじめ関税相当分の一部を値下げでカバー、取引量の維持を優先させた。大手による“身を切る戦略”の長期化はサプライチェーン全体にボディブローのように効いてくるはずで、財務基盤の脆弱な下請企業ほど影響は大きい。サプライチェーンの頂点にある企業には分配原資の絶対的な拡大に向けた投資を期待したい。

一方、GDPの53%を占める民間最終消費支出は+0.2%、こちらも5四半期連続のプラスとなった。しかし、勢いはない。家計の最終消費支出(持ち家の帰属家賃除く)は+0.1%、1~3月期の+0.2%から後退した。4~6月期の家計調査(総務省)でも消費支出における実質ベースと名目ベースの乖離は大きく(総世帯、前者は+0.7%、後者は+4.7%)、物価高に対して賃金の伸びが十分でない実態が伺われる。

4~6月期を総括すると成長を押し上げたのは外需(寄与度+0.3%)であり、内需の寄与度はマイナス0.1%だ。その外需も夏場以降は楽観できない。突如降りかかったトランプ関税という“災難”は当初の24%からは下がったものの15%だ。輸出関連企業の多くが2026年3月期決算について減益を見込む。各社は米国の貿易政策を所与の条件とした構造転換を急ぐものの本格的な果実は来期以降だ。とすると成長のカギは内需にある。個人消費の活性化に向けた政策の総動員が求められる。

今週の“ひらめき”視点 8.10 – 8.21
代表取締役社長 水越 孝