共同経営者
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内山 瑛
内山 瑛(うちやま・あきら)
公認会計士。名古屋大学法学部在学中に、公認会計士試験に合格。新日本有限責任監査法人に入所し、会計監査・コンサルティング業務を中心に研鑽を積む。2014年に同法人を退所し、独立。「お客様の成長のよきパートナーとなる」ことをモットーに、記帳代行・税務申告にとどまらず、お客様に総合的なサービスを提供している。近年は、銀行評価を向上させる財務コンサルティングや内部統制構築支援、内部監査の導入支援にも力を入れている。

「共同経営」という言葉に憧れを抱く人も多いだろう。共同経営とは、その名のとおり複数の経営者が対等な立場で一緒に経営することで、お互いの足りない部分、たとえば資金や経営経験、業務スキルや営業スキルなどを補い合いながら、それらの相乗効果によってスムーズに事業を運ぶために行われる。また、それぞれの既存事業がさらに発展するという効果も期待できる。

共同経営は、どのように始めればいいのだろうか。またデメリットなどはないのだろうか。

共同経営に必要な準備

共同経営を行うと、単独での起業・経営よりもビジネスの幅は大きく広がることになる。

しかし、共同経営はいいことばかりではなく、生じ得るトラブルも大きくなる。トラブルを減らし、共同経営をうまく行うためには、資金や役割分担、決定権、報酬などをはじめとするルールについて明示しておくなど、事前にしっかり準備をしておく必要がある。ここでは、共同経営を行うために必要な書類や手続について解説していく。

まず、共同経営を始める前に重要な項目についてはしっかり話し合い、予めルール化しておきたい。これらが曖昧だと、誰の仕事なのかわからなくなったり、指揮命令系統が崩壊したりするので、明文化は必須である。

重要な項目とは、それぞれの出資金額・報酬・肩書・担当分野・責任と権限・利益分配の方法や意思疎通の方法、意見に相違がある場合の決め方、引退するときや契約を解除する場合の取り決めなどである。

共同経営者には「対等」というイメージがあるが、意見が合わなくなると会社が停滞してしまうため、「対等」な条件は避けておいたほうが無難だ。

共同経営を始める際には、「共同経営契約書」を作成し、それぞれが保管しておく必要がある。共同経営契約書は必ず作成しなければならないものではないが、会社の定款などには記載されないような細かい事項について、トラブルが起こった際の解決の指針となる。契約書は定期的に見直し、必要に応じて改変して、常に最適な内容にしておく必要がある。

共同経営の6つのメリット

共同経営には、非常に多くのメリットがある。通常は孤独な経営者が2人、3人になるのだから想像しただけで大きなメリットがあることは想像できるだろう。ここからは、共同経営のメリットを見ていこう。

メリット1.資本金が増える

会社を設立する際は、株式会社の場合は発起人が資本金を振り込み、株式を引き受ける。経営者以外の人が投資家として発起人になる場合もあるが、日本においては一般的ではない。共同経営者が増えれば、当然ながらより多くの出資金が集まることになる。

経営者は継続的に利益を出すことを求められるが、多くの資本金があれば資金繰りの面でも有利なので、機動的な経営ができるようになる。

メリット2.不得手な部分を補い合える

経営者であっても、万能ではない。しかし、経営者は会社に関するすべての事象に対応しなければならないため、取引先や従業員からは高い能力を求められることが多い。

優秀な従業員をヘッドハンティングしたり、経験豊富なコンサルタントと契約したりすることも考えられるが、起業したばかりの頃は経営資源が限られるだろう。たとえば営業が得意な人、経営管理が得意な人、技術分野に長けている人が共同経営者になることで、シナジー効果を期待できる。

メリット3.就業不能のリスク回避

起業したばかりの頃は従業員が少なく、何かトラブルなどがあれば経営者自身が対応しなければならないことも多いだろう。元気なうちはいいが、事故や病気などで就業が難しくなってしまった場合、数週間の休業だとしても会社の経営が傾きかねない。

そんなときに共同経営者がいれば、一時的に自身の業務を代行してもらうことができるので、経営への影響も最低限に留められる。

メリット4.メンタル面のサポート

起業にあたって借入をすれば、連帯保証人にならなければならない。画期的なアイデアやある程度の資金を持っていたとしても、起業にはかなりの勇気が必要だろう。

従業員という立場であれば、トラブルがあっても会社が最終的な責任を負うが、経営者になればすべて自分で責任を負うことになり、少なからずストレスがかかるだろう。共同経営者という同じ立場の人間がいれば、そのストレスもある程度は緩和されるはずだ。

「経営者は孤独」と言われる。顧問税理士や顧問弁護士、コンサルタントが相談相手になることが多いが、同じ立場ではないため、本当の意味で気楽に相談できる相手ではない。一方、共同経営者は同じ目的と立場を共有しているため気軽に相談でき、心強い存在と言える。

メリット5.客観的な判断ができる

共同経営の企業はワンマン社長の会社とは違い、経営者の暴走が起こりにくいと言われている。ここで言う経営者の暴走とは、周囲は明らかに失敗すると思っているにもかかわらず、ワンマン経営者だけが1人で盛り上がり、会社のリソースをいたずらに使いつぶすような行動である。

成功すれば敏腕経営者と呼ばれることになるだろうが、失敗すれば以降の経営に大きな影を落とすし、従業員からの信頼も失ってしまう。しかし、共同経営者がいれば、このような暴走が起こることはなく、冷静かつ客観的な判断ができる。

メリット6.多様なコネクションを活用できる

共同経営では、共同経営者それぞれの人脈を共有してビジネスを行うことができる。経営者の人脈の広さは、ビジネスのポテンシャルの大きさと言える。1人で事業をスタートし、人脈やコネクションを広げていくのは容易ではない。それぞれが特徴ある人脈を持っていれば、その人脈同士のコラボレーションによって、新たなビジネスを創出することもできるだろう。

共同経営の4つのデメリット

共同事業は、メリットばかりではない。単独経営では起こり得ないような問題が発生することもある。どのような問題が起こりうるかは事前に把握し、備えておきたい。

デメリット1.意思決定の遅れ

共同経営者の意見が合致している場合、スムーズに会社経営を行うことができるが、共同経営者全員の同意が必要な体制の場合、意見が合わないと意思決定が遅くなる。共同経営者の意見が合わないと、従業員にも派閥が生まれ、会社が分裂することにもなりかねない。それが、さらなる意思決定の遅れにつながるという悪循環に陥ってしまう。

デメリット2.仕事量の偏りによる不満

共同経営者の仕事量に偏りがあると、不平不満が生まれやすくなる。経営者も人間なので、自分ばかり損をしているような気持ちになれば、関係がギスギスし始める。また仕事量が多いと、お互いに過剰に気を遣って、気軽に休暇も取れないような状況になってしまうこともある。そのような状態になれば、お互いに疲弊してしまうだろう。

デメリット3.方向性の違い

一時のノリなどで共同経営者を決めてしまうと、どこかで必ずほころびが出てくることになる。よくあるのが経営方針の違いで、たとえば一方が全国展開で店舗数を増やしていこうと考えていて、他方が地域密着で堅実な経営を目指している場合、方針の相違は避けられない。

共同経営は性格や理念、価値観、経営方針など、多くの部分が一致していなければうまくいかないだろう。

デメリット4.金銭問題

企業への貢献は、出資だけではない。広報や営業における貢献や、商品開発や製造における貢献もある。しかし、それぞれの貢献度に応じた報酬を定めていくことは容易ではない。それぞれが自身の貢献を過大に、他人の貢献を過小に評価し、報酬の分け方でもめることになる。

仮に同じ金額を配分したとしても、それぞれが自身の貢献が過小評価されていると感じてしまうかもしれない。それぞれの業務範囲が明確で、かつ評価方法も定まっていないと、経営が破綻してしまう可能性もある。

共同経営に似た「ジョイントベンチャー」とは

共同経営に似た形態に、ジョイントベンチャーがある。これは、すでに事業を持っている会社同士が共同で出資を行い、新たな事業を行うために設立するものである。それぞれの企業は出資比率に対して利益を受け取ることができ、両社とも経験のない分野でビジネスを行う際に活用されることが多い。

ジョイントベンチャーにも、共同経営と同じようなメリットデメリットがある。メリットとしては、全額を出資しなくても済むことでリスクを抑えられること、提携相手のブランド力や経営ノウハウ、人材を有効に活用できることなどがある。自身のビジネスを超えた経験や実績を得ることができ、長期的な会社の発展につながる。

デメリットは、ジョイントベンチャーで得られた利益を独り占めできるわけではないことや、提携相手に自社の技術やノウハウを開示しなければならないため、それらが流出してしまうリスクがあることだ。

そのため、ジョイントベンチャーを行う際は、共同経営と同じように、相手企業をしっかり調査する必要がある。

文・内山瑛(公認会計士)