近年、小規模企業においてもM&Aの活用が浸透してきた。後継者不足に悩むオーナー経営者にとって企業売却は親族外承継の有効な選択肢の一つだ。とはいえ、企業売却に手慣れた経営者など、そういるものではない。適切な相談相手を見つけることが企業売却を成功させるための第一歩となる。

士業やM&Aコンサルタントは得意分野を見極めて活用

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(画像=TMoobin/Shutterstock.com)

小規模企業を売る際のもっとも身近な相談相手としては士業やコンサルタントが挙げられる。特にすでに顧問契約をしている税理士などであれば気軽に相談を持ちかけやすいのではないだろうか。ただし、士業やコンサルタントには当然それぞれの得意分野がある。

たとえば、保有している企業の株式を売却する際にどのような税金がかかり、それに対してどのように対処すればよいのかについての相談では税理士が適任といえる。

また、買い手からの要望で「デューデリジェンス」と呼ばれる財務調査や企業価値の評価を実施する場合には先方が選定した公認会計士のお世話になることが考えられる。売り手のほうでも、相手方との交渉材料とするため、別の公認会計士に調査を依頼したり、意見を求めたりすることも可能だ。

一般に、売り手企業が独力で最適な買い手を探すのは難しい。そこで買い手候補を探すためのネットワークを有するM&A仲介会社やM&Aコンサルタントの力を借りることが想定される。M&A仲介会社などを活用すれば、会社を売却するための一連の手続をサポートしてもらえるというメリットもある。

もちろん、会社売却に関連する法的な課題については弁護士、商業登記に関する事柄については司法書士、売却前後の労務問題については社会保険労務士といった具合に、上記以外の専門家に相談する場面もあるだろう。

商工会議所、金融機関、経営革新等支援機関など

会社の売却に関するよろず相談先としては、民間の仲介会社やコンサルタントだけでなく、商工会議所や金融機関の窓口も強い味方となる。これらの機関から外部専門家や買い手候補を紹介してもらえることもある。

また、会社売却に先立って事業の磨き上げを行い、企業価値を高めておくことは有効な方法だ。コア事業を強化したり、不採算事業を整理したりするなどの経営改善を行う際には「経営革新等支援機関」に事業計画策定のサポートを依頼することもできる。

経営革新等支援機関とは、中小企業経営力強化支援法にもとづき、中小企業への事業支援を行う専門能力のある個人や法人を国が認定したものだ。商工会議所や金融機関自体が認定支援機関となっているほか、一定の専門能力や実務経験を持つ各種の士業などが認定されている。優遇税制の適用、融資や補助金の申請などで経営革新等支援機関の関与が前提となっているものも多い。

M&A専門家が在籍する事業引継ぎ支援センター

事業引継ぎ支援センターも、小規模企業を売却する際の相談相手として最適な機関の一つといえる。事業引継ぎ支援センターは、社外への事業引継ぎに関する相談に対応するため、全国47都道府県に置かれている支援窓口である。

センター自体にM&A専門家が配置されており、会社売却に関する全般的な相談ができる。また、事業引継ぎ支援センター内に設置された「後継者人材バンク」では、後継者不足に悩む中小企業と若い起業家のマッチングを行っているため、そうしたネットワークを活用できる点でも利用価値が高い。

実績や経験の豊富さ、ネットワークを選定基準に

いずれの機関に相談する場合にも、実績や経験の豊富なところを選定するのが得策だ。特にマッチングを希望する際には幅広いネットワークを有しているかどうかを選定基準に加えたい。その点、公的な性格を持つ事業引継ぎ支援センターなどは総合的な窓口として優れているといえる。また、民間のM&A仲介会社では小規模企業にターゲットを絞っている会社などもある。自社の規模に合った仲介会社を選ぶという視点も取り入れると良いだろう。(提供:ZUU online