
目次
- 宮崎の里山で高度な設計作業に取り組む 高いレベルで従業員の自発性が発揮される組織を目指している
- 毎週土曜休みの完全週休2日制で年間124日休暇 基礎から学べるプラント設計教育で技術習得とキャリアアップを後押し
- 会社の従業員に対する姿勢は、従業員の家族の誇りにもなり、人間尊重経営の大切さを裏付けている
- 1989年に神奈川県平塚市で設計会社を起業し、1994年に本社を宮崎県へ移転 素晴らしい出会いに支えられ事業を継続
- 2021年、大型の電子黒板を導入して会議や技術講習会の準備を効率化 ペーパーレス化推進にも役立っている
- NASを導入して大量の図面やデータを保存している
- CADは設計作業に必要不可欠 客先指定の3D-CADが使えるよう準備を進める
- ホームページのSEO対策にコラムを掲載して積極的に更新している
- 田村社長は生前整理アドバイザーや男女共同参画推進員など多彩に活躍 様々な活動は幅の広い豊かな人生を送ることにつながっている
宮崎県の中央部、西都市内の自然豊かな里山に、平屋建てのあか抜けしたログハウス風の建物が立っている。日本の産業基盤を支える大規模プラントの設備設計を担う技術会社、株式会社ティーディエスの本社だ。建材は自所に植生していた杉の木を活用。薪ストーブをしつらえた木の香りが漂う落ち着いた雰囲気のオフィスで、12人の従業員が、難度の高い配管計画図、各種施工図面や構造解析用データの作成に日々取り組んでいる。デジタル機器やICTを活用して従業員が働きやすい環境を整えることに力を注ぎ、ホームページの情報更新も積極的に行っている。(TOP画像:設計内容を確認する株式会社ティーディエスの関係者)
宮崎の里山で高度な設計作業に取り組む 高いレベルで従業員の自発性が発揮される組織を目指している


ティーディエスは「みんなで良くなる」を設立以来の合言葉にしている。「ここで働きたいと思ってもらえる会社にしていくには、従業員を主人公にした会社の環境を作り、トップが目配り・気配りをした上で耳を傾け、壁を作らないことが何より大切と考えています。高いレベルで従業員の自発性が発揮される組織を目指しています」。田村洋子代表取締役社長は、事業活動を継続する上で大事にしている思いをこのように話した。従業員の意思決定権を尊重し、潜在能力を引き出すことで業務の効率性を高め、ワークライフバランスが整った職場にしていきたいという。国連が提唱する持続可能な開発目標、SDGsの取り組みにも力を入れている。
毎週土曜休みの完全週休2日制で年間124日休暇 基礎から学べるプラント設計教育で技術習得とキャリアアップを後押し


ティーディエスは、完全週休2日制で年間124日の休日(2025年度)を設定。半日や時間単位での通常の有給休暇に加え、家庭との両立支援として年間5日の休暇も認めている。新入社員は、プラント設計について初歩から学べる教育システムを構築し、知識や経験がない状態からでも仕事を通じて着実に技術の習得やキャリアアップを図れるようにしている。

子育てや介護をしながら正社員と同じように働くことを希望している人のために短時間正社員制度も導入し、女性従業員の半数が同制度を活用している。パートから正社員にステップアップした従業員も多いという。また、健康経営にも力を入れ2020年には経済産業省の健康経営優良法人、全国健康保険協会による健康優良企業「金」の認定のほか、宮崎県の健康長寿推進企業等知事表彰の奨励賞を受賞した。
「人を生かす経営を人間尊重の経営の真髄にすえ、社員の人間的成長の場としたいと考えているので、働く時は一生懸命働いて、休む時はしっかりと休むことをモットーにしています。複雑なプラント関連の設備の設計には高度な知識と技術が必要ですが、それ以上に大事なのは、本人の内側から湧き起こるモチベーションです。努力を続ける人は、つまずくことがあったとしても、必ず大きく成長します。人材はそのような観点からプラント設計の経験者にこだわらず幅広い分野から採用しています」と田村社長は話した。
会社の従業員に対する姿勢は、従業員の家族の誇りにもなり、人間尊重経営の大切さを裏付けている
「2025年2月には従業員の娘さんが、会社の姿勢を基に人権の大切さを訴えた作文が宮崎県中学校作文コンクールで一席を受賞しました」(田村社長)。 「社会の土台は人間尊重」というタイトルで、母親が勤務する会社が、誰もが働きやすく、それぞれの能力を発揮できるよう環境整備を最優先にしている姿勢を詳述している。作文では、病気になった社員への理解を深めるための勉強会の開催、リモートワークの導入、右手だけでもキーボードが打てるPC部品の手配、玄関へのスロープ設置や通路確保のための机の配置変更などの事例を紹介。定期的なBCP講習や、設備設計を全員がこなせるようにして業務負担の軽減にも取り組み、障がいや病気があっても、自分らしく生き生きと働ける環境づくりから、誰もが働きやすい環境づくりに取り組む会社の姿勢と制度を詳しく書き込み、思いやりと理解をもって接することが、持続可能で幸せな社会の土台であることを中学生なりの理解で書いている。
1989年に神奈川県平塚市で設計会社を起業し、1994年に本社を宮崎県へ移転 素晴らしい出会いに支えられ事業を継続

田村社長は1989年、30代前半の時、夫の田村省二代表取締役会長と二人で力を合わせ、当時生活の拠点を置いていた神奈川県平塚市で、ティーディエスの前身となるプラントの設計会社、有限会社ティー・ディー・システムズを立ち上げた。1994年に、会長のふるさと宮崎県に本社機能を移し、二人三脚で会社を成長させてきた。2011年に、現在の株式会社ティーディエスに社名を改めた。「設立当初は会社経営について必死で独学したことを今も覚えています。事業をここまで続けることができたのは、素晴らしい人たちとの出会いに恵まれたおかげです」と田村社長は、これまでの会社の歴史を振り返った。
宮崎県内では1997年から宮崎市内の大淀川が日向灘に注ぎ込む河口付近に本社を構えていたが、2011年の東日本大震災の発生を受けてBCP(事業継続計画)を見直し、2020年、水害発生時に被害を受けにくい内陸で自宅がある西都市に本社を新築し、移転した。創業以来35年を超える歴史の中で、2011年の東日本大震災等外部環境の変化で業績が落ち込んだ時もあったが、先を見据えて従業員の育成と設計技術の強化に力を入れた。その成果が今の好業績につながっているという。
2021年、大型の電子黒板を導入して会議や技術講習会の準備を効率化 ペーパーレス化推進にも役立っている

ティーディエスは、人材育成を重視する一方、従業員が業務に効率的に取り組める環境を作るためにデジタル機器やICTの活用を進めている。2021年には大型の電子黒板を導入し、社内で毎週行う会議や技術講習会で活用している。「以前は参加人数分の資料を印刷して配布していましたが、電子黒板で資料の内容を表示することで、その必要がなくなりました。事前準備が楽になったことに加え、社内のペーパーレス化推進にも役立っています」と設計担当の由谷将豊さんはうれしそうに話した。プロジェクト管理システムも導入し、作業の進捗状況を可視化すると共に取引先との情報共有に活用している。
NASを導入して大量の図面やデータを保存している
2023年には、会社で所有する大量の図面や資料のデータを保存するためにNAS(ネットワーク接続型ストレージ)を導入した。以前はDVDなどの記憶媒体に図面や資料のデータを保存していたが、保存作業に手間がかかるだけでなく、保存のためのスペースが年々逼迫(ひっぱく)していくことが課題になっていた。NASを使うことで時間をかけずに大量のデータを保存できるようになり、社内のスペースも有効活用できるようになったという。NASは2台導入し、1台はバックアップに使っている。2024年からはバックアップ体制を強化するためにクラウドストレージも導入した。
CADは設計作業に必要不可欠 客先指定の3D-CADが使えるよう準備を進める

プラント設備の設計に必要不可欠なCADシステムは1994年から定期的にバージョンを更新しながら活用している。また、構造解析NASTRANも導入している。「技術を刷新していくことで、設計業務の効率化をはかり会社の強みであるプラント設備の設計能力を深掘りしていきたい」と田村社長は話した。
※NASTRAN=航空宇宙や自動車業界など幅広い分野で利用されている構造解析ソフトウェア
ホームページのSEO対策にコラムを掲載して積極的に更新している

ティーディエスは、2009年からホームページを活用した情報発信に取り組んでいる。Google検索結果の上位に自社のホームページを表示させるSEO(検索エンジン最適化)に力を入れ、対策として有効な更新頻度を上げるために「図面屋の技術コラム」と題した従業員が持ち回りで担当するコラムを2週間に1回のペースで更新している。導入しているCADやソフトウェアの使い方、会社で取り組んでいる地域貢献や社内行事などのトピック、決算情報などをテーマに取り上げ、掲載本数は2025年6月の段階で320件を超えている。「日頃取り組んでいる仕事の内容をコラムとして文章化することで、仕事の意義や重要性を客観的に見つめ直すことにつながっています。文章の作成は、思考能力を養う上で効果が高いので従業員には積極的に文章を書くことを勧めています」と田村社長。
ティーディエスは、デジタル技術の活用だけでなく、対面でのコミュニケーションといったアナログ型の取り組みも大事にしている。「デジタル技術がどれだけ進歩したとしても、情報共有と意思疎通を図る上で対面のコミュニケーションに勝るものはないと思っています。デジタルとアナログは適材適所で使い分けることが重要と思っています」と田村社長は話した。
田村社長は生前整理アドバイザーや男女共同参画推進員など多彩に活躍 様々な活動は幅の広い豊かな人生を送ることにつながっている
田村社長は社会貢献の一環として2014年、相続や終活で悩む人たちの相談に対応するために生前整理アドバイザー認定指導員の資格を取得し、任意団体「生前整理@宮崎」の代表に就任した。生前整理に関するセミナーの講師を務めることも多く、生前整理@宮崎のホームページでは、「あらんだま(宮崎弁であらまあの意)おばさんの元気日記」のタイトルでブログも連載している。2017年には宮崎県男女共同参画推進員の委嘱を受け、2019年には西都市の男女共同参画審議会委員、2024年には宮崎県みやざき男女共同参画推進機構監事の他、防災士、年金委員に認定された。宮崎県中小企業家同友会でもベテラン会員として大きな存在感を発揮している。

「社外の仕事は、豊かな幅の広い人生を送ることにつながると思ってできる範囲でお引き受けしています。様々な活動を通じて得た知識、経験、人脈は決して裏切りません。これから先、ティーディエスを高収益型の企業にしていくために、さらに情報を集め、分析し、経営者として成長していかなければならないと肝に銘じています」と田村社長は柔らかい笑みを見せながら話した。宮崎県から全国の産業基盤と人々の暮らしを支えているティーディエス。田村社長は、持ち前の真面目さとバイタリティーで「技術の会社」を次のステージに進める。
企業概要
会社名 | 株式会社ティーディエス |
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本社 | 宮崎県西都市大字鹿野田6566番地1 |
HP | https://www.td-sys.com |
電話 | 0983-44-5411 |
設立 | 1989年3月 |
従業員数 | 12人 |
事業内容 | プラントの設備設計、構造解析のデータ作成 |