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群馬県高崎市で総合不動産業を営むマイホーム株式会社は、売却したい建物や土地を取り扱い、買い主を探す仲介や販売を主な仕事にしている。情報共有できる環境づくりやバックアップによるデータ消失の予防に取り組むことで、少数精鋭で顧客の要望にしっかりと応えつつ、自社でも利益を確保できる体制を整え実績をあげている。(TOP画像:ホームページのトップからマンガで売却の仕組みを紹介するコーナーに誘導する)
マイホームが、自社ホームページ内の「COMIC」ページで発信しているマンガは、以下のようなストーリーだ。「空き家になった不動産を持っている夫婦がいる。どう活用するかを考えマイホームにメールで問い合わせると、担当者が来て、売却する場合と賃貸する場合のメリットを説明する。説明を聞いた夫婦は、賃貸は管理する手間がかかると考え、売却を選んだ。その後の面倒な手続きはすべてマイホームが引き受け、売却までしてくれる」という内容で、売却についてのスペシャリストという特長を前面に出している。
相続などで不動産物件を所有した時に売却や賃貸のメリット・デメリットをマンガでわかりやすく説明する

「お客さまに弊社の仕事を知ってもらい、物件を任せてもらえるようにしたいと考えて、プロの漫画家にお願いしました」と、マイホームの田中健治代表取締役はマンガを掲載した意図を説明する。相続などで不動産を意図せず所有することになった人が読めば、売却までの流れをスムーズに理解できる。最後の「弊社は新築や中古・相続や土地売却など売却に関する内容は幅広く対応可能となるので、またなにかありましたら是非是非ご連絡ください」という担当者のセリフを読んで、相談してみようという気になりそうだ。
「掲載したのは2022年です。マンガを読んだという方から問い合わせもあります」(田中社長) マンガからは、同社が不動産の売却を主に行っている会社ということもわかる。不動産会社というと店舗に取扱物件を貼り出し、来店客の相談を受けて賃貸や売買を仲介する会社というイメージが浮かぶ。同社がそうした不動産会社とは少し違って、売却を中心にしていることもマンガを通じて知らせることができる。ホームページの活用法としても参考になる。
売れやすく利益も出やすい優良物件を探すのは情報戦、集めた物件情報はしっかりガードしバックアップも欠かさない
こうしたマンガを含めたホームページ上の事業概要を見て、売却を依頼してくる顧客を待つことだけをしているわけではない。むしろ、売却物件を自分たちで見つけてきては売却先を探して引き渡すような仕事の方が多いという。「ネット上の情報を調べたり、競売物件を探したりして、自分たちで取り扱えそうな物件を見つけます」(田中社長)。現地まで足を運んで物件を見て、いくらで売れるのかといった査定をしっかりと行い、相続や担保といった問題がないかも含めて調べ上げ、確実に利益につながるものだけを取り扱う。
「優良物件を見つけ取り扱うのは情報戦とも言えます」(田中社長)。そこで、契約前の物件や取り扱いたいと考えている物件のデータをハードディスクに保管した上でしっかりとバックアップを取るようにして、データが消えてしまったり見つからなくなったりするような事態を防いでいる。「アクセス権を限定し、大切な情報の流出を防いでいます」(田中社長)。こうした慎重な経営姿勢が、創業から7年経つ同社の安定経営を支えている。
売却依頼の契約が結ばれて同社で取り扱うことが決まった物件については、従業員ともデータの共有を行って、取引先を待って歩くパートも含む従業員が、自宅や出先から物件の情報を見たり、データを更新したりできるようにしている。「従業員が現地で撮影した物件の画像をアップしてもらうこともあります」(田中社長)。
自社のホームページや不動産物件のポータルサイトに取扱物件を載せる際に、画像はやはり重要な要素となる。「“モデルハウス”のような見栄えを意識しています」(田中社長)という意向に沿って、見映えがよくなるように撮っているとのこと。こうした細かい指示の積み重ねが、取引の維持・拡大につながっている。
インターネット経由での情報共有強化により、リモート環境を整備 従業員増員ができ、事業が拡大した

情報共有によるテレワーク環境の導入は、入社希望者を増やし、結果として取引量拡大をもたらした。田中社長は、17年ほど大手の不動産会社に勤めて、新築住宅や中古住宅の仲介業務などに携わった後、独立して2018年にマイホームを立ち上げた。当初は社長と親族で仕事を回していた。「自宅の1室を使ってテーブルを1台置いただけの事務所でした」(田中社長)。3年ほど事業を行った後、現在の所在地に移転した。
この時に、社外からでもデータ共有できるようにしたことで、リモート環境で働いてもらえる従業員を集めることができた。役割としては田中社長の業務を補助するパート従業員となるが、それぞれが担当分野でしっかりと仕事をこなすことで、田中社長は売却物件を探し出し、取り扱いを任せてもらえるよう働きかける“仕入れ”の業務に専念できる。「データ共有のおかげで戦力の増強ができ、業務の拡大にもつながりました」(田中社長)
従業員との連絡には、メールではなくビジネス用のチャットツールを使い、時にはオンライン会議のシステムも使って業務に必要なことを伝えたり、報告を受けたりしている。「向こう1週間に手がけてほしい業務などを伝えるようにしています。今はまだ人数が少ないため、それぞれがどのような働き方をしているか把握できますが、将来人数が増えてきたら、スケジュール管理も必要になるかもしれません」(田中社長)
一気に業務を拡大せずこれまでと同じ優良な“商品”を作ることに注力 事業を安定させ顧客の期待にも応える

ただし、一段の事業拡大については、現時点では控えめに考えている。「現在7期目に入った会社ですが、15期目くらいまではこれまでと同じようにコツコツと事業を行っていきたいですね」(田中社長)。不動産という高額な上に一つのパターンに収まらない物件を扱うには、相当の知識や経験が必要になる、ということがある。「利益が出なければ、収支トントンの引き分けでも負けと同じです。勝つためには、取り扱う商品をしっかりと作る必要があります」(田中社長)
ここでいう「商品を作る」とは、優良な物件を見つけて取り扱えるようにすることだけでなく、中古物件ならリフォーム、土地なら造成も行って売れやすい物件に仕立て上げることも含む。契約しているリフォーム会社や土木会社とのネットワークと連携し、一つひとつの物件をしっかり整えるには、まだまだ人手が足りない。「自分には足りないスキルを持っているような人材がいれば、従業員として働いてもらいたい考えはありますが、当面は自分が頑張る形になりそうです」(田中社長)
市況自体もなかなか読めない。コロナ禍の際にテレワークが増えたことで、より広い家に住みたいといった希望から家屋の売買が活発化した。今は、そうした案件は落ち着きつつある。空き家が増えていく問題が全国的に指摘され、売却を希望する物件自体は増えていくといった話もあるが、「物件が増えたところで、買う人がいなければ取り扱えません」(田中社長)。都心部なら利活用の可能性があっても地方では難しい。
希望的観測に引っ張られずリスクを踏まえた堅実経営を行い、将来の拡大に向けた基礎を固める

景気が上向き、工場の新設や増産があって働く人が増えてくれば住宅の需要も増えるが、そうした希望的観測に賭けるのはリスクがある。「むしろ景況などは低く見積もっています」(田中社長)という同社のスタンスでは、今は年間10件程度の取扱物件をしっかりとこなすことが最重要となる。そうして土台を固めた後、20件30件といった数に増やしていくことが目標となる。
「5千万円~1億円といった物件もいずれは扱ってみたいですが、それも会社を続けていければの話です。同じことを続けているだけではすぐに通用しなくなりますから、やり方をアップデートしながら対応していきたいですね」(田中社長)。夢は抱きつつも将来を楽観視せず、自分たちが今やれることに精いっぱいに取り組むスタンスが、立ち上がって間もない中小企業の事業を継続させ、次のステップへと進める上で大切なことだと言えそうだ。
ホームページだけでなくInstagramを使った会社のアピールも試みており、新しいことに挑戦する意欲にはあふれている。持ち前の慎重さと小回りが利く大胆さを組み合わせながら、次のフェーズへと向かうための力をためていく。

企業概要
会社名 | マイホーム株式会社 |
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住所 | 群馬県高崎市上小鳥町308-2 |
HP | https://mayhome.jp/ |
電話 | 027-370-0855 |
設立 | 2018年 |
従業員数 | 6人(パート含む) |
事業内容 | 不動産売買、土地開発、リフォーム |