
目次
- 1991年に「即日仕上げ」のクリーンスター1号店開店 家族経営で事業を徐々に拡大し2003年以降は旭川市、札幌市と大消費地に進出
- 「服を元気に、人を元気に、街を元気に」を理念に服も女性も輝く職場を目指して奮闘。地域に貢献できるクリーニング店を展開。
- 子息2人が生産と営業を分担し事業承継へ準備 ワークライフバランスやSDGsにも積極的に取り組み、厳しい市場で若手採用に顕著な成果
- JR大麻駅前に「リモート相談」可能な24時間完全無人店舗を開店 コインランドリーも併設し、顧客の多様なニーズに対応
- リモート相談の導入で売上高16%増と想定以上の効果 利用者ニーズと費用対効果にらみ慎重に拡大検討
- 年1店舗の開店・改装を進めデジタル技術活用で効率化と市場開拓を推進 Web会議システム活用で各事務所を結んで毎月会議
- 2025年3月に創業60周年記念式典を開催 会長は「9月に引退」と宣言 2人の子息に次世代クリーンスターのさらなる発展を託す
2025年3月に創業60周年を迎えた株式会社クリーンスターは、旧来型の街のクリーニング店の数が減少するクリーニング業界にあって、創業の北海道網走市から旭川市、札幌市へと事業地域を広げてきた。慢性的な人手不足の中、高品質なサービスに加えてコインランドリー併設や無人店舗など、時代に合わせた店舗展開でクリーニング需要を喚起。店内に設置されたモニター画面を通じたリモート相談窓口を増やしつつあり、ICT活用による効率化と顧客の満足度向上の両立が同社の強みとなっている。(TOP写真: JR駅前という立地の良さと広々とした店内に、最新式のコインランドリーやセルフ受付、リモート相談と多機能を装備した大麻店)
1991年に「即日仕上げ」のクリーンスター1号店開店 家族経営で事業を徐々に拡大し2003年以降は旭川市、札幌市と大消費地に進出

クリーンスターの前身、有限会社網走ドライセンターは、冬は流氷が覆いつくすオホーツク海に面した網走市で1965年に開業した。しかし、当初は思うように収益を上げられず、小島隆義代表取締役会長の父親が創業者から事業を引き継いだ。その後、クリーニング需要の増加とともに経営は軌道に乗り始めた。次第に事業も安定し現在のクリーンスターの基盤を確立した。
小島由起恵代表取締役社長は、地元の農業協同組合に勤務していた。その時に同僚だった隆義氏と1991年に結婚し、3代目社長に就いた隆義氏とともにクリーニング業に従事。義母が工場とカウンター、隆義社長が営業、由起恵氏も子育てをしながらアイロン作業や事務をこなし、「三ちゃん」家族経営ながら店舗数も増えて事業は拡大。1991年4月に即日仕上げを最大の売りとするブランドショップ「クリーンスター」を網走市内にオープン。その後も市内や近隣に出店して1995年には株式会社化。2007年に社名を「株式会社クリーンスター」に変更した。2003年には旭川市、2007年には札幌市と大消費地への進出も果たした。
「服を元気に、人を元気に、街を元気に」を理念に服も女性も輝く職場を目指して奮闘。地域に貢献できるクリーニング店を展開。

小島社長は「右肩上がりで成長してきたようにみえますが、競争が激しくなって個人経営のクリーニング店の廃業が相次ぐなど、厳しい業界で耐え忍んできました」と経営の苦労を振り返る。隆義氏が会長となり、4代目社長に就任したのは2020年。「服を元気に、人を元気に」の理念を守って、必死に家業の発展を支えてきた。
従業員の約9割が女性という職場だからこそ、小島社長は就任以来、「カウンターに立ってお客様のお役に立つ喜びやお客様からの『ありがとう』の言葉をいただいて、お客様の大切な商品だけでなく、従業員もきれいに輝いてほしい」という強い思いがある。その根底には、サロマ湖の漁師の家に生まれ、網走市の小島家に嫁いで、子育て、介護をしながら家業を支えてきた半生の自負と女性従業員に向けた「本来の自分をクリーンスターで取り戻してほしい」という熱いエールが込められている。
クリーンスターの事業所は現在、3本部、5工場、46店舗ある。「即日仕上げ」を追加料金なしの基本サービスに位置付け、地に足の着いた「顧客満足度の向上」を追求。コインランドリー併設店や、衣類の“治療と予防”を支援するファッションクリニック店、スニーカーやベビーカー、チャイルドシート洗いの一部店舗への導入など、顧客のニーズに真摯(しんし)に対応する姿勢が、業界では中堅ながら、大手以上の1店当たり売上高を誇り堅調な業績を維持してきた原動力といえそうだ。
子息2人が生産と営業を分担し事業承継へ準備 ワークライフバランスやSDGsにも積極的に取り組み、厳しい市場で若手採用に顕著な成果

小島社長の2人の子息はともにクリーンスターに入社して役員となり、経営に参画している。長男の龍(りゅう)取締役専務は工場を管轄する生産本部長、三男の暖(だん)取締役常務は営業全般を担う営業本部長で、会長と社長にとっては事業承継に向けて頼もしい両輪となっている。しかし、クリーニング業界の事業環境は厳しく、総務省家計調査によると、世帯当たりの洗濯費用は漸減傾向にあり、クリーニング施設は毎年3,000軒前後も減少している。サービス業全体で深刻化する人手不足に加えて、洗剤など資材調達コストの高騰は、クリーニング業界で事業存続を左右するほど重大な経営課題となっている。
「1点1点に手をかける仕事なので人手は最重要です。いろいろな働き方に対応したい」と話す小島社長は、通常の店舗にクリーニング料金が割安になる無人受付システムを導入することで、業務の効率化に加えて従業員の負担軽減や勤務時間の短縮など、従業員の事情に応じた柔軟な働き方を進めてきた。
「クリーニングを通して女性がキラキラ輝く社会を作る」ことを目指してきたクリーンスターは2022年に札幌市の「ワークライフバランスplus」の先進取組企業に認証された。いち早く再利用可能なハンガーを導入したり、障がい者就労支援事業で社会復帰をサポートするなど自然な形でSDGsにも取り組んできた。人材募集では、募集用原稿を若手従業員に作らせて若手採用を強化した効果もあり、2023年から「20代女性の応募者が20人以上に倍増した」(小島常務)という。
JR大麻駅前に「リモート相談」可能な24時間完全無人店舗を開店 コインランドリーも併設し、顧客の多様なニーズに対応

江別市のJR大麻駅前に2024年12月に開店した「クリーニング&コインランドリー クリーンスター大麻店」は24時間営業の完全無人店舗だ。クリーニングはセルフ受付方式で、専用バッグに入れた洗濯物を「お預けボックス」に投入する。クリーニングが済んだ衣類などは店内の専用ロッカーで受け取れる仕組みだ。
クリーニングに出さない洗濯物は併設されたコインランドリーを使用することができる。洗濯乾燥機にはタッチパネルで簡単に操作できるロック機能が装備されていて、女性も安心して利用できる。パネル上で洗剤や柔軟剤、水の温度などを選択できるほか、スマートフォンアプリで洗濯終了を知らせてくれる。
しかしこの店舗の最大の特徴は、全国初の「リモート相談」を導入したことだ。午前8時から午後2時までの間は、店内のモニターを通じて専任スタッフと会話しながら、設置されたカメラで衣類を映して仕上がりの相談を行うことができるサービスだ。無人店舗の利便性と対面によるきめ細かなサービスを両立した初の試みだ。
リモート相談の導入で売上高16%増と想定以上の効果 利用者ニーズと費用対効果にらみ慎重に拡大検討

無人店舗やリモート相談は札幌市や旭川市の店舗で試行してきたが、大麻店は初めての完全無人店舗で、集大成の実験店舗といえる。2025年3月には3店目のセルフ受付機をリニューアルした江別店に導入した。
先行した旭川市の店舗では来店客の4割が無人受付を使い従業員の負担も軽減できた。しかも2025年1~3月の売上額は前年同期比16%増と大幅増だった。小島常務も「リモート導入で人件費は7割減を想定していたが、それ以上の効果が出ている」と驚くようにスタートダッシュは上々のようだ。
売上額の大きな店舗は現在2人態勢だが、リモート相談導入によって12時間営業が「8時間+リモート相談」に移行でき、1人でカウンター業務を回せることになる。人員シフトが楽になり人手不足の緩和策としても大きな効果が期待できそうだ。リモート相談システム導入を機に、主要店40ヶ所のレジを多機能型に置き換えた。新型レジで勤怠管理や工場の入退室管理を行っている。
小島常務は「お客様にいつまでも愛されるお店でありたい」という想いから、「お客様に満足頂いてこそのサービスなので、省力化を目指すばかりに会社都合のシステムにならずにお客様が便利にご利用いただけるシステムにすることが一番大切。それを忘れずにこのセルフ受付機やリモート相談を発展させていきたい。」と今後の方針を語る。
年1店舗の開店・改装を進めデジタル技術活用で効率化と市場開拓を推進 Web会議システム活用で各事務所を結んで毎月会議

小島常務は「基本方針としては1年に1店舗の開店と既存店の改装を進めていきたい」と話すように、無人店舗の可能性も視野に入れながら堅実に店舗網の拡大に取り組んでいく。市場は決して拡大しているわけではないが、成長の余地は大きいとみているからだ。
「当社はクリーニング屋だけど、クリーニングに固執しているわけではない。市場のパイはしぼんでも、お客様が喜んでくれるサービスを提供できればビジネスチャンスになる」(小島常務)。無人店舗やリモート相談で培ったノウハウはクリーニング業界以外でも応用できるとみている。
広い北海道で網走、旭川、札幌などに点在する店舗を運営するのは、距離だけでなく市場環境の違いもあり難しい。クリーンスターはWeb会議システムを以前から利用していたが、当初は通信速度が遅くて映像伝送の遅延が大きく使い勝手が悪かった。システム支援会社と相談して新たに導入したWeb会議システムは、ブロードバンド回線を利用して「タイムラグはほとんど気にならない」(小島常務)環境を実現。網走、旭川、札幌、千歳の4市の事務所を結んで毎月の会議で活用されている。
厚生労働省は事業環境の厳しさを増すクリーニング業界向けに「デジタル化推進マニュアル」を策定し、新規顧客開拓や客単価増、レジ活用によるセルフ受付など経営課題解決に向けたデジタル活用方法を提示している。クリーンスターは厚労省のマニュアルを先取りする形でデジタル化を推進してきた。
2025年3月に創業60周年記念式典を開催 会長は「9月に引退」と宣言 2人の子息に次世代クリーンスターのさらなる発展を託す

クリーンスターは2025年3月15日、札幌市内のホテルで創業60周年記念式典を開催した。道内各地から従業員が集まり、取引先など関係者を招待した盛大なイベントだったが、小島会長は出席者の前で「私は9月に引退します」と宣言した。社長との二人三脚で事業拡大に汗を流してきたが、式典で「次世代クリーンスター」ビジョンを発表したのを機に、事業承継を一歩進めることにした。まさに次世代型クリーニング事業のモデルケースとして注目されそうだ。
今回のケースは単なる無人店舗のプラス価値としてのWeb接客ということ以上に注目したい。チェーン店の場合、各店舗の接客にムラがある場合が多く、客離れの要因となるケースも多い。しかし一般化したWebコミュニケーションにより、本部で一括して接客を行うため、接客の質の向上を一律に行うことが可能となる。しかもプロフェッショナル化することで顧客の要望にもきめ細かく対応することも可能だ。その時には、顧客接点でのICT機器のUIの工夫も必要になるかもしれない。今後の展開を期待したい。
企業概要
会社名 | 株式会社クリーンスター |
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本社 | 北海道網走市新町2丁目1番12号 |
HP | https://www.cleanstar.jp/ |
電話 | 0152-67-6151 |
設立 | 1965年12月 |
従業員数 | 320人(2025年3月時点) |
事業内容 | 一般クリーニング、コインランドリー |