国交省推進のCCUS普及をきっかけに、一人親方をはじめ現場職人の技術認定や待遇改善を支援 本部内のデジタル支援体制も強化 香川県建設労働組合本部(香川県)

目次

  1. 一人親方を中心に約6400人が加入 香川県内11ヶ所に支部を置いて労働条件を改善するために活動している
  2. 組合員の視点に立って、制度改革、住宅技術対策、賃金対策、組織対策に取り組む
  3. 建設業界のクラウドシステム、建設キャリアアップシステム「CCUS」の普及に力を入れる
  4. デジタル技術を使って建設技能者の実績、経験を可視化することで、能力に見合った適正な評価と処遇の実現を目指す
  5. ホームページ作成システムを導入して、必要な時に必要な情報をきめ細かく発信している
  6. ノーコードで業務アプリを作成できるクラウドサービスを導入 本部の業務効率化と組合員の利便性向上を図る
  7. 建設業界が抱える様々な課題に対応するためにデジタル技術の更なる活用を検討している
中小企業応援サイト 編集部
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労働者の権利を守り、労働条件や職場環境を改善するために活動する労働組合。戦後、労働組合の結成が全国で広がる中、香川県建設労働組合(香川建労)は、1962年、県内の建設業界で働く労働者や職人の暮らしを守ることを目的に結成された。現在、個人で業務を請け負う一人親方を中心に約6400人が加入している。県内の11支部を統括する香川建労本部は香川県高松市に事務所を構え、国土交通省が推進する建設業界のクラウドシステム、建設キャリアアップシステム(CCUS)の普及やホームページを通じた組合員の利便性向上などデジタル技術に関連した様々な取り組みを進めている。 (TOP写真:香川県建設労働組合本部は、ホームページを通じて幅広い情報発信を行っている)

一人親方を中心に約6400人が加入 香川県内11ヶ所に支部を置いて労働条件を改善するために活動している

国交省推進のCCUS普及をきっかけに、一人親方をはじめ現場職人の技術認定や待遇改善を支援 本部内のデジタル支援体制も強化 香川県建設労働組合本部(香川県)
香川県建設労働組合本部のオフィスの様子

香川県建設労働組合は、国内で62万人が加入する全国建設労働組合総連合(全建総連)と連携して、香川県建設国民健康保険(建設国保)、労災保険、建設業退職金共済(建退共)の取り扱いや資格取得の補助、セミナー開講、建設業許可申請など幅広い業務に取り組んでいる。ヘルメット、安全靴、フルハーネスなど安全衛生保護具の組合員価格での提供も行っている。

香川建労は、産業別組織、個人加盟、地域居住組織、住民組織、家族ぐるみといった特性を持っている。一人親方を中心とする約6400人の組合員は、県内の中讃、東讃、西讃の各地区に11ヶ所ある組合の支部に所属して活動している。組合員の平均年齢は50歳。60歳以上が40%を占めている。

組合員の視点に立って、制度改革、住宅技術対策、賃金対策、組織対策に取り組む

国交省推進のCCUS普及をきっかけに、一人親方をはじめ現場職人の技術認定や待遇改善を支援 本部内のデジタル支援体制も強化 香川県建設労働組合本部(香川県)
香川県建設労働組合本部で展示している多種多様な昔の大工道具

県内の支部を統括する本部の事務所が入る地上3階建ての香川建労本部の建物は、高松市内の交通利便性の高い都心近郊地域に立地している。建物内では、日本の伝統的な建築工法に関心を持ってもらうために、寄贈された鋸(のこぎり)や鑿(のみ)などの多種多様な昔の大工道具や木工作品を展示している。

国交省推進のCCUS普及をきっかけに、一人親方をはじめ現場職人の技術認定や待遇改善を支援 本部内のデジタル支援体制も強化 香川県建設労働組合本部(香川県)
香川県建設労働組合の堺裕二書記長

「結成以来、組合員の健康、生活、仕事を守るために活動を続けてきました。建設業界では、労働者の賃金は日給か労務請負のケースが多く、退職金やボーナスの制度も不十分で就労状況も安定しているとはいえません。資材価格高騰の影響もあって、ほかの産業と比較しても厳しい市場環境です。時代の変化に柔軟に対応しながら、組合員の視点に立った活動をこれからも展開していきたいと考えています。デジタル技術の活用もその一つです」と香川建労の堺書記長は話した。

本部と各支部は、医療、年金、福祉などの充実を目指して活動する制度政策、組合員の技能、技術の向上に取り組む住宅技術対策、賃金の引き上げや工事単価の適正化の運動に取り組む賃金対策、組合員数の拡大など組織力の強化に取り組む組織対策の各部を設けている。若手の組合員で構成する青年部や、女性組合員と組合員の妻らで構成する女性の会も設け、スポーツ、文化など様々な交流活動を行っている。また、子どもたちに建設業に関心を持ってもらおうと、小中学校への修繕ボランティアの派遣や小学校での親子木工教室の開催などに取り組んでいる。

建設業界のクラウドシステム、建設キャリアアップシステム「CCUS」の普及に力を入れる

国交省推進のCCUS普及をきっかけに、一人親方をはじめ現場職人の技術認定や待遇改善を支援 本部内のデジタル支援体制も強化 香川県建設労働組合本部(香川県)
香川県建設労働組合は建設キャリアアップシステム「CCUS」の認定登録機関として登録の受付業務を担っている

様々な活動に取り組む中で、香川建労は、国土交通省が主導・監督し、一般財団法人建設業振興基金が運営主体となっている建設業界のクラウドシステム、建設キャリアアップシステム「CCUS」の認定登録機関として登録の受付業務を担っている。2025年3月末の時点でCCUSには全国で約162万人の建設技能者と29万の事業者が登録し、香川県では約1万4500人の建設技能者と約2300の事業者が登録している。

2019年4月から本格運用が始まったCCUSは、デジタル技術を活用して、建設技能者が能力や経験に応じた処遇を受けられる環境を整備し、建設業を担い手にとって魅力的な業界にすることを目的に開発された。建設技能者一人ひとりが、顔写真付きのICカードを通じて、所有している資格や社会保険の加入状況、現場の就業履歴をデータとして記録、蓄積することができる。ICカードの帯の白、青、シルバー、ゴールドそれぞれの色は、初級、中級、職長、高度なマネジメント能力の所有者の順に技能のレベルを示している。

デジタル技術を使って建設技能者の実績、経験を可視化することで、能力に見合った適正な評価と処遇の実現を目指す

CCUSに登録することで、建設技能者は現場や勤務先が変わっても、所有する資格や就業履歴を証明できるので、自らの能力に見合った適正な評価と処遇を交渉することができる。事業者側も自社で雇用する建設技能者の数や保有資格、社会保険加入状況などを証明できるので、施工能力を施主に客観的にアピールしやすくなる。また、現場での出退勤時にICカードを使うことによって、勤怠管理業務を効率化することもできる。

CCUSの普及を進めることで、若い世代の建設業界に対するイメージの向上、施主に対する価格交渉力の向上、建設市場の透明性向上といった様々なプラス効果が期待できるという。CCUSの普及活動も香川建労の重要な業務になっている。「建設業界で働く人が安心して働き続けられる環境を整えることは、次世代の担い手を確保していく上で必要不可欠です。CCUSに登録する意義を、登録料に対する費用対効果もしっかり説明しながら県内に浸透させていきたい」と堺書記長は話した。

ホームページ作成システムを導入して、必要な時に必要な情報をきめ細かく発信している

国交省推進のCCUS普及をきっかけに、一人親方をはじめ現場職人の技術認定や待遇改善を支援 本部内のデジタル支援体制も強化 香川県建設労働組合本部(香川県)
香川県建設労働組合のホームページの更新作業。必要な時に必要な情報をきめ細かく発信

香川建労本部は、組合員を含む建設業界で働く人たちへの情報発信にホームページを活用している。ホームページでは、組織の概要、建設国保、労災保険、組合への加入申込方法、組合加入メリットの説明のほか、各支部の連絡先、お知らせやニュースなどを掲載している。住宅技術対策部のページでは、技術指導の動画も掲載。ホームページ作成システムを導入し、必要な時に必要な情報をきめ細かく発信することを心がけているという。「ホームページを通じて情報提供することによって、本部や支部への電話での問い合わせ件数を減らすことにつながっています」と堺書記長は述べた。

ノーコードで業務アプリを作成できるクラウドサービスを導入 本部の業務効率化と組合員の利便性向上を図る

国交省推進のCCUS普及をきっかけに、一人親方をはじめ現場職人の技術認定や待遇改善を支援 本部内のデジタル支援体制も強化 香川県建設労働組合本部(香川県)
文書管理システムを活用する様子

香川建労本部は2024年、本部事務所の業務効率化を目指して、ノーコードで業務アプリを作成できるクラウドサービスを導入した。これまでに、建設国保や労災保険などへの加入希望者を対象に、インターネット経由で保険料の試算や申請ができるアプリを作成し、現在、ホームページと連動する準備を進めている。これまで保険への加入申請は支部が紙書類で受け付けた後、本部が集めて基幹システムに入力し直していたが、今後は、ホームページを通じて当事者に直接入力してもらうことが可能になる。

香川建労本部はほかにも、業界団体や関係省庁への交渉に役立てるために組合員に依頼する様々なアンケートの集計を効率化する業務アプリの作成も検討している。「デジタル技術を活用して本部の基幹業務を効率化するとともに、組合員の利便性も高めていきたい」と堺書記長は話した。

建設業界が抱える様々な課題に対応するためにデジタル技術の更なる活用を検討している

国交省推進のCCUS普及をきっかけに、一人親方をはじめ現場職人の技術認定や待遇改善を支援 本部内のデジタル支援体制も強化 香川県建設労働組合本部(香川県)
香川県建設労働組合本部の外観

香川建労本部は、今後、紙ベースが中心になっている本部の日々の業務を、文書管理システムやグループウェアなどを活用してペーパーレス化していきたいという。デジタル技術を活用した本部と支部の情報共有の強化も今後の検討課題にあげている。

全建総連と連携しながら建設業界で働く人のために幅広い活動に取り組んでいる香川建労本部。人口減少や高齢化に伴って今後も加速する人手不足、働きやすい労働環境づくり、建築資材の高騰など建設業界が抱える様々な課題に対応する上で、各支部や組合員を巻き込んだデジタル技術の活用が大きな鍵を握っている。

企業概要

団体名香川県建設労働組合本部
住所香川県高松市鹿角町151-4
HPhttps://k-kennrou.jp
電話087-866-4722
設立1962年11月
従業員数6人
事業内容  健康保険・労災保険・共済の取り扱い、資格取得の補助、建設業許可申請、建設キャリアアップシステム登録窓口