Hグレード認定の鉄骨ファブリケーター、デジタル技術とホームページ強化で精度・生産スピード大幅アップ メタルテック(香川県)

目次

  1. 工場は国土交通省のHグレード認定 大型鉄骨を生産可能な高度な製造機械設備をそろえる
  2. 「以前は想像できなかったほどの変化のスピード 過去の成功に満足することなく、常に新しいことに挑戦していきたい」
  3. 2015年に鉄骨専用の3D-CADを導入 作図作業が3倍速く、部材同士の干渉や不具合も事前にチェック 品質の大幅向上に
  4. 製造プロセスを検証するために、全ての製品情報をデータ化し、たゆまぬ品質向上に取り組む
  5. クラウド型の勤怠管理システムと給与計算システムを2020年に導入 大幅な省力化と勤怠状況のリアルタイム把握で従業員へ配慮
  6. 年齢、性別、国籍に左右されることなく、誰もが生き生きと働くことができる環境を大事にしている
  7. ホームページ作成システムを導入して自社でホームページを編集 採用のページでは福利厚生の情報を発信
  8. 地元の鉄骨業界で先駆けてSDGs宣言 日々の業務を通じて環境や健康への意識を高めている
  9. デジタル技術の進化を更なる追い風に
中小企業応援サイト 編集部
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香川県中央部の綾歌郡綾川町に本社を構える2004年創業の株式会社メタルテックは、国土交通省のHグレード認定の工場を所有する、香川県を代表する鉄骨ファブリケーターだ。約20年の歴史の中で着実に成長し、四国を中心に数多くの大型プロジェクトに参画している。飽くなきチャレンジ精神を原動力に日々新しい可能性を追求。更なる事業拡大を目指して、生産工程と基幹業務の両面でデジタル技術を活用している。(TOP写真:メタルテックの工場で稼働する溶接ロボット)

工場は国土交通省のHグレード認定 大型鉄骨を生産可能な高度な製造機械設備をそろえる

Hグレード認定の鉄骨ファブリケーター、デジタル技術とホームページ強化で精度・生産スピード大幅アップ メタルテック(香川県)
メタルテックの工場の様子

メタルテックは、地元の四国と中国地域を中心に、商業施設、学校、駅、病院、物流倉庫・アリーナなどの建物の骨組みとなる鉄骨の製造から現場施工までを一気通貫で請け負っている。2002年、鉄骨を手掛ける個人事業の会社として創業した後、短期間で成長し、2004年に有限会社、2008年に株式会社に移行した。

Hグレード認定の鉄骨ファブリケーター、デジタル技術とホームページ強化で精度・生産スピード大幅アップ メタルテック(香川県)
メタルテックが所有する溶接ロボット(コマツ産機製 RAL20-6TM)

綾歌郡綾川町で2007年に完成したメタルテックの工場は、鋸(のこ)盤、ドリルマシーン開先機、ショットブラスト機、溶接ロボットなどの加工機械、門型クレーン、天井クレーンなどの設備をそろえる。製造した鉄骨の品質は、三次元測定機、超音波探傷器などを使って厳しくチェックしている。2009年に国土交通省のMグレード認定を取得した後、2021年に香川県内の建築鉄骨工場で唯一のHグレード認定を取得した。上位から2番目のHグレード認定を取得したことで大型鉄骨の製造が可能になり、事業を拡大する上で大きな効果が生まれているという。

「以前は想像できなかったほどの変化のスピード 過去の成功に満足することなく、常に新しいことに挑戦していきたい」

Hグレード認定の鉄骨ファブリケーター、デジタル技術とホームページ強化で精度・生産スピード大幅アップ メタルテック(香川県)
メタルテックが所有する複合加工機(アマダ製 WS1000)

メタルテックは、年間平均30件の案件をこなしている。実績としては、2024年9月に全面改装が完了したJR松山駅、2025年に完成した香川県立アリーナ(あなぶきアリーナ香川)、中国地方では広島サッカースタジアムなど、中四国を代表する大型プロジェクトが並ぶ。

「以前は想像できなかったほど変化のスピードが激しくなっています。この状況下、企業が存続し成長していくには、常に技術革新を図り、価値ある製品とサービスを提供し続けていかなければなりません。そのために必要な先進的な経営・管理体制を構築する上で重要な鍵を握るのが、デジタル技術と考えています。過去の成功に満足することなく、常に新しいことに挑戦していきたい」。2015年に就任した現在43歳の松澤由浩代表取締役社長は、事業に取り組む姿勢をこのように話した。

2015年に鉄骨専用の3D-CADを導入 作図作業が3倍速く、部材同士の干渉や不具合も事前にチェック 品質の大幅向上に

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鉄骨専用の3D-CADを活用して施工図を作成する様子(データロジック型 REAL4)

メタルテックは、創業当初からCADをはじめとするデジタル技術を導入して、鉄骨製造における精度とスピードの向上に取り組んできた。その中で、施工図を作成する際にフル活用しているのが、2015年に導入した鉄骨専用の3D-CADだ。3D-CADは、パソコンで立体的な図面を起こすことができるので、設計業務を効率化できる。また、作成した図面から体積、表面積などを簡単に計算できる機能も備えており、図面業者間でも3Dデータ共有を行い作図している(退避データ管理)

メタルテックが導入した3D-CADは、汎用CADを扱っているような感覚で3Dモデルを作成できる。3D-CADのおかげで、発注者から送られてきた設計図をもとに施工図を作成する作業が、3倍スピードアップしたという。それだけではない。3Dモデルで鉄骨を組み上げた状態を様々な角度から見ることができるので、平面モデルでは難しい部材同士の干渉や不具合などを製造前に細かくチェックできるようになった。

施工図の作成を担当する設計課の作業が効率化したことで、切断、穴開け、溶接、組立、塗装を担う製造課と、工程管理、現場管理を担当する工務課が、以前より余裕を持って仕事に取り組めるようになった。リードタイムの短縮はもちろん、より一層品質の向上に力を注ぐことができるようになったという。「3D-CADがなければ、現在のペースで受注量を増やすことは難しかったでしょう。会社の成長は3D-CADあってのものだと思っています」と松澤社長は話した。

製造プロセスを検証するために、全ての製品情報をデータ化し、たゆまぬ品質向上に取り組む

メタルテックは、製造プロセスの検証を徹底するために、製造した全ての鉄骨の製品データを社内のサーバーに蓄積。設計図、施工図、受注金額、写真などの情報に全ての従業員がアクセスできるようにしている。「詳細なデータの保存と活用は、たゆまぬ品質の向上に必要不可欠です。これでいいと満足してしまうと会社の成長は止まってしまいます。設計図と現物でわずかなずれも生じないように徹底することを心がけています」と松澤社長は話した。

クラウド型の勤怠管理システムと給与計算システムを2020年に導入 大幅な省力化と勤怠状況のリアルタイム把握で従業員へ配慮

Hグレード認定の鉄骨ファブリケーター、デジタル技術とホームページ強化で精度・生産スピード大幅アップ メタルテック(香川県)
従業員の勤怠状況をシステムで確認する様子

メタルテックは、鉄骨製造の工程だけでなく基幹業務でもデジタル技術を活用している。その一つが、2020年6月に導入したクラウド型の勤怠管理システムと給与計算システムだ。工場勤務の従業員はICカードで、内勤の従業員はパソコンで勤怠管理システムにアクセスして出退勤時間を記録している。「システムのおかげで、従業員の出退勤状況をリアルタイムで把握できるようになったので、残業時間が増えている人に対する配慮がより一層しやすくなりました」と担当者は話した。

以前はタイムカード用紙で勤務時間を記録していたため、全ての用紙を回収した後に給与計算システムに入力する作業が必要だった。勤怠管理システムは給与計算システムと連動し、勤務実態が自動的に反映されるので入力作業そのものの必要がなくなった。確認作業に集中するだけで済むようになったので、給与計算にかかる時間は、システム導入前の半分程度になったという。

給与計算システムは、個々の従業員の給与明細をデジタルで配布できる機能を備えている。「給与明細の配布を、用紙での配布を希望する従業員を除いて原則デジタル化したことで、印刷や封筒に封入する作業をわずかな時間で済ませることができるようになりました」と担当者は話した。

年齢、性別、国籍に左右されることなく、誰もが生き生きと働くことができる環境を大事にしている

Hグレード認定の鉄骨ファブリケーター、デジタル技術とホームページ強化で精度・生産スピード大幅アップ メタルテック(香川県)
メタルテックのオフィスの様子

メタルテックは近年、若手の人材採用に力を入れている。その結果、29人の従業員のうち、10代から40代が半数以上を占めるようになり、年齢構成の若返りが進んでいる。女性人材の活用にも取り組み、現在、7人が総務、設計、検査などの業務で活躍している。少子高齢化に伴う日本人の働き手不足に対応するために、ベトナム出身の海外人材の活用も進めている。「年齢、性別、国籍に左右されることなく、誰もが生き生きと働くことができる環境を大事にしています」と松澤社長は話した。

ホームページ作成システムを導入して自社でホームページを編集 採用のページでは福利厚生の情報を発信

Hグレード認定の鉄骨ファブリケーター、デジタル技術とホームページ強化で精度・生産スピード大幅アップ メタルテック(香川県)
メタルテックのホームページで掲載している採用情報

メタルテックは、ホームページ作成システムを導入して自社でホームページを編集し、会社案内、施工実績、設備機器、採用についての情報を発信している。採用のページでは、募集している仕事内容とともに、資格取得の支援制度、各種休暇制度、健康診断、作業服や小型ファンを備えた空調服の支給、弁当代の助成、子育て支援制度、社員旅行などの福利厚生を詳しく説明している。

地元の鉄骨業界で先駆けてSDGs宣言 日々の業務を通じて環境や健康への意識を高めている

2020年8月には、地元の鉄骨業界で先駆けて国連のSDGs(持続可能な開発目標)の実現に向けて具体的な活動を行うSDGs宣言を行った。重点テーマとして「目標5 ジェンダー平等を実現しよう」「目標9 産業と技術革新の基盤をつくろう」「目標12 つくる責任 つかう責任」を掲げ、具体的な取り組みとして、働きやすい環境づくり、製品や工法の開発に役立てるための受注内容のデータベース化、廃棄物処理の徹底などを宣言書に記載している。日々の業務の中でSDGsを意識することで、従業員の間で環境やワークライフバランスを大事に考える機運が高まるなど様々な効果が生まれているという。今後もSDGs宣言に新たな重点テーマと取り組みを追加していきたいという。

デジタル技術の進化を更なる追い風に

メタルテックは、今後もデジタル技術を活用して鉄骨製造工程の更なる効率化を進めることで、受注から現場で鉄骨構造物を組み立てるまでの期間の更なる短縮を目指す。「足元をしっかりと固めながら、四国の活性化につながるプロジェクトにこれまで以上に参画できるよう会社の体制を強化していきたい」と松澤社長は力強く思いを語った。技術革新に強い関心を持つことで着実な成長を続けてきたメタルテック。デジタル技術の進化は更なる飛躍を目指す上で大きな追い風になるはずだ。

企業概要

会社名株式会社メタルテック
本社香川県綾歌郡綾川町山田下874-1
HPhttps://metaltec.jp
電話087-816-4800
設立2004年3月(創業2002年)
従業員数29人
事業内容鉄骨構造物の加工から現場施工