矢野経済研究所
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国内製造業では、輸送用機械器具製造業(特に自動車)や電子部品・デバイス・電子回路製造業といった主力分野を中心にデジタル化投資が堅調

~2024年度の工場デジタル化市場規模は前年度比4.2%増の1兆8,420億円を見込む~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)は、国内の工場デジタル化市場を調査し、製造現場におけるIoT化実態やAIなどのテクノロジー活用動向、スマートファクトリー/デジタル工場、CPS/デジタルツインへの取り組みなどを明らかにした。ここでは、工場デジタル化市場規模の予測について、公表する。

工場デジタル化国内市場規模推移と予測

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1.市場概況

国内の工場では、様々な業種・業態において、生産設備・機器の稼働監視や維持管理、製品の外観検査・検品、資材や搬送機器などの位置情報管理において、IoT・クラウド・AIなどを使ったデータ収集/データ解析やモニタリングといった取り組みが進んでいる。これにより、異常検知・故障監視、遠隔監視、省エネ/エネルギー消費の見える化、次世代型品質保証、高度な自動化、現場作業者向け業務支援の高度化などが進展している。
この背景には、2010年代後半から、製造装置・生産機械や自動搬送機、さらには製品自体にも当初から通信機能(IoT機能)が組み込まれ、対象の稼働データや画像情報、位置情報、各種センサーデータなどが収集・蓄積できる体制が整備されてきたことがある。

2023年度はコロナ禍による工場向けシステム投資案件の保留・見合わせが一段落し、既に予定していた案件が再稼働を含めて動き出したことなどがマーケット拡大での追い風になった模様で、2023年度の工場デジタル化国内市場規模(ユーザー企業の発注金額ベース)は、前年度比103.7%の1兆7,670億円と推計した。       

2.注目トピック

サービス化する製造業の動向

製造業におけるビジネスモデル変革を考えると、例えば従来は主流であった製品単品での売切りモデルは徐々にではあるが減少している。それに反比例して、製品などの購入後のサポートやメンテナンス支援、消耗品提供などを含めたサービス販売モデル(従量課金モデルや、定額/サブスクリプションモデル、バリューシェアリングモデル、アフタービジネスモデルなど)へのシフトが始まっている。

​サービス販売モデルの代表例としては、MFP(複合複写機)でのカウンターチャージモデルがある。このモデルは、生産設備・機器やユティリティ設備、産業用ロボットなどでの採用も始まっており、既に一部のコンプレッサーメーカーが提供する、圧縮空気量に対する従量課金モデルなどが該当する。
他にも、設備は機器メーカーなどが保有し、ユーザ企業は設備使用量や使用時間に応じて課金されるモデルなど、定額/サブスクリプションモデルやバリューシェアリングモデルなども採用が始まっている​。

3.将来展望

2024年度では、自動車を中心とした輸送用機械器具製造業での旺盛な工場デジタル化投資や、半導体工場の国内新設及び半導体生産能力の増強、さらには円安の定着、経済安全保障や中国リスク対応といった外部環境変化に伴う「製造業の国内回帰」も追い風となっている。尚、2024年度下期からは、いわゆる「トランプリスク」も意識され始めたため、製造業の一部業種では投資計画を見直したり、様子見を始めたところも出ている。 但し、製造現場全般ではデジタル活用が進展しており、2024年度の工場デジタル化国内市場規模は前年度比104.2%の1兆8,420億円を見込む。

調査要綱

1.調査期間: 2024年12月~2025年3月
2.調査対象: ITベンダー・SIer、機器・装置メーカー/機器・装置メーカー系の情報システム事業者、アプリケーションベンダーなど
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話やアンケートによる調査、ならびに文献調査併用
<工場デジタル化市場とは>
工場デジタル化とは、業務効率化/自動化やコスト削減、現場の見える化などをターゲットとして、現場向けIT投資、IoT・クラウド・AIといったITテクノロジーの適用、データ基盤の構築(スマート工場/デジタル工場化)などを目指した取り組みである。

本調査における工場デジタル化​市場とは、ハードウェア、ソフトウェア、プラットフォーム(クラウド)利用料、工事費(電気設備・通信設備)、SI・コンサルティング、サービス・サポート費、保守メンテナンス、要員派遣などを対象として、ユーザー企業のITベンダーなどへの発注金額ベースで算出した。
言い換えると、ITベンダー・SIer、機器・装置メーカー、通信キャリア、系列の情報システム子会社のIT関連売上高と対比できる、ユーザー企業から外部へのキャッシュアウトフローである。 なお、ユーザー企業が機器・装置等を自社で調達し、内製でシステム対応する分は含まれない。
<市場に含まれる商品・サービス>
工程管理/稼働監視・遠隔モニタリング、エネルギー管理(省エネ)、品質管理/外観検査・検品、保全・メンテナンス、現場作業者支援、SCM、アセット管理など

出典資料について

資料名2025 IoT活用が進む製造現場/製造業の実態調査 ~IoT/AI実装が進む製造現場の現状と展望~
発刊日2025年03月14日
体裁A4 269ページ
価格(税込)220,000円 (本体価格 200,000円)

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