4月13日、経営再建中の液晶パネルメーカー、ジャパンディスプレイ(以下、JDI)は、会社資金の着服を事由に懲戒解雇され、昨秋、自殺した元経理部門社員が告白した「不適切な会計処理」に関する第三者委員会による調査結果を公表した。
確認された不正とは、期末在庫の架空計上、費用の先送りや資産化による利益操作などで東証1部上場後の2014年3月期から2019年上期まで続けられていた。過大計上された在庫は決算処理後、翌期に減損処理、最終損益に与えた影響は累計16億円とのことであるが、2016年3月期では102億円の不正利益が上乗せされていた。
JDIは粉飾決算が常態化した理由について、「不適切会計処理の多くは、不適切会計処理の通知を行った元従業員が主導した」ものであり、直接的な要因は「当該元従業員に経理部門の権限が集中し、上位者や経理部門内部での牽制が十分に機能しなかった」こと、「業績達成に向けた上位者からのプレッシャーが存在していた」ことにあると説明した。また、間接的な要因として、「当社の長年の業績不振、営業利益を最重視する社風、取締役会による監視監督機能や内部統制システム機能の不十分性等も背景にある」と総括した(4月13日付け、同社リリース資料より)。
しかしながら、長期にわたって繰り返された不正な会計処理が経理部門の一社員判断で行われていたとは考え難いし、そこまで追い込まれるほどの業績達成プレッシャーを当該社員が負っていたとの説明も違和感が残る。とは言え、例えその通りであったとしても、トップや経理担当役員がこれを見抜けなかったとすればそれはそれで経営者としての資質と能力に問題があったと言わざるを得ない。
JDIは2012年4月、経済産業省主導のもとでソニー、東芝、日立のディスプレイ部門が統合、官民ファンドのINCJ(旧産業革新機構)から2,000億円の出資を受けて誕生した国策会社である。しかし、上場後も5期連続で赤字を計上、昨年4-6月期には債務超過に転落、出資を検討していた中国・台湾の企業連合からも見放された。
そうした中での不正発覚である。数千億円の公的資金を投じてきたINCJ、最大顧客のアップル、新たな支援者となったいちごアセットマネジメント、個人株主、一般従業員、、、JDIを支えてきたステークホルダー全員が粉飾された経営数値を見せ続けられてきたということだ。
不正会計の公表とともに発表された2019年4~12月期の業績は売上387,775百万円(前年同期比83.3%)、最終利益は110,885百万円の赤字(前年同期は9,814百万円の赤字)となった。
13日の会見で菊岡社長は「ご心配をおかけし、深くお詫びする」と謝罪したとのことであるが、2千社を越える下請け会社のためにももはや後はない。今期の厳しい経営環境は誰も同じだ。これを乗り越え経営再建の道筋を “結果” をもって示すこと、それ以外に信頼回復と投じられた公的資金に応える道はない。
今週の“ひらめき”視点 4.12 – 4.16
代表取締役社長 水越 孝