「共創の未来を創る」— Creww Capital の挑戦(前編)

オープンイノベーションをリードする存在として、日本のスタートアップと企業をつなぐCreww株式会社。その新たな事業として誕生した「Creww Capital」は、CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)支援とファンド運営を専門に手がける新会社です。

Creww Capitalは、投資にとどまらず、企業とスタートアップのシナジー創出を重視し、CVCの立ち上げから戦略策定、ファンド運営、事業共創までを包括的に支援しています。

今回のインタビューでは、Creww Capitalの設立背景や事業戦略、CVC支援の独自性について、代表の伊地知 天さんと松本 直人さんにお話を伺いました。日本と海外のスタートアップエコシステムをつなぎ、オープンイノベーションの新たな潮流を生み出すCreww Capitalの挑戦とは?

なお、本記事は3部構成の前編です。

目次

  1. Crewwの事業内容とCreww Capital設立の経緯
  2. 松本直人さん参画の背景
  3. 国内外のスタートアップ支援について
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Crewwの事業内容とCreww Capital設立の経緯

「共創の未来を創る」— Creww Capital の挑戦(前編)
Creww Capital株式会社 代表取締役 伊地知 天さん(Creww株式会社 代表取締役)

── まず、Creww株式会社の事業内容と、そこからCreww Capitalを設立した背景やビジョンについて伺えればと思います。

伊地知氏:Crewwは2012年の創業以来、オープンイノベーションを軸に、大企業とスタートアップの連携を支援してきました。近年では中堅・中小企業にも対象を広げ、事業会社とスタートアップを結びつける役割を担っています。

2016年頃から、オープンイノベーションを進めた企業から「次のステップとして、スタートアップへの出資を検討したい」という相談が増えました。当時はCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)のブームもありましたが、当社ではCVC支援を提供しておらず、適切な企業を紹介するにとどまっていました。そこで、CVCの立ち上げや運営を直接支援するためにCreww Capitalを設立しました。

── CVC支援へ踏み出した理由を教えてください。

伊地知氏:オープンイノベーションとCVCは本質的に同じ方向を向いています。協業の延長として資本を注入するか、出資をきっかけに協業を生むかの違いで、いずれも事業会社とスタートアップの共創を生み出す手段です。

また、CVCに取り組む企業は以前は大企業が中心でしたが、近年では中堅・中小企業にも広がっています。こうした変化を受け、松本さんとも議論を重ね、Creww Capitalを立ち上げました。

松本直人さん参画の背景

「共創の未来を創る」— Creww Capital の挑戦(前編)
Creww Capital株式会社 代表取締役 松本 直人さん(株式会社ABAKAM 代表取締役)

── 松本さんがCreww Capitalに参画された背景について伺えればと思います。

松本氏:私と伊地知さんの接点は、私がフューチャーベンチャーキャピタル(以下、FVC)の代表を務めていた頃にさかのぼります。当時から、Crewwの伊地知さんが手がけるアクセラレーションプログラムの中で、大企業がCVCを立ち上げる際にFVCとしてGP(ゼネラルパートナー)を務めるという話を何度もしていました。

2022年にFVCの社長を退任した後、複数の大企業から「CVCの立ち上げや運営を手伝ってほしい」という相談をいただく機会が増えました。現在も、JR東日本スタートアップ株式会社のファンドなどに関わっていますが、その中で改めて感じたのは、CVCは投資だけではなく、シナジーの創出が不可欠だということです。

そんな中、伊地知さんからCreww Capitalの構想を伺い、「まさに求めていたCVC支援の形」だと感じました。オープンイノベーションの文脈でCVCを支援し、投資とアクセラレーションの両輪を回す仕組みを作る。この考えに強く共感し、ぜひ自分も力を入れたいと思い、参画を決めました。

── 「投資とシナジーの両軸を回していく」という点に共感があったのですね。

松本氏:そうです。投資先との関係を築くだけでなく、事業リソースをどう活用するか、投資した企業とどのように協業を生み出すかが重要です。特に、CVCが単なる出資にとどまると、投資先と本当に価値を共創するのが難しいと痛感しました。さらに、社内のリソースを巻き込みながらシナジーを生むには、PoC(Proof of Concept:概念実証)を活用し、具体的な協業モデルを確立することも必要だと考えています。

その点で、JR東日本スタートアップ株式会社の取り組みは非常に参考になりました。彼らはアクセラレーションと投資の両方を行い、協業を生み出しながら投資を実施するスタイルをとっています。このアプローチが最も効果的だと確信しました。

国内外のスタートアップ支援について

── 国内外のスタートアップ支援における目標や、グローバル市場での役割について伺えればと思います。

伊地知氏:Creww Capitalは、国内外のスタートアップ支援をスコープに含めています。大きく分けると、国内の事業会社とスタートアップのシナジーを生むCVC支援と、グローバル市場でのアクセラレーションファンドの運営の二つが軸になります。まず、国内に関しては、これまでお話ししてきたように、事業会社とスタートアップのシナジーを生み出すCVC支援に注力しています。スタートアップとの協業を深める中で、出資を通じてより強固な関係を築く企業が増えており、Creww Capitalはその立ち上げや運営をサポートする立場を担っています。

一方、グローバルの取り組みとしては、『Real Madrid Next Accelerator for Asia』のような海外のアクセラレーション事業を手がけています。

── 「Real Madrid Next Accelerator for Asia」とは、どのような内容でしょうか?

「共創の未来を創る」— Creww Capital の挑戦(前編)

伊地知氏:欧米の有名ブランドとアジアのスタートアップをつなぐプログラムです。これまで国内で事業会社とスタートアップを結びつけてきましたが、そのグローバル版と考えていただければ分かりやすいと思います。このプログラムの特徴は、採択されたスタートアップに対し、専用のアクセラレーター・ファンドを設立し、投資を行う点です。例えば、レアル・マドリード・プログラムでは7社のスタートアップが採択され、彼らに特化したファンドを設立する動きを行なっています。

レアル・マドリード・プログラムの成功を受けて、世界中のスポーツチームから多くの問い合わせをいただいています。現在、いくつかのチームとはすでに契約を進めており、2025年には少なくとも3つのグローバルプログラムがオープンする予定です。それぞれにアクセラレーター・ファンドを設立し、スタートアップの成長を資金面からもサポートしていきます。

── Creww Capitalは、それらのアクセラレーションファンドのGP(ゼネラルパートナー)として関わる形でしょうか?

伊地知氏:そうですね。各プログラムに紐づいたアクセラレーター・ファンドのGP業務を、現地のベンチャーキャピタルと共同で担う形になります。グローバル市場におけるCreww Capitalの役割は、世界のスタートアップと大企業を結びつけ、その成長を資金と事業支援の両面で支えることです。

── 松本さん視点ではいかがでしょうか?

「共創の未来を創る」— Creww Capital の挑戦(前編)

松本氏:私が一貫して意識しているのは、「投資の多様性が、スタートアップの多様性を生む」ということです。投資家の種類が偏っていると、支援されるスタートアップの領域や成長モデルも画一的になりがちです。だからこそ、多様な投資家が存在し、それぞれが異なる視点で投資することが重要だと考えています。例えば、純粋なキャピタルゲインを目的とする独立系VCがある一方で、CVCのように特定の領域や研究開発を目的とした投資もあります。さまざまなリソースを持つ企業が、投資という手段を通じてスタートアップの成長を加速させる。そうしたエコシステムを構築することが、私の目標です。現在、日本国内のCVCの数は1,000社に迫る勢いで増加しています。しかし、すべての企業が投資の専門知識を持っているわけではありません。そこで、Creww CapitalがCVCの立ち上げや運営を支援し、企業がスタートアップと連携しながら成長できる仕組みを提供することが求められていると感じています。また、この投資の多様性は、技術領域に限らず、地域課題の解決やソーシャルインパクトの創出にもつながります。大企業が単に利益を追求するのではなく、自社の課題や地域の課題を解決するための投資を行い、その成果がスタートアップの成長につながる。そんな循環を生み出すことが、私にとっての究極の目標です。

── 海外についてはいかがでしょうか?

松本氏:FVC時代には、海外のスタートアップへの投資や、現地企業との連携、法規制に対応した投資のノウハウが十分に整っていませんでした。そのため、どうしても国内企業への投資支援が中心になっていたんです。しかし、現在は状況が大きく変わりました。Creww Capitalでは、特にアジアのスタートアップネットワークや投資機会を数多く持っています。それらを活用することで、日本の大企業が海外市場、特にエマージング・マーケットへ進出する手助けができるようになりました。

実際、日本の大企業の多くは、売上の半分以上を海外市場で生み出しています。国内市場だけでなく、アジアなどの成長市場に目を向けることは不可欠です。そうした中で、Creww Capitalの持つアジアのスタートアップネットワークが、大企業のCVC戦略において強みを発揮すると考えています。

── 海外投資のノウハウだけでなく、ネットワークそのものが大きな価値を持つということですね。

松本氏:そうですね。この話は、Creww Capitalが提供するCVC支援の特徴にもつながってきます。単なる投資ノウハウの提供だけでなく、国内外のスタートアップと大企業を結びつけ、実際の事業成長につなげる支援ができることが、私たちの強みです。


中編へ続く・・・https://startuplog.com/n/nf610d8c342dc

<本記事で紹介させていただいたCreww Capital様>
会社名:Creww Capital株式会社
所在地:〒150-0043 東京都渋谷区道玄坂1-19-9 4F

HP:https://creww.in/global/ja/capital
CONTACT:https://spot.creww.me/creww-capital/contact