【VCインタビュー】コマース革命の旗手-New Commerce Ventures(後編)

“Create the Future of Commerce”

今回のインタビューでは、小売・流通のDXを加速する国内初のコマース特化型VCファンドを運営するNew Commerce Ventures株式会社の松山馨太さんと大久保洸平さんにお話を伺いました!

前編ではNew Commerce Venturesのお二人のバックグラウンド、New Commerce Venturesの設立背景や組織体系について伺いました。

前編はこちら:https://startuplog.com/n/n30d1a3cea3f7?sub_rt=share_pb

後編の今回は、New Commerce Venturesの投資方針や日本のスタートアップ環境の課題と今後のビジョンについて探っていきます!

STARTUP LOGでは、VC・投資家のみなさまの活動紹介を行い、スタートアップ関係者にとって有益な情報提供をさらに拡充していきます。
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目次

  1. New Commerce Venturesの特徴について
  2. 投資先の支援について
  3. 投資方針・出資における判断軸について
  4. お二人が感じる業界の課題
  5. 起業家・起業を志している方へのメッセージ

New Commerce Venturesの特徴について

【VCインタビュー】コマース革命の旗手-New Commerce Ventures(後編)

ー貴社の独自性や特徴・強みについて教えていただけますか?

大久保氏:私たちは、コマースやリテール領域に特化している点が最大の特徴です。この特化が生む強みとして、大きく3つ挙げられます。

1つ目は、出資先コミュニティでのシナジーです。出資先がすべてコマース・リテール領域の企業で構成されているため、コミュニティ内でのノウハウ共有や営業先の紹介が自然に生まれます。同じ領域に特化しているからこそ、企業間の連携がスムーズになり、相互に成長を加速させる環境が整っています。

2つ目は、事業会社とのオープンイノベーション支援です。スタートアップ支援にとどまらず、大手事業会社との連携を促進することも私たちのミッションの一つです。スタートアップにとって、事業会社との協業は事業成長の大きなチャンスになります。その実現をサポートすることで、スタートアップと事業会社の双方にメリットを生む仕組みをつくっています。

3つ目は、情報発信とイベント活動の強化です。最新の業界動向をキャッチアップするためのレポート配信や、新規事業に関するディスカッションの場を提供しています。また、単なる情報提供にとどまらず、「こんなアイデアで起業しませんか?」といった提案を行い、事業立ち上げの壁打ち相手としても機能している点が特徴です。

私たちは後発のVCであり、ファンド規模も他のシードファンドと比べると大きくはありません。そのため、情報発信やイベントを通じて独自性を発揮し、「コマース領域のVCといえばNew Commerce Ventures」と認識してもらえるよう、ブランドづくりに取り組んでいます。

投資先の支援について

【VCインタビュー】コマース革命の旗手-New Commerce Ventures(後編)

ー投資先の支援について、具体的にどのようなことをされているか教えていただけますでしょうか。

松山氏:シードステージでは、まずアイデアの壁打ちやディスカッションを通じて、仮説の構築を支援しています。仮説がある程度固まった段階で、適切なインタビュー先やヒアリング先を紹介し、検証プロセスをサポートします。

ステージが進むと、営業先や協業先となる事業会社を紹介し、売上につながる支援を強化します。この取り組みはステージに関係なく行っており、特に領域特化型VCの強みを活かし、同じ業界の上場企業の経営者や先輩経営者を招いた交流会を頻繁に開催しています。こうした場を通じて、出資先企業の経営者が先輩起業家の経験知やアドバイスを得たり、人脈を広げたりする機会を提供しています。単なる知識共有にとどまらず、実践的な学びや新たな刺激を得られる環境を整えていることが特徴です。

ー事業会社とのマッチングはスタートアップにとって非常に有益ですね。

大久保氏: そうですね。2024年10月末には、約400人規模のイベントを開催しました。このイベントでは、スタートアップと事業会社が一堂に会し、オープンイノベーションをテーマに交流を深めました。ここに参加された方々や、日頃からお付き合いのある事業会社の方々が、私たちのメンターコミュニティを支えています。

また、アクセラレーションプログラムも試行錯誤しながら進めています。基本的なコンセプトは、「01を生み出すタイミングを、コマース・リテール領域のプロフェッショナルとともに進める」というものです。初期段階から、経験豊富なメンターとの壁打ちを実施し、PoC(概念実証)の初期ユーザーとして協力いただくこともあります。また、新規事業の種となるアイデアをディスカッションで引き出しながら、「種だけでは花は咲かない」という考えのもと、顧客開拓のサポートやサービスの実現可能性の深掘りを進めています。

このようにして、コマース領域で次世代を担う大きなサービスが生まれることを期待し、多くの方々にご協力いただいています。これらの取り組みは利益を目的としたものではなく、「純粋にスタートアップを応援したい」という共感が支えています。そのため、プログラムの形も固定化せず、柔軟に変えながら運営しています。

ー素晴らしい取り組みですね。その他の支援についてはいかがでしょうか

松山氏:投資先向けに合宿型の研修プログラムを開催しています。前回の合宿では、ヤフーで長年人事やコーポレートのトップを務め、「1on1」に関する書籍を執筆された本間さんを講師としてお招きしました。本間さんには、組織論や人事・採用における重要なポイントを講義していただき、さらに参加者全員との1on1セッションも実施していただきました。これにより、1on1

重要性や組織マネジメントの実践的なスキルを学ぶ機会を提供しました。
今後は、IPOやデット、労務管理に関するプロフェッショナルを招いた勉強会を開催し、経営者が適切な知識を身につけられるよう支援していく予定です。もちろん、ファイナンス支援にも積極的に取り組んでいます。次のラウンドに向けた投資家の紹介や、フォローオン(追加出資)を通じて、資金調達のサポートを行っています。さらに、事業計画の策定や資本政策のアドバイスといった、基本的な経営支援も提供し、スタートアップの成長を総合的にサポートしています。

投資方針・出資における判断軸について

【VCインタビュー】コマース革命の旗手-New Commerce Ventures(後編)

ー投資先の特徴や対象領域について、具体的にお聞かせください。

大久保氏:私たちは、物やサービスの生産から消費までのサプライチェーン全体を投資対象としています。具体的には、製造のDX、物流、卸売、調達、仕入れ、小売、EC、リテールテックなど、物の流れを支える領域に注目しています。さらに、サービス業全般にも投資を行っており、旅行、ホテル、飲食、美容、クリニックなどの店舗ビジネスも対象としています。こうした分野で課題解決に取り組む企業を支援し、産業の変革を促したいと考えています。

「それもコマースなの?」と聞かれることがありますが、コマースという概念は非常に広く、小取引や物の流れはさまざまなビジネスに関わっています。私たちは、この広義のコマースに投資を行い、新たな価値を生み出す企業を支援しています。投資先のビジネスモデルの割合としては、約50%がBtoBのDXや産業DX、30〜40%がマーケットプレイス(BtoB、BtoC、CtoC問わず)、残り10〜20%がECやD2C(ダイレクトトゥコンシューマー)となっています。ECやD2Cに特化しているイメージを持たれがちですが、実際にはそれ以外のビジネスモデルに投資する割合が高いのが特徴です。

ー起業家に求める共通点や特徴はありますか?

松山氏:まず、「誰よりも詳しいか」を重視しています。成功する起業家は、市場や競合、顧客について徹底的に調べ尽くしていると感じます。私たちが面談した際に「こちらのほうが詳しい…」と感じる場合、その業界で勝ち抜くのは難しいと判断します。心配性なくらい情報を集め、分析している人が理想的です。

次に、スピード感です。アイデアを思いついたら即行動し、1〜2週間で形にできるかどうかを見ています。特にシードステージでは、限られた資金の中で仮説検証を高速に繰り返す必要があるため、迅速に動ける力が求められます。

最後に、逆算思考ができるかどうかです。業界を変革するという大きな目標を掲げつつ、ゴールから逆算して最適な戦略を考えられる力が重要になります。高い視座を持ちながら、最短距離で成果を出せるアプローチを選び抜く力を評価しています。

加えて、人間性も大切です。謙虚さや素直さがあり、共感できる人物かどうかも判断のポイントになります。ただ、これには感情的な要素も含まれるため、主要な判断基準としては、調査力・スピード感・逆算思考の3つを重視しています。

ー投資判断までの面談数やプロセスとしてはいかがでしょうか?

松山氏:オンラインも含め、2〜3回の面談を行うことが一般的です。初回の面談では事業の概要を伺い、その後、課題や質問点を深掘りするセッションを設けます。最後に、投資委員会への提出に向けた細かな調整を行うため、合計で3回程度の面談を実施するケースが多いです。

また、面談後に課題を提示することもあります。例えば、「海外のこの企業を参考にするとこう見えますが、どうお考えですか?」といった形で宿題を出させていただき、その回答のスピードや内容を基に評価することがあります。徹底的な調査や質の高い回答は、投資判断のプラス材料としています。

大久保氏:私たちが特に共感するのは、産業構造そのものを変革しようとする高い視座を持つ起業家です。次世代のコマースを築くという強い意志を持ち、徹底した調査力、粘り強さ、そして地道に取り組む泥臭さを兼ね備えた方々が印象に残ります。こうしたバランスの取れた起業家こそ、私たちが理想的な投資先と考えています。

お二人が感じる業界の課題

【VCインタビュー】コマース革命の旗手-New Commerce Ventures(後編)

ー御社の取り組みを通じて感じる業界の課題についてどのように捉えていますか?

大久保氏:私たちが注目しているのは、事業会社との連携やオープンイノベーションの推進です。近年、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)の数は増えていますが、CVC業界内でのノウハウの共有が進むとCVCの成功確率も高まっていくのではないかと考えています。

特に日本では、海外のように大企業がGAFAMのようなスタートアップ発の企業ではなく、歴史の長い企業が多いため、スタートアップとの連携が進みにくい状況があります。しかし、業界の課題解決には、大企業とスタートアップが協力し合うことが不可欠です。この連携が、業界全体の発展、そして、日本のスタートアップがユニコーン企業へと成長するための鍵になると考えています。

私たちは「インダストリーベンチャーキャピタル」として、事業会社とスタートアップのハブとなることを目指しています。先ほどもお話しした通り、様々なイベントを開催し、大手事業会社やスタートアップ同士がつながる場を提供しています。こうした取り組みを通じて、資本提携、業務提携を含むオープンイノベーションの推進につなげていくことを目指しています。

ーその取り組みが業界の枠を超えて広がることで、日本全体にも良い影響が波及していくということですね。

大久保氏:その通りです。私たちはコマース領域に特化していますが、このモデルが成功すれば、他の業界にも同様の取り組みが広がる可能性があります。こうした動きが加速すれば、日本全体で課題解決のスピードが上がり、競争力の向上にもつながると考えています。

起業家・起業を志している方へのメッセージ

【VCインタビュー】コマース革命の旗手-New Commerce Ventures(後編)

ー最後に、これから起業を目指す方や、すでに起業されている方々へ、それぞれメッセージをお願いいたします。

松山氏:私たちは、この領域に特化したインダストリーベンチャーキャピタルとして、ネットワークを最大限活用し、スタートアップを支援しています。この分野で起業を考えている方や、すでに活動している方は、ぜひご相談ください。

また、投資の有無に関わらず、業界全体を盛り上げるためのコミュニティ活動にも力を入れています。起業家同士のつながりを生み出し、より良いエコシステムを作ることが私たちの役割です。興味を持たれた方は、ぜひお声がけください。

大久保氏:私たちは、次世代のAmazonや楽天のような存在を共に生み出したいと考えています。まだアイデア段階の方や、起業を迷っている方も、この領域で挑戦したいという強い思いがあるなら、ぜひご相談ください。

コマースやリテールは、人々の生活の基盤に直結する重要な領域です。人口減少や環境問題など、社会課題が深刻化する中で、次世代のインフラとなるサービスを一緒に創り上げていきたいと考えています。日本のモノ、コンテンツ、サービスには、世界に通用する強みがあります。ライフスタイルの基盤となる新たなサービスを、日本から世界へ広げたいという方と、一緒に挑戦できれば嬉しいです。

ー松山さん、大久保さん、本日は貴重なお話をありがとうございました!コマース・リテール領域への深い洞察と、起業家と共に業界の未来を創り上げていくという熱い想いが伝わってきました。領域特化型VCとして、新たなイノベーションを支えるお二人の挑戦が、多くの起業家にとって大きな力になると確信しています。New Commerce Venturesのさらなるご発展を、心より応援しております!

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