BIMとは?CIM・CADとの違いや導入のメリット・デメリットを解説

目次

  1. BIMとは
  2. BIMとCIM・CADとの違い
  3. 日本におけるBIMの現状
  4. BIMを導入する3つのメリット
  5. BIM導入の2つのデメリット
  6. 建築BIM加速化事業とは
  7. 代表的なBIMソフト
  8. まとめ

BIMとは、日本の建設業界で注目を集めている、建造物に関する情報のモデリング手法の1つです。この記事では、BIMの基礎知識やCIMとの違い、導入のメリット、デメリットなどについて解説します。BIMの導入を検討している建設業界の担当者は、ぜひ最後まで読んで役立ててください。

BIMとは

BIMとは、Building Information Modelingの略で、日本語に訳すと「建物情報構築」となります。面先や材料、部材など建築物の属性情報を内蔵した、3次元建物モデルの統合データベースシステムです。そのため、設計ツールとしてだけではなく、建物の企画から施工からメンテナンスまで、一連の流れを一元管理できます。

また、これまで2次元で管理されていた建築物の情報が、パソコン上で3次元モデルとして扱えるようになりました。現在ではIoTやAIとの連携、ビッグデータの活用など、プラットフォームとしての活用も期待されています。

※参考:建築分野におけるBIM の標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン(第2版)|建築 BIM 推進会議|国土交通省

BIMとCIM・CADとの違い

BIMと混同されやすい存在として、CIM、そしてCADの名前が挙げられます。それぞれBIMとどのような点が異なっているかについて、以下で解説します。

BIMとCIMの違い

CIMとは、Construction Information Modelingのことです。3次元データに情報を付加していくことで、業務効率化を図る点はBIMと同じです。しかし、BIMとCIMは、それぞれ活用対象となる分野が異なります。BIMは主に建設工事に活用されていますが、CIMは主にダムや道路などのインフラ設備で活用されているシステムです。

また、モデリングアプローチや、各技術の適用範囲も異なっています。

BIMとCADの違い

CADとは、Computer-Aided Designのことです。これまでの建築業界においては、図面作成をする際は、主にCADが活用されてきました。BIMとCADの違いとして、図面の作成手法が挙げられます。CADは3Dを作成する際、2次元の図面を用意しなければなりません。しかし、BIMは最初から3Dモデルを作成し、さらに3Dモデルから2次元の図面の作成が可能です。

CADと異なり、BIMは設計から施工、管理まですべてのデータが連動しています。そのため、図面の一部に修正を加えると、自動で関連するデータを修復します。そのほかにも、BIMは維持管理や運用などに必要な情報を追加できるため、建設後のデータ利用も可能です。

日本におけるBIMの現状

すでに大手ゼネコンでは、建築プロジェクトにおける設計や、施工の段階でのBIMの活用が一般化しています。しかし依然として中小企業においてはBIMの導入率は低く、普及しているとはいえない状況です。BIMの日本の現状、そして今後の展望について、以下で詳しく解説します。

全ての公共事業に「BIM/CIM」を原則適用

2020年に、国土交通省は小規模工事以外のすべての公共事業にBIM、またはCIMを原則適用することを決定しました。これはBIM、およびCIMの導入によって情報収集の容易化、そして生産力の向上などに期待しているためです。以前の目標より2年前倒しの2023年より適用が始まっており、国土交通省を中心に環境整備が進んでいます。

※参考:令和5年度BIM/CIM原則適用について|国土交通省

BIMの未来

BIMの将来的な活用方法として、AIやIoT技術などとの連携が挙げられます。著しい発展を見せているAIやIoT技術ですが、昨今はさまざまな業界で一般的に活用される存在となりました。BIMと組み合わせることで、より詳細な情報を提供し、建物全体の一連のライフサイクルのサポートが可能となるでしょう。

BIMを導入する3つのメリット

今後日本国内での普及が予想されるBIMを導入することによって、具体的にどのようなメリットが得られるのかについて解説します。

イメージの共有がしやすい

BIMを導入することで、プロジェクトの早い段階で、3次元モデルでの建物形状や空間のイメージの共有ができます。そのため、建築の知識がない人も、建物がどのように仕上がるのか、具体的なイメージをつかみやすくなります。プロジェクトにおける協議でも、円滑にコミュニケーションが取れるでしょう。

業務を効率化できる

BIMの導入によって、業務の効率化が期待できます。維持管理段階で使用する各種システムと連携することで、BIMデータの属性情報と資産台帳の一元化が可能です。分断されていた情報を統合することで、業務の大幅な効率化が実現できるでしょう。そのほかにも、予防保全による設備維持コストの削減、修繕計画の検討などにも活用できます。

また、設計段階で詳細なシミュレーションができるため、構造上の問題を早期発見できる点もメリットです。現場での手直しをはじめ、再作業、事故なども防げます。

修正の手間を軽減できる

修正の手間を軽減できる点も、BIMを導入するメリットです。これまで設計や施工、管理などの情報は、それぞれ分断した状態で管理されていました。そのため、修正が1か所でも発生すると、関連する部分をすべて手作業で修正しなければなりませんでした。

BIMは企画から設計、施工、管理に至るまですべての情報が連動しています。一部分の情報を修正すると、関係するすべてのデータが自動で修正されるため、修正の手間や修正ミスを大幅に削減することが可能です。

BIM導入の2つのデメリット

BIMの導入にはさまざまなメリットがありますが、もちろんデメリットも存在します。BIM導入によってもたらされる具体的なデメリットについて、以下で解説します。

時間と費用がかかる

BIMを導入するにあたって、は、ソフト自体の費用も掛かりますが、大容量のデータを取り扱うため、インストールするパソコンについてもある程度以上のスペックのものが必要となります。また、導入後の維持費の確保や、実際に使用するまでに外部から講師を招いて研修会を開くなどの時間、教育コストも考慮する必要があります。

専門の人材が必要である

専門スキルを持った人材を用意しなければならない点も、BIMを導入するデメリットです。広く普及しているCADと比較すると、BIMを扱える人材は不足しています。そのため、BIMの導入と合わせて人材の育成を進めなければ、BIMのポテンシャルを十分引き出すことはできません。

人材育成の方法はいくつかありますが、そのなかでもメジャーな方法が資格取得の支援です。BIMには、ソフトウェアメーカーの認定資格や、日本BIM協会の認定資格などの民間資格があります。資格を取得すれば、十分な知識と技術を有している客観的な証明にもなります。

※参考:Archicad BIM 認定試験│ Graphisoft

建築BIM加速化事業とは

建築BIM加速化事業とは、BIMの社会実装の更なる加速化を目的に、国土交通省が開始した補助事業のことです。規模の大きい事業として知られており、2022年には2次補正予算にて国費80億円が投じられました。建築BIMを活用する建築プロジェクトで、BIMモデル作成費を上限として支援することが、主な事業の内容になります。

ただし、すべての建設プロジェクトが支援対象になるわけではありません。日本国外の新築プロジェクトの設計や建設工事、BIMを活用しないプロジェクトなどは、支援の対象外です。

※参考:建築:建築BIM加速化事業について│国土交通省

設計BIMモデルや施工BIMモデルの作成などの費用が幅広く補助される

補助対象者は設計または施工を行う者で、企業の規模に条件は設けられていません。設計BIMモデルや施工BIMモデルの作成などに対して、必要な費用が幅広く補助されます。下請事業者をはじめとする協力事業者のみならず、代表となる元請事業者なども補助の対象です。事前に、プロジェクトの代表となる事業者の登録が必要です。

※参考:建築BIM活用プロジェクトを支援します|国土交通省

代表的なBIMソフト

最後に、これからBIMの導入を検討したい建設業界の担当者に向けて、代表的なBIMソフトを3つ取り上げ、それぞれの特徴も解説します。

Revit

Revitは、アメリカのオートデスク社が開発したBIMソフトです。オートデスク社が開発した製品として、Auto CADの名前も挙げられます。すでにオートデスク社の製品を導入している場合は、使い勝手で不便を感じることは少ないでしょう。

Archicad

Archicadは、ハンガリーのグラフィソフト社が開発したBIMソフトです。階段ツールや手摺りツールなどが装備されており、3次元オブジェクトも充実しています。無料版はリリースされていませんが、体験版ライセンスを取得することで、30日間無料で全機能を試せます。

GLOOBE

GLOOBEは、福井コンピュータアーキテクト株式会社が開発した、国産のBIMソフトです。海外産のBIMソフトとは異なり、日本の建築基準法や規格に対応しています。特別な設定も必要ないため、BIMソフトの使用経験が浅い初心者にもおすすめです。

まとめ

BIMは、業務効率を向上させる存在として、期待がかかっています。一方で、時間やお金がかかるなどのデメリットもあります。BIMを導入するにあたって、どのように課題をクリアするのか、話し合う機会を必ず設けましょう。建築BIM加速化事業を利用することも、BIMの導入をスムーズに進める方法として有効です。

BIMとは?CIM・CADとの違いや導入のメリット・デメリットを解説
記事執筆
中小企業応援サイト 編集部 (リコージャパン株式会社運営)
全国の経営者の方々に向けて、経営のお役立ち情報を発信するメディアサイト。ICT導入事例やコラム、お役立ち資料など「明日から実践できる経営に役立つヒント」をお届けします。新着情報はFacebookにてお知らせいたします。