![【VCインタビュー】Stoked Capital代表 池森裕毅氏が語る、独自支援と戦略の全貌(前編)](https://cdn.the-owner.jp/600/314/izLSZFkSZJruaVVcCDqIqoIaSTeuRgeg/e86725b7-2174-4ce2-b9e3-6b301e015b39.jpg)
起業家として複数の企業立ち上げと売却を経て、起業家支援とファンド運営に取り組むStoked Capital代表の池森裕毅さん。
今回は池森さんへのインタビュー内容を全2部の記事構成でお届けします。
第1部では、池森さんのキャリアやStoked Capital設立の背景、独自の支援スタンスについて詳しく伺いました。さらに、自治体や行政との連携を活用したスタートアップ支援の実例も紹介します。
第2部では、池森さんの考える成功する起業家の特徴やスタートアップ界の課題、今後のビジョンについて掘り下げていきます。
池森さんの支援哲学や投資戦略に迫るインタビュー、ぜひ最後までご覧ください!
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Stoked Capital 代表 池森裕毅さんの経歴
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ーまずは池森さんのご経歴やバックグラウンドについてお伺いできますか?
池森氏:大学を2003年に中退し、翌年の2004年に起業しました。当時、法人化には資本金1,000万円が必要で、その準備に約半年を要しました。そのため、法人化は2005年となりましたが、事業自体は2004年からスタートしています。
最初の事業は2014年に売却することができました。その間の2011年には2社目を立ち上げ、2013年に1社目よりも早く売却しました。2015年にはすべての事業を手放し、2018年頃から顧問やメンターの依頼が増え、売上が年間1,000万〜2,000万円規模に達したため、個人としての活動を法人化し、現在の株式会社tsamを創業しました。
ー大学を中退されてすぐに起業されたとのことですが、その背景にはどのような経緯があったのでしょうか?
池森氏:父が起業家で、幼い頃から「短所にこだわらず、長所だけを伸ばしなさい」「好きなことをやっていいが、自分の力で生きろ」と教育されてきました。その影響で、自然と起業を選択しました。大学生時代に起業のアイディアを考えていたところ、オンラインゲーム「Ultima Online」に熱中し、そこからアイディアが生まれて2004年に起業に踏み切りました。
先ほどの経歴をもう少し具体的にお話すると、1社目の事業はありがたいことに注目を集め、結果的に10年間運営し、その後売却しました。2社目は1社目を運営中に立ち上げ、事業としては婚活サービスを始めましたが、こちらは時代が少し早すぎたこともあり、収益を伸ばすことが難しく、1社目よりも先に2013年に売却しました。結果的に2社目は投資家にリターンを返すことが主目的となりましたが、得られた経験は大きな財産でした。
ー起業家としての経験を経て、起業家を支援する側になられたんですね。
池森氏:そうです。2018年頃から顧問業務の依頼が増え、特に自治体や行政からメンターとしての役割を求められることが多くなりました。その結果、20〜25の自治体や行政プログラムに関わるようになり、審査員や講演活動も並行して行っています。こうした活動が広がる中で、客員教授や経済産業省との共同プロジェクトなど、多方面での関与も増えています。
そういった取り組みでのつながりもあり、これまで多くのスタートアップから相談を受けてきました。特に多かったのは、資金調達を含む具体的な支援に関する相談です。プログラムの期間が終了すると、私は無償でメンタリングを提供できなくなりますが、一部のスタートアップは、私から少額の出資を受けることで株主という立場となり、引き続き無償のメンタリングを受けられると考え、出資の相談をしてくれます。
ただ、メンタリングと出資を同時に行うことは、当初のポリシーに反する部分があったため、最初は避けていました。その理由は、どのスタートアップも公平に支援したいと考えており、出資をすることでその公平性が損なわれることを懸念していたからです。しかし、想定以上に多くの要望を受けたこともあり、最終的にファンドを設立し、メンタリングと並行して出資も行うことにしました。
スタートアップへの支援について
ーメンタリングなどされているとのことですが、具体的にどのように支援しているのでしょうか。
![【VCインタビュー】Stoked Capital代表 池森裕毅氏が語る、独自支援と戦略の全貌(前編)](https://cdn.the-owner.jp/600/314/saiZgyqiadulMeTsCsECtEZhVxjwYLTx/f36353ce-07d7-4149-9b6e-43e2cfca3d13.jpg)
池森氏:多い時には、プログラム期間中に約20社のメンタリングを担当していました。特定のプログラムでは週1回のペースで支援することもあり、時には1週間で10社のメンタリングを行うこともありました。
支援しているスタートアップの業界については、私の得意領域であるコンシューマー向けのWebサービスに限定しています。BtoBやオフライン事業、スモールビジネスには対応していないのですが、比較的幅広いジャンルで支援を行っています。
ー支援をされるうえで意識している点はどんなところでしょうか。
スタートアップにとって、成長が明確に見えることは非常に重要です。そのため、支援をするうえでは事業の方向性を具体化し、成果につなげることを常に意識しています。その結果として直近の例では、ある県主催の起業家育成プロジェクトの中間発表で支援した企業が、他の企業のスコアを大きく上回り、中間発表にもかかわらず500万円の出資が進み、最優秀賞も獲得しました。スタートアップにとって、成長が明確に見えることは非常に重要です。
ファンドの体制や特徴について
ー池森さんが運営されているファンドについて、具体的な体制や特徴を伺えますか?
![【VCインタビュー】Stoked Capital代表 池森裕毅氏が語る、独自支援と戦略の全貌(前編)](https://cdn.the-owner.jp/600/314/oQhcRszipnBEdkGDlGJioIYTEiMxOjBx/18200257-0cff-4806-b9df-05afde1afe33.jpg)
池森氏:基本的にソーシング(出資案件の発掘)、起業家との面談、打ち合わせなどはすべて私が担当しており、メールのやり取りや面談の管理、アフターフォローとしてのメンタリングも一貫して私が対応しています。契約書やバックオフィス関連については他のスタッフが担当しています。
出資候補先との面談後、私がその内容をLP(有限責任事業組合員)の皆さんに共有します。LPが興味を持った場合、ファンドを通じて出資を行うといった形式をとっています。特徴としては、私の経験やメンタリング活動を通じて、有望なスタートアップを早い段階で見つけられる点があります。
ー具体的には、どのように早期で有望なスタートアップを見つけているのでしょうか。
先ほどもお話した通り、私はメンタリングや審査員として多くのスタートアップに関わっています。そのため、他の投資家が接点を持つ前の早い段階で優れた企業を見つけることができます。つまりLPにとっては、本来見つけられないようなスタートアップにいち早くリーチできるというメリットがあります。
その他、個人投資家がリーチしづらいレイター期のスタートアップにも、私のネットワークを活かして出資することが可能です。最近では、五常・アンド・カンパニーという約1,300億円のバリュエーションを持つ企業への投資をLP向けにアレンジしました。通常、1口1億円からしか参加できない案件に対し、私のファンドでは1口200万円から参加可能にしました。この柔軟性がLP出資をされている方々から非常に評価されています。
また、私のファンドはキャピタルゲインを全額投資家に還元し、管理手数料や年会費も一切取らない仕組みになっています。これにより、投資判断に合わない案件が続いた場合でも、キャッシュアウトすることなくファンドのLPとして継続できます。つまり、自分が出資したいタイミングでのみ投資を行う柔軟なスタイルが可能になります。
ーファンドの強みや特徴についてさらに詳しく教えていただけますか?
池森氏:うちのファンドの特徴として、LPが出資するスタートアップを選べるという仕組みがあります。通常のVCでは、ファンドの代表者が出資案件を決定しますが、私たちはLPが興味を持った案件に出資する形をとっています。そのため、仮に私が関心の薄いジャンルでも、LPが得意分野であれば支援が可能です。たとえば、私はVRやゲームにはさほど関心がないのですが、その分野に強いLPがいるため支援することができます。
LPの方々には著名な企業家や実業家が多く含まれており、それぞれが自分の専門分野でスタートアップを直接支援してくれます。このように、各分野の専門家がリアルかつ具体的な支援を提供できる点が他のファンドとは大きく異なります。
他にも営業やマーケティングのサポートを提供したり、LPが持つネットワークを活用して新たなビジネスチャンスを広げたりといった形で支援をしています。スタートアップ側から「池森さんのLP陣とつながりたい」という要望を受けることも多いです。
支援のスタンスとしては「ハンズイフ」に近い形を基本としています。求められた場合に支援を提供するという方針です。「メンタリングをしてほしい」や「行政プログラムに繋げてほしい」といったリクエストがあれば、それに応じて支援を行っています。一部のスタートアップには定期的にメンタリングを行うこともありますし、柔軟に最適な支援を提供することを心がけています。
ー行政との連携を活用した支援もされているんですね。
池森氏:はい。経済産業省の近畿経済産業局(近経局)や関西圏の自治体と連携し、それらのコミュニティやプログラムにスタートアップを繋ぐことで、新たなビジネスチャンスを提供したりしています。最近ではこうした取り組みも多くのスタートアップから喜んでもらえています。
Stoked Capatalの投資方針・投資判断について
ーStoked Capitalの投資方針やお考えについて教えていただけますか?
![【VCインタビュー】Stoked Capital代表 池森裕毅氏が語る、独自支援と戦略の全貌(前編)](https://cdn.the-owner.jp/600/314/yLdXtTHzQcnDNYzSijYQunNKJHeVmwTm/8855522f-93b9-4569-b9e0-f1bda477ec4b.jpg)
池森氏:最近では特定のステージに重点を置く傾向があります。以前はシリーズAがボリュームゾーンでしたが、現在はシリーズN1からN3といったレイターステージにフォーカスすることが多くなっています。シリーズAやレイターで筋の良い案件に投資することで、感度の高いLPにとって魅力的な案件を提供できるからです。シリーズN1やN2、N3にしっかりと投資することで、LPの期待に応える形を取っています。
プレシードやシードへの投資は以前よりも少なくなっていますが、本当に良いスタートアップがあれば、個別にLPに繋ぎ、それぞれが直接出資する形で対応しています。その場合、私がハブとなり、スタートアップとLPを繋ぐ役割を果たしています。 このような形で、スタートアップとLPの双方にとって価値を提供できる仕組みを構築しています。他ではなかなか見ないスタイルだと思います。
ー出資の際の判断基準や審査について、どのようにお考えでしょうか?
池森氏:特にビジネスモデルと起業家のポテンシャルを重視しています。出資案件は、私自身が厳しくスクリーニングしたうえで、LPに紹介しています。この審査基準は非常に厳しく設定しており、ビジネスモデルについては構造がしっかりしていること、ユニットエコノミクス(1ユーザーあたりの収益とコスト)が成立していること、さらに参入障壁が構築できているかどうか等を確認します。
起業家自身のポテンシャルを判断するうえでは、面談での受け答えや対応力、思考の柔軟性などを評価します。たとえば、質問に対して精神論や曖昧な回答で切り抜けようとする方は基本的にお見送りとしています。数字の根拠や計算式について、具体的で正確な説明ができることも求めていますし、提出された資料が荒削りでなく、市場規模や成長率の計算が根拠を持って整備されているかどうかも厳しくチェックしています。時には「厳しすぎる」という意見をいただくこともありますが、起業家にとって本当に重要なポイントを見逃さないためには必要なことだと思っています。
ー本質を突いた厳しいフィードバックは起業家にとっては財産になりますね。
(前編はここまで)
次回の後編では、池森さんの考える成功する起業家の特徴やスタートアップ界の課題、今後のビジョンについて掘り下げていきます!
ぜひ後半も最後までご覧ください!