電子黒板を活用したエクステリア業界向けの工程管理システムを開発 現場目線のシステムとして鹿児島県より表彰 南九施設(鹿児島県)

目次

  1. 自社ブランド「Edge of Art」は、2024年のデザインコンテストでも数々の賞を受賞 庭づくりのデザインにアート感覚が高く評価
  2. これからの時代を乗り切るためにデジタル技術の活用は必要不可欠
  3. 庭づくりは顧客との共同作業 専属のプランナーが最初の打ち合わせから完成まで顧客に対応
  4. 書き直しの手間などアナログ業務の課題をデジタル化で解決するため、案件管理と工程管理の統合システムを開発
  5. システムのおかげで業務効率は劇的に改善 だが、全社的な浸透は一気に進んだわけではなかった「使い慣れたホワイトボードがいい」の声
  6. アナログの要素を残し電子黒板に着目 自社のシステムに対応した電子黒板により、手書きで書き込める独自のシステムが完成
  7. 電子黒板を通じて現場担当者もシステムの便利さを実感 協力会社からも感謝の声が寄せられた
  8. 電子黒板とシステムの連動で月あたり121時間の労働時間を削減
  9. 電子黒板を活用した工程管理システムは、2023年、「鹿児島Digi-1グランプリ」民間企業の部で特別賞を受賞
  10. 企業向けクラウド型会計システムを使って基幹業務も効率化 DXによって生まれた成果は従業員に還元 生成AIの活用も検討
  11. 新たなシステムの開発を進め、更なる生産性の向上を目指す
中小企業応援サイト 編集部
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鹿児島県鹿児島市に本社を構える1985年設立の南九施設株式会社は、外構、庭園、エクステリアの新築、リフォームに特化した設計・施工会社だ。デザインにアート感覚を取り入れ、設立当初からの大手ハウスメーカーとの企業間取引に加え、個人案件の開拓にも力を入れている。

現場目線でのデジタルツール開発能力に定評がある同社は、現場から指摘されたホワイトボードの使いやすさを取り入れ、自社開発のシステムを電子黒板と連動させた工程管理ツールを提供。これが地域のデジタルコンテストで高評価を受け、注目を集めている。 (TOP写真:自社開発した電子黒板を操作する南九施設株式会社の有村光子代表取締役)

自社ブランド「Edge of Art」は、2024年のデザインコンテストでも数々の賞を受賞 庭づくりのデザインにアート感覚が高く評価

電子黒板を活用したエクステリア業界向けの工程管理システムを開発 現場目線のシステムとして鹿児島県より表彰 南九施設(鹿児島県)
南九施設の本社の外観

鹿児島市郊外の幹線道路沿いに、緑豊かなモデルガーデンを併設した瀟洒な平屋建ての建物が立地している。2018年に完成した南九施設の新社屋だ。数百種類の雑木を植栽したモデルガーデンは、黒を基調にオレンジの扉を備えた社屋の外観と見事に調和し、見る人の目を引き付ける美しい景観を形成している。

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南九施設のモデルガ-デン

新社屋の完成とともに南九施設は「Edge of Art」と名付けた自社ブランドを確立した。庭づくりのデザインにアート感覚を反映させることを大事にしている。デザインコンテストへの参加に積極的に取り組み、毎年複数の賞を受賞している。

2024年の受賞歴だけでも―、
・エクシスランドデザインコンテストのナイトシーン部門で銀賞、
・YKKap エクステリアスタイル大賞 展示場・モデルハウス部門 ブロンズスタイル賞、
・三協アルミの「WONDER EXTERIOR DESIGN CONTEST」のアウトドアリビングで優秀賞
・タカショー 庭空間施工例コンテスト 住宅エクステリア部門 優秀賞、リフォームガーデン・エクステリア部門 特別賞
・LIXIL エクステリア販売コンテスト ブロンズ賞

これからの時代を乗り切るためにデジタル技術の活用は必要不可欠

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南九施設の有村社長

南九施設の有村社長は、変化が激しいこれからの時代を乗り切っていくために、デザイン力の強化とデジタル技術の活用に力を入れている。「お客様の希望に寄り添いながら理想の庭づくりを実現できるように、常にデザイン力と施工技術の向上に取り組んでいます。業界全体の課題である人手不足や材料費の高騰に対応しながらお客様に満足いただける仕上がりを提供する上で、デジタル技術の活用は必須と考えています」と有村社長は明るい表情で話した。

有村社長は夫が役員を務める南九施設の代表取締役に就任した20年以上前から、仕事と子育て、家事を両立してきた。当時から時間を捻出するために必要なツールとしてデジタル技術に着目してきたという。「取引先に提案して地元の業界に先駆けてPDFでの図面のやり取りに取り組んだこともありました。デジタル技術に助けられてきた経験の蓄積が、現在の積極的なICTやデジタル機器の活用につながっているように思います」と有村社長は話した。

庭づくりは顧客との共同作業 専属のプランナーが最初の打ち合わせから完成まで顧客に対応

電子黒板を活用したエクステリア業界向けの工程管理システムを開発 現場目線のシステムとして鹿児島県より表彰 南九施設(鹿児島県)
3D-CADを使って設計に取り組む様子

従業員の約四分の一を占める5人のプランナー(設計担当者)は全員が女性。顧客からの依頼を受けた初回の打ち合わせから完成まで専属のプランナーが担当し、一邸ずつ丁寧に顧客の要望を反映しながらプランを作成している。打ち合わせは3D-CADを使って作成した完成予想図を顧客に提供した上で行っている。「何でも相談していただける雰囲気づくりを大事にしています。庭づくりは会社とお客様との共同作業です。お客様の視点から毎日を心地よく楽しく過ごすことができる空間をデザインしています」と有村社長。

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南九施設本社の商談スペース

書き直しの手間などアナログ業務の課題をデジタル化で解決するため、案件管理と工程管理の統合システムを開発

南九施設は、外部のプログラマーと連携して業務効率化に役立つオリジナルのデジタルツールの開発に取り組んでいる。その一つが、2021年に自社開発したクラウド型の案件管理と工程管理の統合システムだ。システムを開発する以前の案件管理は、顧客からの依頼を紙の台帳に記録して行っていたため、1日5件以上の手書き作業が発生していた。また、見積や現地調査などの期日の確認も紙の台帳を見ながら行っていたため、見落としなどのミスが生じるリスクを抱えていたという。

工程管理もアナログだったため、更に多くの課題があった。案件名、工事の場所、工事の種類、人員配置といった必要情報は、本社に設置している現物のホワイトボードを通じて共有していた。そのため、天候による工事の延期やメーカーからの納期の遅れなどで工程の変更が発生するたびに、ホワイトボードを毎日のように書き直さなければならなかった。また、工事担当の従業員は、工事予定や変更事項の確認のために現場の仕事を終えた後、時間をかけて本社に立ち寄る必要があった。協力会社からは、工程の最新情報を確認するための電話が連日寄せられ、対応に時間を取られていたという。

「本社にいる従業員しかホワイトボードを見ることができないため、変更内容が現場の担当者や協力会社にすぐに伝わらない。一からの書き直しの作業が多い。現場の担当者が確認のために本社に立ち寄らなければならず労働時間が長くなる。アナログで業務を進めていることが、このように多くの時間を無駄にする要因になっていました」と有村社長。

システムのおかげで業務効率は劇的に改善 だが、全社的な浸透は一気に進んだわけではなかった「使い慣れたホワイトボードがいい」の声

課題を一気に解決するために取り組んだのが、案件管理と工程管理の統合システムの自社開発による、業務のアナログからデジタルへの転換だった。システムへの顧客情報や案件情報の登録は、顧客との打ち合わせ時に入力してもらう申込フォームと連動させることで業務を効率化。期日の確認は、案件一覧で表示するだけでなく、アラート機能を使って従業員全員が確認できるようにすることで、見落としのリスクを低減した。また、集計機能を使ってデータを分析し、主流とする顧客層や価格帯の設定をはじめとするビジネスモデルの構築や、取引先との交渉に役立てている。

システムのおかげで、手書きのために時間と手間を取られていた情報更新の作業は劇的に楽になった。天候の情報も外部のサービスを利用して自動で取得し、システムに反映できるようにしている。現場担当の従業員は、本社に立ち寄らなくても工程管理の状況を確認できるので、現場と自宅との直帰が可能になった。協力会社との情報共有も簡単になり、電話でのやりとりが不要になった。

案件管理、工事・工程・作業員の登録、工事表示の順番の入れ替え、従業員と協力会社による確認作業といった様々な業務でデジタル化は大きなメリットをもたらしたが、全社的な浸透が一気に進んだわけではなかった。このシステムは、パソコンやタブレットで見ることができるが、普段パソコンなどのデジタル機器を使う機会が少ない現場担当の従業員からは、「使い慣れた従来のホワイトボードをそのまま使いたい」という意見が多かった。話し合いを重ねる中で、有村社長は手書きによる書き加えやマーキングといったアナログ要素も大事にしなければならないと強く実感したという。

「工程に関する情報を共有する上で、アナログのホワイトボードが、現場の担当者に大きな役割を果たしてくれていたことを再認識しました。これまで通りの仕事の進め方を大事にしたいという現場担当者の思いは痛いほど理解できたので、複雑な操作を覚える必要がなく、従来と同じやり方でシステムを使えるように工夫を加えることにしました」と有村社長は振り返った。

アナログの要素を残し電子黒板に着目 自社のシステムに対応した電子黒板により、手書きで書き込める独自のシステムが完成

電子黒板を活用したエクステリア業界向けの工程管理システムを開発 現場目線のシステムとして鹿児島県より表彰 南九施設(鹿児島県)
南九施設が自社開発した案件管理と工程管理の統合システムと連動している電子黒板
電子黒板を活用したエクステリア業界向けの工程管理システムを開発 現場目線のシステムとして鹿児島県より表彰 南九施設(鹿児島県)
以前、活用していた現物のホワイトボード

有村社長は、実際にシステムを使用してデジタル技術への苦手意識を払拭し、便利さを実感してもらうことで浸透を図ろうと考えた。そこで着目したのが、表示内容への書き込みができる電子黒板だった。自社のシステムと連動して現物のホワイトボードと同じように使える機能を備えた機種を選ぶ必要があり、選定は日ごろから取引のあるシステム支援会社に依頼した。

電子黒板を活用したエクステリア業界向けの工程管理システムを開発 現場目線のシステムとして鹿児島県より表彰 南九施設(鹿児島県)
電子黒板に手書きで数字を書き込む様子

導入した電子黒板には自社のシステムに対応した手書きやドラッグ&ドロップを可能にする独自のソフトウェアを組み込んでいる。手書きなどで更新した内容はクラウドにリアルタイムでアップロードされるので、アクセス権限の保有者は通信環境が整っていれば、いつでもどこからでも顧客や工程に関する最新の情報を確認できる。導入前にシステム会社とシステム支援会社が、一緒になって入念な動作チェックを行ってくれたので、スムーズに活用できているという。

電子黒板を通じて現場担当者もシステムの便利さを実感 協力会社からも感謝の声が寄せられた

電子黒板を活用したエクステリア業界向けの工程管理システムを開発 現場目線のシステムとして鹿児島県より表彰 南九施設(鹿児島県)
現場担当の従業員がデジタルホワイトボードの情報を確認する様子

2022年から実際に電子黒板の利用を始めると、デジタル技術に不慣れな現場の担当者も、これまでなじんだ現物のホワイトボードと同じように使えるので同システムを活用するようになった。システムへのアクセス権を与えている協力会社からも「仕事の段取りがつけやすくなった」、「毎日、確認の電話をする必要がなくなり大変助かっている」と数多くの感謝の声が寄せられた。

電子黒板とシステムの連動で月あたり121時間の労働時間を削減

電子黒板のおかげで案件管理と工程管理の統合システムが全社的に浸透した結果、南九施設は、月あたり121時間にのぼる労働時間の削減を実現できたという。すべての従業員が、工事の進捗状況をリアルタイムで共有できるので、顧客へのより迅速な対応が可能になるなどサービス向上にもつながっている。

「エクステリア業界の現場目線で、どうすればもっと楽に効率的に仕事ができるかを徹底的に考えて電子黒板をアレンジしました。活用のノウハウを業界全体にフィードバックできればと考えています」と有村社長は話す。

電子黒板を活用した工程管理システムは、2023年、「鹿児島Digi-1グランプリ」民間企業の部で特別賞を受賞

電子黒板を活用したエクステリア業界向けの工程管理システムを開発 現場目線のシステムとして鹿児島県より表彰 南九施設(鹿児島県)
鹿児島県から贈られた「鹿児島Digi-1グランプリ」の表彰状

南九施設のホワイトボードをデジタル化する取り組みは、2023年、鹿児島県が県内のDXを推進するために主催するコンテスト「鹿児島Digi-1グランプリ」の民間企業の部で特別賞を受賞した。日々の作業の中で感じる無駄やストレスを解消し、誰でも簡単に使うことができる仕組みを作った点が大きく評価された。特別賞を受けたことで、問い合わせやメディアの取材が増えるなど、会社の知名度向上とブランド構築に大きな効果があったという。働き方改革につながる業務改善の事例として厚生労働省の視察を受け、ホームページにも掲載された。

企業向けクラウド型会計システムを使って基幹業務も効率化 DXによって生まれた成果は従業員に還元 生成AIの活用も検討

南九施設は、2020年から企業向けクラウド型会計システムを使って金融機関への振込業務を自動化するなど、会計や経理といった基幹業務でもデジタル技術を活用している。税理士への相談もデータを共有することで、時間をかけずに行えるようになったという。「経理業務は今後、事業を拡大して業務量が増えたとしても、従業員に負担をかけることなく乗り切っていける仕組みを作っています」と有村社長。デジタル技術の活用によって負担が減った基幹業務の担当者が、データの分析やマーケティングといった先を見据えた業務に時間を使うことができるようになるなど、様々な効果が生まれている。

有村社長は、DXによる生産性向上によって生まれた会社の成果を従業員に還元している。「従業員がデジタル技術を活用する効果を実感することで更に新しい技術の導入を進めやすくなる好循環につながっています」と有村社長は話した。今後、基幹業務やデザインへの生成AIの活用を検討しており、各担当者には会社負担で生成AI活用のオンライン講座の受講機会を提供する予定だ。

新たなシステムの開発を進め、更なる生産性の向上を目指す

電子黒板を活用したエクステリア業界向けの工程管理システムを開発 現場目線のシステムとして鹿児島県より表彰 南九施設(鹿児島県)
南九施設のオフィスの様子

南九施設は現在、見積業務を効率化する新たなシステムの開発を進めるなど生産性の更なる向上を目指している。「自社だけでなく取引先、お客様もメリットを享受できるのがデジタル技術の素晴らしいところです。デジタル技術を活用することで毎日が便利になることを多くの人に知ってもらえるように情報の発信にも力を入れていきたい」と有村社長は話す。アート感覚を重視しながら積極的にDXに取り組む南九施設。人を幸せにするために技術を活用するという思いが一連の取り組みを前に進めている。

企業概要

会社名南九施設株式会社
本社鹿児島県鹿児島市山田町3383-1
HPhttps://nankyu-shisetsu.jp
電話099-265-6211
設立1985年3月
従業員数19人
事業内容 造園工事、公共工事、土木工事、エクステリア工事、ガーデンリフォーム工事