ICT施工で地域の未来を創る 自社はもちろん他社の支援も行い地域の建設業界に貢献 オカジュウ(岡山県)

目次

  1. 1978年の創業以来、1,000件を超える公共工事の実績
  2. 「先手必勝」の精神でICT建機を導入 地域のi-Constructionを先導する 「明るく楽しく真剣に」をモットーに!
  3. 西日本豪雨で自社が被害を受けながらも地元インフラの復旧に最優先で取り組む
  4. ICT施工の割合8割、生産性と品質向上に欠かせない ICT施工のノウハウ蓄積が会社の大きな資産に
  5. 社長自らICT建機の操作を体験し、性能を確認してから導入を決断 初めての試用で、建設業界の仕事を根本から変える可能性を実感
  6. 積算や施工管理といった基幹業務でもデジタル技術を活用 業務を効率化して残業ゼロを実現 従業員には充実した人生を過ごして欲しい
  7. デジタル技術は建設業界が新たな働き手を確保していく上での切り札 ICT活用で経験が浅い人でも精度の高い施工が可能に
  8. ICT建機やデジタル技術の活用を通じて若手や女性の活用を積極的に進める 次世代に建設業の大切さと楽しさを伝えたい
  9. AIを活用した建設機械の更なる進化に注目し、情報収集を進める
中小企業応援サイト 編集部
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岡山県倉敷市真備町に本社を構え、地域密着で土木工事と建設機械のリースを営む株式会社オカジュウは、情報通信機能を備えた建設機械、ICT建機の活用に積極的な企業として知られている。2018年7月の西日本豪雨では、被害を受けた地域の復旧工事に全社を挙げて尽力した。トップが率先垂範してICT建機を活用することで、会社全体で建設DXを推進する意識を育み、生産性と施工品質の向上につなげている。(TOP写真: ICT建機の操縦席でモニタを確認しながら操作している様子)

1978年の創業以来、1,000件を超える公共工事の実績

ICT施工で地域の未来を創る 自社はもちろん他社の支援も行い地域の建設業界に貢献 オカジュウ(岡山県)
オカジュウのコーポレートマーク

オカジュウは1978年に片岡重機リースとして創業し、2年後に株式会社化して社名を岡山重機リースに改称した。事業活動の大半が祖業の重機リースから土木工事にシフトする中で、2006年5月に社名をオカジュウに変更した。その背景には、事業実態との乖離(かいり)を解消するだけでなく、あえてカタカナの社名にすることで親しみやすいイメージを打ち出す狙いがあったという。

河川、トンネル、橋梁(きょうりょう)、土地造成、治山、道路舗装など創業以来1,000件を超える豊富な公共工事の実績を誇る。所有する建設機械は約30台を数える。2018年7月に真備町が大規模な豪雨災害に見舞われた際は、自社が大きな被害を受けたにもかかわらず、率先して復旧工事に取り組んだ。品質の高い工事の仕上がりに定評があり、数多くの表彰実績を持つ。2024年も一級河川、末政川の河川工事が、岡山県優良建設工事の表彰を受けた。

ICT施工で地域の未来を創る 自社はもちろん他社の支援も行い地域の建設業界に貢献 オカジュウ(岡山県)
優良建設工事や地域振興での貢献を物語る数々の表彰状

オカジュウは、地元の中学校を対象に職場体験の受け入れを実施するなど教育面での地域貢献に取り組んでいる。また、名探偵、金田一耕助シリーズを生み出したミステリー作家、横溝正史氏が戦時中疎開していた邸宅前の「金田一畑」に植えられている黒チューリップの球根を長年にわたって寄贈するなど、地域の文化観光振興にも一役買っている。

「先手必勝」の精神でICT建機を導入 地域のi-Constructionを先導する 「明るく楽しく真剣に」をモットーに!

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オカジュウの延武英行代表取締役

「明るく、楽しく、真剣に仕事に取り組むことをモットーにしています。変化が激しい時代の中で会社を持続的に成長させるには、ICTを積極的に活用する姿勢が必要不可欠と思っています」。オカジュウの本社で取材に応じた延武(えんぶ)英行代表取締役は、日ごろ重視している思いを語った。

2018年に就任した現在、50歳の延武社長は、妻の父親にあたるオカジュウの創業者から事業を受け継いだ。専務取締役を務めていた10年以上前から「先手必勝」の精神で取り組んでいるのが、ICT建機の活用だ。現在、油圧ショベルやブルドーザー計5台のICT建機を所有し、地元中小建設業界のi-Constructionの先導役を務めている。

西日本豪雨で自社が被害を受けながらも地元インフラの復旧に最優先で取り組む

社長になって間もない時に地元は豪雨災害に見舞われ、3階建てのオカジュウの本社も被害を受けた。重要なパソコンやサーバーは3階に避難させておいて無事だったが、1階から2階が水浸しになった。業務を再開する上で必要な通信ネットワークの復旧に日ごろから付き合いのあるシステム支援会社が尽力してくれたおかげで、道路をはじめとする地元インフラの復旧工事に専念することができたという。「なす術もないまま集中豪雨の被害が広がっていくのを目の当たりにして、人間の力の限界を思い知らされました。しかし、地域のインフラを担う企業は、災害のような非常時にこそ立ち向かわなければなりません。災害時の対応力を強化するためにICTやデジタル技術の活用を加速しなければならないと改めて実感しました」と延武社長は話した。

ICT施工の割合8割、生産性と品質向上に欠かせない ICT施工のノウハウ蓄積が会社の大きな資産に

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オカジュウが所有するICT建機

ICT建機は、人工衛星から位置情報を取得して、施工したい箇所の3次元設計データと地盤データの差分に基づいて操作を自動制御する機能を備えている。ICT建機を導入したことで、丁張り設置や検測作業の省略による施工の効率化、オペレーターの技能に左右されない仕上がりの実現、重機付近の作業員削減、安全性の向上、施工期間の短縮といった様々な効果が生まれている。現在受注している工事の中でICT施工の割合は8割にのぼる。ICT建機を使うことで類似の案件と比較して営業利益率が50%向上した現場もあるという。

ICT施工で地域の未来を創る 自社はもちろん他社の支援も行い地域の建設業界に貢献 オカジュウ(岡山県)
建機の位置やバケットの角度・位置・高さ等が表示される建機内のモニタ画面

「ICT建機は、通常の建設機械と比較した場合、導入コストはかかりますが、生産性と施工品質の向上をもたらしてくれるだけでなく、以前は大変だった作業を手間がかからないものに変えてくれます。ICT施工のノウハウの蓄積は会社にとって大きな資産になりますし、投資する価値は十分あると思います」と延武社長は話す。

オカジュウは地域の建設会社からICT活用の相談を受けることも多い。ICT建機とオペレーターのレンタル事業も行っている。ICT建機を所有していない企業も、オカジュウと連携することでICT施工を条件とした工事に携わることが可能になっている。

社長自らICT建機の操作を体験し、性能を確認してから導入を決断 初めての試用で、建設業界の仕事を根本から変える可能性を実感

延武社長は、デジタル技術の可能性を見極めるために、10年以上前から建設分野の展示会などに積極的に足を運んで、幅広く情報を収集していた。自らICT建機の操作を何度も体験し、その性能を確認してから購入を決断したという。「初めて試用でICT建機を操作した時に、建設業界の仕事の在り方を根本から変える大きな可能性を実感したことを今も覚えています」と延武社長。最初にICT機能を備えた油圧ショベルを導入した時も、自ら操作して使い方を示した上で従業員に活用を奨励したという。若手からベテランまで従業員は積極的にICT建機を活用し、現在、約8割がICT建機を操作できるという。

積算や施工管理といった基幹業務でもデジタル技術を活用 業務を効率化して残業ゼロを実現 従業員には充実した人生を過ごして欲しい

ICT施工で地域の未来を創る 自社はもちろん他社の支援も行い地域の建設業界に貢献 オカジュウ(岡山県)
CADを活用して土木工事の設計図を作成する様子

オカジュウは、ICT建機の活用だけでなく、基幹業務でもデジタル技術を活用している。約20年前に見積を迅速かつ正確に行うことができる土木事業用の積算システムを導入し、バージョンを更新しながら使い続けている。土木事業用の施工管理システムも約20年前から積算システムとともに活用。測量結果、CADで作成した設計図、工程管理、出来形などのデータをデジタル化することで連携し、業務の効率化につなげてきた。複合機のスキャン機能を活用して紙書類のデジタル化も進めてきた。

ICT施工で地域の未来を創る 自社はもちろん他社の支援も行い地域の建設業界に貢献 オカジュウ(岡山県)
ペーパーレス化を進める上で複合機のスキャン機能を活用している

現在、会社の情報はサーバーで保存しているが、今後、データ共有の更なる利便性向上や運用管理の負担軽減などを目的にクラウドの導入を検討している。約20年前から業務のデジタル化を進めてきた背景には、システムに情報を入力するための打ち直しなど削減可能な作業をできる限り削減することで、従業員のワークライフバランスの充実につなげたいという思いがある。

これらの取り組みが残業ゼロの実現につながっている。「よほどのことがない限り、午後5時30分で仕事を終えるようにしています。従業員には、育児、介護、趣味、自己研鑽(けんさん)、地域活動といった仕事以外の時間をしっかり確保することで生き生きとした毎日を過ごしてほしいと思っています」と延武社長。従業員一人ひとりが末永く勤め続けることができる環境づくりを大事にしているという。

デジタル技術は建設業界が新たな働き手を確保していく上での切り札 ICT活用で経験が浅い人でも精度の高い施工が可能に

延武社長は、ICT建機の更なる普及や業務のデジタル化促進が、建設業界が新たな働き手を確保する上での切り札になると考えている。建設機械の操作についても以前は、熟練の技が要求されていたが、ICTを活用することで操作の経験が浅い人でも精度の高い施工を行うことが可能になっている。

「3Kといわれていた建設現場の仕事の内容は、機械やデジタル技術の進化で大きく様変わりしています。私たちの世代が長い時間をかけて悪戦苦闘しながら獲得した技術を、新人があっという間に身につけることができる。そんな時代が到来しています。複雑な思いを持っている人は多いと思いますが、業界全体の未来を切り開いていく上でデジタル技術は必要不可欠です」と延武社長は力強く語った。

ICT建機やデジタル技術の活用を通じて若手や女性の活用を積極的に進める 次世代に建設業の大切さと楽しさを伝えたい

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オカジュウのオフィスの様子

オカジュウにはICT建機を操作できることに魅力を感じて転職してきた若い人材がいる。延武社長は、これまで建設業界に関心を持っていなかった若い人や女性にアプローチしていく上で、ICTやデジタル技術を活用した業界の新しい姿を発信していかなければならないと考えている。「ホームページなどによる情報発信を通じて次世代に建設業の大切さと同時に楽しさも伝えていきたい」と延武社長は笑顔を見せた。

オカジュウは女性の活用にも力を入れている。人事面での待遇は男女とも平等。子育て支援にも力を入れている。現在、ICT建機を操作できる女性従業員が現場で活躍しており、近くグループ会社から女性従業員が1人加わる予定だ。県内の建設業界でも女性を採用する動きが活発になっているという。現在、建設現場から離れた事務所などの安定した環境から、5Gネットワークを通じて建設機械を動かす遠隔操作に注目している。遠隔操作を導入すれば、建設現場そのものに出向く必要がなくなることから女性が活躍しやすいフィールドを更に広げることができる。

AIを活用した建設機械の更なる進化に注目し、情報収集を進める

ICT施工で地域の未来を創る 自社はもちろん他社の支援も行い地域の建設業界に貢献 オカジュウ(岡山県)
オカジュウの本社の外観

延武社長はAIを活用した建設機械の更なる進化にも注目している。情報収集に力を入れ、費用対効果を考えながら活用を検討していきたいという。「ICTとデジタル機器を活用することで、建設の仕事はこれからますます楽しくなっていくと思います。日本経済を元気にするには中小企業が頑張らなければなりません。これからも明るく前向きに取り組んでいきます」と延武社長は話した。最新技術をいかに効果的に活用するかによって、会社や地域の未来は大きく変わっていく。これまでICTを積極的に活用してきたオカジュウの次の一手に注目したい。

企業概要

会社名株式会社オカジュウ
本社岡山県倉敷市真備町有井1595
HPhttps://www.okajyu-builders.jp
電話086-698-5515
設立1980年4月(創業1978年)
従業員数17人
事業内容土木工事、舗装工事、水道施設工事、解体業他