「帰ってきたくなる街づくり」に取り組む総合建設会社 週休二日制で労働環境改善 ICT施工を積極推進 小曽根建設(群馬県)

目次

  1. 公共工事を主体に地域とともに歩み設立55年 地元・館林で存在感を確立
  2. 次世代経営を託され32歳の若さで2代目就任 建設業のイメージ刷新のため一大決心で、真っ先に本社屋を建設
  3. 課題は人材確保 人手不足解消と若手人材の獲得に向けて4週6休から4週8休へ
  4. 収益安定化を目指し、建設業一本から不動産賃貸事業、貸倉庫事業を展開 土地の有効活用に系列会社で介護施設を運営
  5. 人手不足に対応しICT施工を積極化 業界団体の支部長としても業界挙げての推進に取り組む
  6. 全社員にノートパソコンを支給し業務の効率化を図る 勤怠管理は社員間のコミュニケーションの円滑化を狙いあえてアナログのまま
中小企業応援サイト 編集部
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小曽根建設株式会社は、群馬県の南部に位置する館林市を中心に元請け会社として主に建築・土木工事を手掛ける総合建設会社だ。事業遂行で最も重視してきたのは地域とともに街づくりに取り組んできた地域への貢献にあり、「地元ファースト(第一)」の経営を基本に据える。一方で、建設業界全体が抱える労働環境の改善や人手不足の解消に向け、週休二日制の導入やデジタル化による業務効率化のほか、施工面でのICTの活用などに取り組んでいる。(TOP写真:小曽根建設が手掛ける「館林市城沼総合体育館」の改修工事)

公共工事を主体に地域とともに歩み設立55年 地元・館林で存在感を確立

小曽根建設の設立は1969年9月で、社会資本整備が加速し公共事業が最盛期を迎えていた時期に重なる。法人化する以前も現在の小曽根久八代表取締役の祖父が戦前に農家と兼業で建設業を営み、戦中、戦後に休業した時期があったものの長く建設業に携わってきた。その後、小曽根氏の父が農家を廃業し、建設業一本に絞って小曽根建設を立ち上げた。

2024年に設立55年を迎えた小曽根建設の事業は建築、土木ともに群馬県と地元の館林市、および邑楽(おうら)郡の公共工事が主体で、民間分野では館林市周辺を営業活動エリアに古くからの顧客、更に新規顧客の開拓に取り組んでいる。館林市内では「館林消防本部」「館林市城沼総合体育館」「館林三の丸芸術ホール」「館林市第三浄水場」など数多くの公共施設の施工実績があり、市内業者として存在感を高めてきた。

これら施工事例は、2024年に更新した自社ホームページでうたっている「地域とともに歩んで55年~帰ってきたくなる街づくりを提供します」のコピーにも通じる。小曽根氏はこの点を「当社は地域の皆様が納めた税金で事業を手掛けているところもあり、事業を通じて日ごろから地元の皆様に貢献したいと思っている。地元があって、地元に育ててもらい、地元で仕事をいただいており、これからも地域への貢献を基本した事業を続けていきたい」と語る。その言葉からは、まさに「地元ファースト」の経営姿勢がにじみ出る。

次世代経営を託され32歳の若さで2代目就任 建設業のイメージ刷新のため一大決心で、真っ先に本社屋を建設

「帰ってきたくなる街づくり」に取り組む総合建設会社 週休二日制で労働環境改善 ICT施工を積極推進 小曽根建設(群馬県)
小曽根久八代表取締役が建設業のイメージ刷新を狙って就任2年目に建設した本社屋(群馬県館林市)

小曽根氏が法人としての二代目の代表取締役に就任したのは1997年で、32歳の若さだった。小曽根氏は「当時は社会的な流れも非常にスピードが激しい中で、父は若い感覚による次世代の経営を私に託した」と振り返る。

これを受けて、就任後真っ先に取り組んだのは現在の本社屋の建設で、就任2年目に完成した。そこには若手人材の獲得や建設業に対する社会的なイメージを変えようとの狙いがあった。 「当時の建設会社の社屋と言えば、プレハブの建物にちょっと手を加えたような社屋がほとんどで、衛生的にも不備があった」と小曽根氏は語る。小曽根氏は「当時は社員の意識がマンネリ化していて新しいものの考え方がなかったこともあり、ここは若い世代にも魅力を持って働いてもらえる環境作りを推し進めなければと考えた。建物の見栄えばかりを変えても仕方がないとの思いもあったものの、建設業への社会的なイメージを変えると同時に、若い世代の気持ちになって会社を運営していくことを心がけた」と就任当時の思いを振り返り、一大決心して本社屋の建設に踏み切った。

課題は人材確保 人手不足解消と若手人材の獲得に向けて4週6休から4週8休へ

「帰ってきたくなる街づくり」に取り組む総合建設会社 週休二日制で労働環境改善 ICT施工を積極推進 小曽根建設(群馬県)
小曽根久八代表取締役は業界のイメージ一新には「労働環境の改善が不可欠」とし、群馬県建設業協会の館林支部長としても業界を挙げて週休二日制の導入推進に取り組む

現在、小曽根建設が抱える経営課題は人材確保の問題だ。建設業界全体で深刻な人手不足は小曽根建設もご多分に漏れず、現在17人在籍する社員の平均年齢は50歳を超え、「60歳を超えても社員が元気なうちは雇用条件を相談しながら再雇用、再雇用と重ねているのが現状」と小曽根氏は語る。さらに深刻なのは若手社員の離職率の高さと若手人材の採用が難しい点だ。「これまでも建設業にとって欠かせない国家資格を取得する前に離職してしまう若手社員が多かった」と小曽根氏は嘆く。

建設業界は「危険」「きつい」「汚い」という「3K」のイメージがつきまとう上に、土曜、日曜の勤務もあり、若手世代から敬遠されがちで入職者は減少し、離職率も高い。このため、小曽根建設はこれまでの4週6休を改め、週休二日制、4週8休に移行した。

建設業は2024年4月から政府による時間外労働の上限規制が適用され、都道府県の業界団体を束ねる一般社団法人全国建設業協会が働き方改革として「目指せ週休2日+360時間(2+360ツープラスサンロクマル)運動」を展開している。小曽根氏は全国建設業協会の県組織である一般社団法人群馬県建設業協会の常任理事で館林支部長を務めており、支部組織を挙げて週休二日制、4週8休への移行を推進している。

収益安定化を目指し、建設業一本から不動産賃貸事業、貸倉庫事業を展開 土地の有効活用に系列会社で介護施設を運営

小曽根建設は収益安定化に向けて不動産賃貸事業や貸倉庫業を展開している。この点について、小曽根氏は「建設業は工事を受注して初めて契約が成立し、仕事になるところがあり、経営上の問題から安定した収益源を得たいと考えていた」と語る。建設業という業種柄、土地を多く保有しており、それを賃貸物件として有効活用するようになった。実際、かつて出稼ぎ労働者の宿舎として活用していた土地に高齢者介護施設を設け、系列会社が2006年から運営している。

さらに、取引金融機関などから周辺地域に進出したい企業があると紹介されれば、案件を精査し、土地を購入して建物を建設し貸し出す事業にも最近は力を入れている。近年は全国チェーンの大手ドラッグストアの店舗を建設し、自社物件として貸し出している。

人手不足に対応しICT施工を積極化 業界団体の支部長としても業界挙げての推進に取り組む

施工面ではICTを活用した工法を積極的に採り入れている。常態化する人手不足に対応し、「社員の業務負担を軽減できるようにICT施工を推進している」と小曽根氏は語る。群馬県もICT施工については、建設業界に対し発注した工事での積極的な活用を要請している。小曽根氏が支部長を務める群馬県建設業協会の館林支部でも組織を挙げて研修会を実施するなど、ここ数年でICT施工を導入する流れが加速している。

「帰ってきたくなる街づくり」に取り組む総合建設会社 週休二日制で労働環境改善 ICT施工を積極推進 小曽根建設(群馬県)
複雑なレバー操作なしでも高効率な施工を実現するICT油圧ショベル
「帰ってきたくなる街づくり」に取り組む総合建設会社 週休二日制で労働環境改善 ICT施工を積極推進 小曽根建設(群馬県)
NETIS(新技術情報提供システム)は新技術の情報を共有・提供し、公共工事などでの活用を促進することを目的とした国土交通省が運営するデータベースシステム。
「帰ってきたくなる街づくり」に取り組む総合建設会社 週休二日制で労働環境改善 ICT施工を積極推進 小曽根建設(群馬県)
工事現場でICT施工を説明している様子
「帰ってきたくなる街づくり」に取り組む総合建設会社 週休二日制で労働環境改善 ICT施工を積極推進 小曽根建設(群馬県)
ICT建設機械のオペレータに対して操作支援するモニター画面

実際、小曽根建設は現場の施工の進捗状況を可視化するスマートコンストラクションアプリを導入しており、現場に出向かずに事務所のパソコン上でその日施工した盛り土の量と残りの度量を正確に把握できるなど成果を上げている。2019年に初めてICT施工で手掛けた館林市内の県道バイパス建設工事は、導入ケースとして大手建設機械メーカーの導入事例サイトで紹介されたほどだ。

ICTの活用は土木分野だけでなく、建築分野でも計画、調査、設計段階から3Dモデルを導入し、施工、維持管理でも3Dモデルを連携させ、事業全体での関係者間の情報共有を容易にするBIM/SIMの活用を推進している。

ただ、「ICT施工についてはまだ勉強不足な面は否めず、支部の研修会などへの参加を通じてICT施工を一段と推進していきたい」と小曽根氏は今後の取り組みに期待する。その意味では「今後は土木、建築の技術者以外で、ICT系の人材も採用していくことも前向きに考えていかなければならない」とも語る。ただ、ICT関連企業は週休二日制が当たり前で、人材を採用するにもまずは建設業界の労働環境の改善を進めることが不可欠だ。

全社員にノートパソコンを支給し業務の効率化を図る 勤怠管理は社員間のコミュニケーションの円滑化を狙いあえてアナログのまま

「帰ってきたくなる街づくり」に取り組む総合建設会社 週休二日制で労働環境改善 ICT施工を積極推進 小曽根建設(群馬県)
本社1階の事務所は社員間コミュニケーションの円滑化を狙って、土木、建築の両部門と事務部門を1フロアに一体化している。窓を大きく取り採光も良くしている

一方、小曽根建設は全社員にノートパソコンを支給し、業務の効率化に取り組んでいる。クラウドサービスを活用して事務所だけでなく現場などでもデータの管理・運用ができ、時間外労働の削減につなげている。小曽根氏はこの点について「現場を回ると、午後5時以降に事務所に戻り、書類などを整理している建設会社が多いとよく聞く。当社は昼間でも時間が空いていればノートパソコンを活用するように勧めている」と言う。

また、業務のデジタル化については「現場が必要とするソフトウェアなどは購入するように推進しているほか、工事費用の積算についてはすべてデジタルで対応しており、事務担当の社員でも積算ができるようにしている」と語る。

一方、業種を問わずシステム化が盛んな勤怠管理について、小曽根建設はあえてアナログのタイムカードでの管理にとどめている。これには理由があり、社員間のコミュニケーションを円滑にし、事業面に反映させる狙いがある。小曽根建設の場合、営業活動エリアは車で1時間以内、工事も30分程度の現場が多く、小曽根氏は「現場を抱えている社員にも1日1回は事務所に来るように指示している」と言う。

代表取締役就任直後に建設した本社屋も、1階の事務所は土木、建築の両部門と事務部門を1フロアに一体化して業務ができる作りにしており、社員間コミュニケーションの円滑化を図った。小曽根氏によれば「当社の場合、全体会議は年に2、3回しかなく、わざわざ会議室に集めるようなことはせずに、日常の社員同士の会話などを通じて、営業やお客様からのクレーム処理など業務の効率化につなげている」と言う。

館林市周辺は近年、小売業や大手企業による工場の進出が相次ぐなど市場環境は比較的恵まれている。しかし、建設業界には慢性的な人手不足に加え、若手世代がなかなか入職してこない労働環境もあり、困難な状況は続く。こうした状況下で小曽根建設は営業活動エリアを絞り込み、労働環境の改善を通じ、あくまで地域への貢献を第一に「最終的に顧客に頼んで良かったと思われる事業を目指している」(小曽根氏)。そのためにICT化、デジタル化により施工、業務、両面での効率化に取り込もうとしており、「導入できるツールがあれば前向きに導入を考えていきたい」(同)としている。

企業概要

会社名小曽根建設株式会社
住所群馬県館林市花山町2709
HPhttps://ozone1969.wixsite.com/construction
電話0276-72-1692
設立1969年9月
従業員数17人
事業内容総合建設業、不動産賃貸事業、貸倉庫事業