塚本郵便逓送株式会社
(画像=塚本郵便逓送株式会社)
塚本 雅彦(つかもと まさひこ)――代表取締役CEO
大学卒業後、同社に入社し、郵便輸送部で北陸の局間業務に従事。 その後、家業との区別を図るため日本郵便と業務委託契約を締結し、北陸をEC拠点とするロジスティクス部を設立。2018年には事業承継を行い、代表取締役に就任。就任後1年で年間出荷件数を約200万件増加させ、日本郵便のポストインサイズ商品の取扱量を北陸1位(発送代行として)に押し上げた。2019年には東京にD2C特化の営業拠点を設置し、さらなる事業拡大を図る。
昭和2年から90年にわたり日本郵便の郵便物を配送する逓送事業として長い歴史を持つが、4代目塚本雅彦のもとで3PL事業を開始。BTS型倉庫を駆使し、EC特化の物流サービスを展開。富山・高岡を拠点に北陸最大規模の倉庫で1日平均15,000件を出荷し、事故率は業界目標値の0.01%以下。 顧客は主要都市の企業で、北陸の地の利を活かして急速に販路を拡大。東北・北陸で80台の車両体制を整えるラストワンマイル事業とのシナジーにより物流業界における唯一無二のワンストップサービスを目指す。

目次

  1. 創業からこれまでの事業変遷と貴社の強み
  2. 承継の経緯と当時の心意気
  3. ぶつかった壁やその乗り越え方
  4. 今後の新規事業や既存事業の拡大プラン
  5. メディアユーザーへ一言

創業からこれまでの事業変遷と貴社の強み

ーーまずは、創業から現在に至るまでの事業の変遷についてお伺いできますか。

塚本:もともとは創業者が馬車でハガキや書簡を届けるような形で事業を始め、現在も郵便局から富山県の郵便配送業務を受託しています。私で四代目になりますが、家業として続けてきた郵便事業は、会社の礎となっています。

長い歴史の中で、当初の郵便事業から次第にロジスティックス事業へと展開し、現在ではEコマース向けの物流サービスを提供するまでに成長しました。

ーーロジスティックス事業への展開は、どのような経緯で進められたのでしょうか?

塚本:私が四代目として事業を引き継いだ時、富山県内の郵便配送だけでは、今後の成長には限界があると感じました。そこで、北陸地方という地理的利点を活かし、B2Cの物流業務に進出することを決めました。

インターネット通販の急成長に伴い、物流の重要性はこれまで以上に高まっています。弊社は2010年にロジスティックス事業を開始し、これまでに培ってきた豊富な経験とノウハウをもとに、効率的な物流ネットワークを築き上げてきました。 1日10,000–15,000件の出荷を全国に提供しています。この出荷能力は、弊社の高品質な物流サービスを支える大きな強みとなっております。

ーー富山の立地を活かした事業展開ですね。御社の強みについてもう少し詳しくお聞かせください。

塚本:私たちの強みは、地方に根ざした物流事業を長年にわたって積み重ねてきた点です。特に富山という地域は日本の中心に位置しており、全国への配送において絶妙なポジションにあります。また、当社の物流は、郵便事業で培った「小さいものを正確に届ける」という強みを活かしており、他社には真似できない独自のノウハウを蓄積しています。私たちは、このノウハウを活かして、さらなる成長を目指しています。

承継の経緯と当時の心意気

ーー事業承継の経緯と、当時の心意気についてお聞かせください。

塚本:私は四代目として2018年に正式に事業を引き継ぎました。それまでは東京で新規事業の立ち上げに携わっていたのですが、家業を継ぐ決意を固め、富山に戻りました。

当時、弊社は郵便事業とロジスティックス事業を併せて行っていましたが、ロジスティックス事業の拡大には更なる手を打つ必要がありました。家業を引き継ぐことに対してプレッシャーはありましたが、「自分がやらねばならない」という強い決意で臨みました。

ーー事業承継時に特に苦労された点はありますか?

塚本:一番苦労したのは、私が東京に拠点を置いて新規事業を進めていた時期に、富山での組織がうまく機能していなかったことです。東京と富山の間で物理的な距離があったため、組織の管理が難しかったんです。しかし、地元に戻り、事業全体の再編成を行ったことで、ようやく組織が安定し始めました。特に、ロジスティックス事業の強化には重点を置き、社員の教育やシステムの見直しを進めてきました。

ぶつかった壁やその乗り越え方

ーーこれまで事業を進める中で、どのような壁にぶつかり、どのように乗り越えたか教えてください。

塚本:ロジスティックス事業を拡大していく中で、組織の成長が追いつかず、経営が難航した時期がありました。特に、事業承継直後は、私が東京にいたため現場での管理が十分にできず、社員たちが混乱することも多かったです。組織内で意見が割れることもありましたが、私がリーダーシップを発揮し、一つひとつの問題に向き合って解決していくことができました。また、財務面でのバランスを取るのも大変でしたが、売上規模を拡大することで次第に安定させることができました。

ーー具体的にはどのような取り組みを行ったのでしょうか?

塚本:まずは、組織全体の再編成を行いました。社員一人ひとりに新しい方針を伝え、目標を共有することで、組織の一体感を高めました。また、私自身が富山に戻り、現場の管理に力を入れました。その結果、2023年には組織が大きく成長し、新しい事業展開にも積極的に取り組むことができるようになりました。社員とのコミュニケーションを大切にし、信頼関係を築くことで、組織力を高めることができました。

今後の新規事業や既存事業の拡大プラン

ーー今後の新規事業や既存事業の拡大プランについて教えてください。

塚本:現在、弊社ではロジスティックス事業のさらなる拡大を目指しています。特に、M&Aによる事業拡大に力を入れており、最近では東北エリアでラストワンマイル事業を買収しました。これにより、東北エリアでの事業基盤を強化し、今後は更なる事業拡大を計画しています。

ラストワンマイル事業は、アマゾンなどの大手Eコマース企業と連携し、個人宅への配送を主に行っています。この事業を通じて、弊社の物流ネットワークを全国規模に広げることができると考えています。

ーーM&Aによる拡大は、他のエリアにも展開される予定ですか?

塚本:はい。東北エリアでの成功事例をもとに、他のエリアでも同様の事業展開を進めていくつもりです。現在の事業モデルは再現性が高く、他の地方都市でも成功する見込みがあります。特に、地方の物流インフラを活用した効率的な配送システムは、今後の成長に大きく貢献するでしょう。

ーー将来的には上場をお考えでしょうか?

塚本: 現在の会社では考えておらず、関連会社で立ち上げた会社には可能性があります。実はうちの関連会社で、ぱんどら株式会社という会社を2021年に設立しました。これは物流のマッチングプラットフォームを運営する会社で、一緒に立ち上げた企業はC2C platformという会社です。

ーーなるほど、ぱんどらの運営には、どの程度の時間を見込んでいますか?

塚本: そうですね、現在はサービスが始まってから1年経過していますが、まだ考える時間が必要だと思っています。実際、売り上げも伸びており、サービス自体も論じられています。

メディアユーザーへ一言

ーー最後に、弊社メディアのユーザーに向けて一言お願いいたします。

塚本:当社は郵便事業を起点とし、現在ではロジスティクス事業へも領域を拡大しております。日々、郵便物を取り扱う中で、情報や人の想いを成果物として形にする業務を行っており、これ自体がロジスティクスの一環であると捉えています。具体的には、荷物のピッキングや梱包作業など、効率性と精度が求められる工程を含め、多岐にわたる物流業務を手掛けております。こうした取り組みを通じて、クライアント様の多様なニーズに対応し、価値を提供することを目指しています。

事業に対して周囲から十分な共感を得られない場面もありますが、私はそれを気にせず、自身の得意分野やこれまでの経験を活かしながら進めてまいりました。その過程で壁に直面することも多々ありますが、そうした困難の中でも一つひとつの課題に真摯に向き合い、着実に結果を出すことの重要性を改めて実感しています。

これまで、営業力、組織力、資金力、採用力という4つの軸を中心に経営を進めてまいりました。その結果、特に営業力が当社の強みとして顕在化してきたことを実感しております。今後は、この強みをさらに活かしながら、残りの3つの軸である組織力、資金力、採用力の強化にも注力し、企業としての成長を加速させてまいります。引き続きご支援とご指導を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

氏名
塚本 雅彦(つかもと まさひこ)
社名
塚本郵便逓送株式会社
役職
代表取締役CEO

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