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群馬県高崎市にある朝日不動産株式会社は、1964年に創業して2024年で60年を迎えた老舗の不動産会社だ。マンションやアパートの部屋を貸す賃貸業や事務所など法人物件の仲介、戸建の仲介といった事業を展開している。全員で5人と限られた従業員数ながら、賃貸管理システムを活用して多くの物件を取り扱い、生産性を高め日々の業務を滞りなく行っている。(画像トップ:朝日不動産株式会社の本社内では従業員がパソコンを駆使して業務を行っている)
朝日不動産の本社がある高崎市元島名町は、高崎駅から東へ7キロメートルほどの関越道沿いという場所。駅前や商店街のように大勢が行き来する場所ではないが、「近くにある高崎健康福祉大学の学生の方たちに多く利用していただいています」と、朝日不動産の町田文子代表取締役は立地の利点を説明する。「大学生の方は、いったん入居されると、通っている4年間は利用していただけます。薬学部の方は6年制なのでさらに2年、お付き合いが長くなります」(町田代表取締役)
細やかなサービスで2代目3代目と代替わりしていく貸主にも任せてもらえる不動産会社になった
60年もの長期にわたって事業を営んできた関係で、古くから預かっている物件も少なくない。その中には、貸主が代替わりしたところもある。「賃貸物件を引き継いだ2代目や3代目の方にも、そのまま当社に預けていただいています。中には代替わりの際にほかの不動産会社に切り替える方もいますが、物件の宣伝などでしっかりと面倒をみてもらえるということで、改めて当社に管理を任せていただける家主さんもおられます」(町田代表取締役)。長い歴史で積み上げた信頼があり、それに応えようとする姿勢があるからこそ、安心して預けてもらえるといえそうだ。
貸主への対応があり、借主への物件の紹介から入居後の管理、家賃の処理といった業務もある不動産業。それを高崎市だけでなく前橋市や伊勢崎市などでも行うのは大変そうだが、同社ではそれを現在、5人の従業員でこなしている。そこでは、パソコン上で稼働する賃貸管理システムが大いに役立っているという。
賃貸管理システムを活用して物件や契約を管理し貸主と借主の双方に手厚いサービスを提供している
賃貸管理システムで行っているのは、「仲介業務から管理業務まで、賃貸に関わる業務を賃貸管理システムで行っています」(町田代表取締役)。賃貸を行う物件の登録や部屋に関する情報の登録はもちろん、契約書の作成に契約物件の管理、家賃などの入金管理といった一連の業務を、賃貸管理システムで行える。このため、取り扱っている多数の物件とそれぞれの貸主、借主を間違えることなく把握し、処理できる。
「借主さんから家賃が入金された際に、そこから手数料や電気代などの費用を引いて、家主さんに振り込むまでの一連の作業を行えます。家主さんの方では当社から送る明細書が税務処理の際に申告書類として使えるため、申告がとても楽になるそうです」(町田代表取締役)。高齢で細かい書類の処理が苦手な家主でも、処理に手間がかからない明細書が提供されるため、喜んで物件を任せようという気持ちになれる。
「幾つかの不動産屋に物件を預けている家主さんの場合、それぞれの不動産屋から回ってくる明細が違っていると、見比べたり取りまとめたりする際に手間がかかります。業界でも多くの業者が使っているシステムなので、そうした手間を気にしないでもらえます」(町田社長)。業界標準に近いシステムを利用することも、顧客を逃さないために必要なことだと言えそうだ。
賃貸管理システムをバージョンアップし業務に必要な機能を見極めながら切り替えを進めていく
同社では20年ほど前から、別の賃貸管理システムを活用してきた。物件情報や契約者情報などをマスターデータとしてパソコンに保管し、賃貸物件の管理を実施してきた。それ以前は「物件については紙の書類を作って記録して、台帳にとじて保管していました。入金や出金についても、表計算ソフトを使って手数料がどれだけかかっているかも含めて計算していました」(町田代表取締役)。1件の賃貸物件を処理するのに結構な時間がかかっていたが、システム化によってそうした手間を減らすことができた。
途中で、現行のシステムに切り替え、顧客へのサービスを強化することができた。さらに、「5年おきに新しくしているサーバーの切り替えに合わせて、2024年に入って賃貸管理システムをバージョンアップしました。いろいろな機能が追加されたそうで、現在どの機能を使えばどれくらい業務を楽にできるかを確かめています」(町田代表取締役)。少し触ってみた感じでは、入金の管理で以前より操作が簡単になっているとのこと。バージョンアップでは契約や更新に関わる処理を行う機能や、物件の管理に関する機能が幾つも追加されている。すべて活用できれば業務の効率も相当に向上しそうだ。
ただ、すぐにすべての機能を使うのではなく、「自分たちでわかる範囲で、どのように便利になるかを確かめながら使っていこうと思っています」(町田代用取締役)。普段の業務もあるため、切り替えによって支障が出るのは避けたいところ。業務の中でどこまでの機能が必要かも見極めたい。専任のシステム担当者を置けない中小企業にとって、効率と機能とのバランスを取ってシステムの切り替えを行っていく大切さを示唆してくれるエピソードだ。
ホームページをリニューアルして物件情報をわかりやすく提供しブログでは顧客が求める情報を発信
賃貸管理システムでは、登録してある物件のデータを、概要や条件だけでなく画像や間取り図も含めてホームページの方へ流して表示する作業も容易に行える。旧バージョンでもそうした作業を行って、取り扱っている賃貸や売買の物件をホームページで発信してきた。新バージョンでも同様に、物件紹介のホームページと連動して情報を発信していく考えだ。
同社ではホームページを2024年11月にリニューアルしたばかり。スタッフの紹介や不動産取引に関連する情報を伝えるブログを掲載して、より親しみを持ってもらえるようにした。物件についても、一覧性が高く希望する物件を見つけやすい。今はネットで不動産物件を探す人も多いだけに、不動産会社にとってホームページの強化は必須といえる。
町田代表取締役は現在74歳だが、システムの更新やホームページのリニューアルといったシステム投資については、顧客に喜ばれ業務の効率化にもつながるということで、前向きに取り組んでいる。ただ、物件の検索から契約までを、一度も顔を合わせずに済ませてしまうオンラインでの契約には慎重だ。「実際に物件を見ていただくことで満足がいくサービスを提供できます。家主さんも同じで、最低でも年に一度は家主さんのところに足を運ぶことで安心して任せていただけるように努めています」(町田社長)。オンラインで何でもできてしまう時代でもフェイス・トゥー・フェイスを大切にする。フットワークの軽い中小企業ならではの経営姿勢と言えそうだ。
最新鋭のオンデマンド印刷機を活用してラミネート加工された標識や大量のファクトシートをプリントしている
最新鋭のオンデマンド印刷機の活用にも熱心だ。賃貸管理システム上で制作した、物件の間取り図や概要、家賃などが記載されたファクトシートをプリントするだけではない。2024年になって導入したオンデマンド印刷機では、雨に濡れても大丈夫なラミネート加工がされた用紙を使い、屋外に貼り出す「チラシ投函禁止」や「駐車禁止」をプリントし、物件の管理に活用している。「以前は、チラシのように大量の印刷が必要なものについては、外部の印刷サービスを活用していました」(町田代表取締役)。そうした印刷物も含め、最新鋭のオンデマンド印刷機1台で何でもこなせるようになった。
顧客の信頼維持のため、ウイルス感染を防御するためのセキュリティーには万全を期している
貸主、借主双方にわたる膨大な顧客の情報を扱っているため、ネットワークに外部から侵入されたり、内部での操作ミスやコンピューターウイルスへの感染によって外部に情報が流出してしまったりといった事態は避けたいところ。そうなる恐れを取り除くため、同社ではファイアウォールを構築し、セキュリティー対策に万全を期している。「賃貸管理システムのように効果が目に見えるわけではなく、それに費用をかけることに疑問を抱く人もいるかもしれませんが、問題の発生を未然に防いでくれている以上、必要な費用だと考えています」(町田代表取締役)
必要なポイントをしっかりと押さえて費用をかけることで、信頼を維持し顧客を満足させ、自分たちも楽になる。中小企業ならではのICT戦略で次の10年、そしてさらに先へと事業を継続させていく。
企業概要
会社名 | 朝日不動産株式会社 |
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本社 | 群馬県高崎市元島名町690-5 |
HP | https://www.asahi-fudousan.co.jp/ |
電話 | 027-352-8199 |
設立 | 1964年 |
従業員数 | 5人 |
事業内容 | 不動産業(貸アパート・マンション、貸戸建、貸事務所・店舗、売新築一戸建、売中古マンション、売中古一戸建、売土地、投資用など取り扱い) |