高齢化が進む日本の中で、企業における後継ぎ社長の役割が重要視されている。本企画では、これからの日本経済を支えていく後継社長に、どのように変革を起こし、成長を遂げていくのかを伺い、未来の経済発展へのヒントを探っていく。
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平成 11 年 4 月 大成建設株式会社 入社
平成 13 年 9 月 巴山建設株式会社 入社
調布市や東京都が発注元となる公共工事 7現場の現場代理人(監理技術者)を歴任
平成 22 年 2 月 巴山建設株式会社 専務取締役 就任
令和3年 4 月 1 日 巴山建設株式会社 代表取締役社長 就任
ICT の活用等により、業務効率が上がり、ほとんど残業が発生しない就労環境を実現しています。現在、グループ所有の敷地に屋外運動施設「パンダフィールド」(国際規格レベルのサッカー場・2029 年 4 月完成予定)の建設プロジェクトを推進するなど、新しいこと・ワクワクすることに積極的に取り組む社風です。
創業からこれまでの事業変遷と貴社の強み
—— 巴山建設株式会社の創業から現在に至るまでの変遷についてお聞かせください。
巴山建設株式会社 代表取締役社長・巴山 一済氏(以下、社名・氏名略) 巴山建設は創業74年を迎え、私は3代目として2021年4月に社長に就任しました。創業当時は建設資材の調達や運搬を主に行っていましたが、20年以上前から建設工事も手掛けるようになり、現在は土木工事を主体に、道路や橋、河川工事などを行っています。地元の東京・調布市を拠点に、地域に根ざした事業展開をしています。
—— 建設業界は人手不足が深刻だと聞きますが、御社ではどのように対応されていますか?
巴山 確かに人手不足は大きな課題ですが、当社ではICT施工を導入し、経験の浅いオペレーターでも効率的に作業ができるようにしています。また、女性の少ない業界ですが、当社では女性の施工管理者やCADオペレーターが活躍しています。
—— 3年前には八王子市にサッカー場の開発許可が下りましたが、それについて詳しく教えてください。
巴山 はい、八王子市にパンダフィールドという人工芝サッカー場を建設しています。自社の土地を利用し、地域貢献の一環として小学生のジュニア育成を目的としています。週末には4チームが練習でき、約300人のコミュニティが形成されています。これは先代がジュニア教育を重視していたことに加え、地域のコミュニティ作りにも貢献できると考えた結果です。
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—— 会社のロゴについてもお聞きしたいのですが、パンダを使用している理由は何でしょうか?
巴山 先代の頃から重機や現場にパンダのイラストを使用していました。パンダは子どもたちに親しみやすく、地域に馴染む存在として採用しています。パンダフィールドの名前にも、その親しみやすさを反映させています。
承継の経緯と当時の心意気
—— 代替わりの経緯についてお聞かせください。
巴山 大学卒業後、大手ゼネコンで3年間働き、26歳で家業に戻りました。32歳まで現場の施工管理を担当していましたが、当時はバブル崩壊の影響で建設業界が厳しく、建設投資額も繁忙期に比べて半減していました。そんな中、社長である父と話し合い、新規案件の営業を始め、ゼネコンへの飛び込み営業を積極的に行いました。その結果、工事を受注でき、東京都の役所の工事も担当するようになりました。36歳頃には、工事や営業をほぼ一手に引き受けるようになりました。
—— 社長に就任されるまでのプロセスもお聞かせください。
巴山 40歳を過ぎた頃、そろそろ社長をやりたいと父に相談しましたが、まだ早いと言われました。家族経営の特有の事情もあり、身内の退職をきっかけに代替わりが具体化し、2021年4月に社長に就任しました。お客様にはその2ヶ月前にハガキでお知らせしました。通常であれば数年前から準備を進めるものですが、急な決定だったため、計画的に進めることができませんでした。
ぶつかった壁やその乗り越え方
——これまでに直面した壁についてお聞かせいただけますか?
巴山 特に社長就任後に壁を感じました。当社の規模が大きくなる中で、身内だけでは対応できない部分が増え、優秀な社員を役員に選出する必要がありました。これにより、組織としての体制は強化されました。
財務面でも大きな学びがありました。社長になる前から決算書や財務諸表を見ていましたが、実際に社長として税理士や銀行の方々から学び、財務の見通しがより明確になりました。その結果、ICTへの投資が可能となり、会社にとって非常に有益でした。
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また、親戚が退職する際、少量の株をどう処理するかという問題がありました。次の世代に影響を与える可能性があるため、誠意を持って交渉し、株を回収しました。この経験を通じて、会社を守るために私利私欲を捨てる必要があると実感しました。
今後の新規事業や既存事業の拡大プラン
—— 未来に向けた巴山建設の展望についてお聞かせください。
巴山 まず、ICTの活用に注力しています。日本は災害が多い国で、地震や台風・大雪などの被害状況を迅速に確認する必要があります。当社は東京都や国交省と災害協定を結んでおり、通信が途絶えた場合でもドローンを使って被害状況を確認できる体制を整えています。さらに、東京都のデータを活用し、災害前の道路状況を把握することで、効率的な復旧計画を立てることが可能です。ICTを駆使することで、迅速な応急復旧が可能となっています。
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—— 地域貢献への取り組みについてもお聞かせください。
巴山 地元調布市での地域貢献にも力を入れています。最近では、調布市の小学校や中学校の建て替え工事を受注しました。これまで主に土木工事を手掛けてきましたが、今後は建築工事にも本格的に取り組んでいく予定です。
この建て替え工事では、災害時の避難場所としての機能や、多様性に配慮した設計を導入しています。例えば、オールジェンダートイレの設置や、不登校気味の子どもたちが安心して登校できる動線を工夫するなど、すべての生徒が快適に過ごせる環境を整えています。地域の未来に向けた重要なプロジェクトだと考えています。
メディアユーザーへ一言
—— 読者の皆さんに向けて、一言お願いできますか?
巴山 私が常に心に留めているのは、「なせばなる、なさねばならぬ」という言葉です。挑戦し続けることが重要だと考えており、失敗やミスは避けられないものの、それでも前に進むことが大切です。「駑馬十駕」という言葉がありますが、これは才能がなくても日々努力を続ければ、才能ある人に追いつけるという意味です。足の遅い馬でも、十日間走り続ければ速い馬に追いつけるという教えです。
私は小学校から大学まで運動を続けていましたが、勉強はあまり好きではありませんでした。しかし、社会人になり建築業界に入って、ものづくりの面白さに気づきました。技術が必要な仕事なので、計算や構造計算は不得意でしたが、少しずつ勉強することで克服できました。誰でも努力を続ければ成長できると信じています。皆さんも挑戦を続けてください。
- 氏名
- 巴山 一済(ともやま かずよし)
- 社名
- 巴山建設株式会社
- 役職
- 代表取締役社長