高齢化が進む日本の中で、企業における後継ぎ社長の役割が重要視されている。本企画では、これからの日本経済を支えていく後継社長に、どのように変革を起こし、成長を遂げていくのかを伺い、未来の経済発展へのヒントを探っていく。

株式会社にしがき
(画像=株式会社にしがき)
西垣俊平(にしがき しゅんぺい)――代表取締役
1977年生まれ。2000年に慶応義塾大学を卒業後、経営コンサル会社へ入社。M&Aの支援や経営改善プロジェクトの運営に携わった後に、2005年に株式会社にしがきの代表取締役に就任。貸し別荘スタイルの会員権事業や宿泊施設運営の事業をスタートし、グループ運営施設を50施設以上に拡大。直営展開と開業・運営・集客支援などのコンサルティング業務を行う。
1950年8月に食品卸売業「西垣冷菓有限会社」として創業。スーパーマーケット事業や京都府宮津エリアでのリゾートマンションや別荘地の分譲を行うマリントピアリゾート事業を展開。その後、レストラン・マリーナ・宿泊施設運営、リゾート会員権事業と事業領域を拡大し、2020年から関東エリアに進出。現在はシェア別荘「レジデンスヴィラ」も手掛ける。

目次

  1. 創業からこれまでの事業変遷
  2. ぶつかった壁と乗り越え方
  3. 今後の経営・事業の展望
  4. 株式会社にしがきの取り組み「レジデンスヴィラ」について

創業からこれまでの事業変遷

ーー御社の事業の変遷について教えてください。

株式会社にしがき 代表取締役・西垣俊平 氏(以下、社名・氏名略):創業は1950年8月になります。当初は食品問屋として、私の祖父が創業しました。その後、事業を法人化し、1970年頃に2代目にあたる私の父がスーパーマーケットの事業を展開し始めました。最初は京都の北部に小売店舗を展開していましたが、1989年にリゾート事業に進出し、京都の宮津でリゾートマンションや別荘地の分譲を始めました。

2005年に、父の病気をきっかけに私が事業を継承し、翌年から介護事業をスタートさせました。その後、2014年頃にシェアベースの事業や一般宿泊事業を開始しました。現在では、京都北部の高齢化や過疎化を考慮し、地元の方を対象としたスーパーマーケット事業だけではなく、アクティビティ事業やリゾート事業から派生した複数の事業も展開しています。

ーー これまで様々な事業を立ち上げられていますが、事業を多角化されてきた理由を教えていただけますでしょうか?

西垣: もともと私が後を継いだ時は、売上の95%が食品スーパーでした。しかし、我々が展開しているエリアでの子供の人口減少や、ドラッグストアやコンビニエンスストアの出店を受け、食品スーパーの事業だけで継続して収益を維持するのは難しいと判断しました。そこから事業の転換を決意し、リゾート事業や介護事業など、高齢者のマーケットに注力する選択をしました。

ーー事業を多角化する上で、重要視しているポイントがあれば教えてください。

西垣: 私自身も考え方が変わってきていますが、自社の既存の経営資源を活かすことが非常に重要だと考えています。また、リソースが活かせる範囲を見極めることも大事だと思っています。

例えば、インターネットの事業もグループ会社でやっているのですが、ネット専業の企業ではできない、リアルの資産を絡めたビジネスモデルに組み替えていくなど、自分達が提供できる価値を最大化することを常に考えています。

ぶつかった壁と乗り越え方

ーー代替わりのタイミングで、苦労されたポイントを教えていただけますか?

西垣:やはり一番苦労したポイントは、既存の事業をやりながら代わりの事業を作らなければならない状況だったことです。

振り返ってみれば、後を継いだときは年商がおおよそ120億円ぐらいで、リゾート事業は約6億円でした。そして前述の通り、売上のほとんどが食品スーパー関連事業だったため、それが今後縮小して厳しくなると考えると、新たな事業を立ち上げる必要がありました。

リゾート事業は特にスケールしてきましたが、何度か“脱皮”をさせて、事業を大きくしていくことも大変でした。施設をたくさん作れば売り上げは伸びますが、限られたリソースの中で最大限のパフォーマンスを発揮することを重要視してきました。そのため、費用を抑えるために自社でマーケティングに取り組んだのですが、安定的な売上の柱を作るまでは非常に苦労しました。

ーー3代目ならではの難しさやご苦労はありましたか?

西垣:事業を引き継いだときの社員との意思疎通は非常に難しい点でした。当初は、それまで事業を支えてきた先代の幹部社員も残っていて、皆さん協力的でした。しかし、年齢が離れていることから思っていることが的確に伝わらず、危機感を伝えられていないと感じるようになりました。さらに、若い社員を引き上げる際の社員同士の雰囲気も良いものではありませんでした。

そうした背景から、年齢の開きがあった中で偏った評価や社員同士のいざこざをなくしていくために、ピラミッド型の組織から並列的なフラットな組織を作ることに励みました。

今後の経営・事業の展望

ーー今後の経営の展望として、さらに多角化経営や、事業の伸長を図ろうとしているポイントがありましたら教えてください。

西垣: 私は現在47歳ということもあり、全く新しい分野に手をつけるのは時間的に厳しいと感じています。そのため現在は、関連事業の中で組み立てていくことを考えています。リゾート分野では、他の企業が真似できないような設備を備えた施設を作ることを重視しています。

現在箱根でラグジュアリーな施設を作る計画を立てていますが、通常であれば非常に大きな投資額が必要なところを、弊社では自社でマーケティングを行うことで、費用を抑え、設備への投資に回すことができます。充実した設備を作ることで、業界の中での競争優位性を確保する考えです。

ーーなるほど、ありがとうございます。具体的にはどのような目標のもとで事業を展開していく予定ですか?

西垣: 既存事業を横に展開していき、単価を上げることで会社を強くしていくことを目標にしています。例えば、外部とのコラボレーションを強化することで、より多角的に事業を展開できるような体制を作ろうと思っています。

また、前述の通り、競合では真似できない商品やサービスを常に提供できるように意識しています。例えばラグジュアリー層向けの別荘事業では、80平米ぐらいの規模だと容易に作れてしまうため、200平米~300平米の大きな施設を作ることで、簡単には真似できないサービスを提供しています。その結果、関東で始めた別荘のシェアの会員制事業では、月に300件ほどの問い合わせがあります。

ーーこれからの課題として、どのような点が挙げられますか?

西垣: 集客や会社のブランディング、認知の向上が現在の課題だと考えています。その中でも、時代の流れに合わせたマーケティングや広報の戦略が大事だと考えています。

さらに、ホテルのオペレーションでは人手不足や人件費の問題があり、優秀な人材を確保することが課題だと感じており、今後も力を入れていきたい領域の一つです。

株式会社にしがきの取り組み「レジデンスヴィラ」について

ーーでは、最後にメディアユーザーの皆様に向けて、何か一言いただけますでしょうか?

西垣:当社の取り組みの中で、特に経営者や富裕層の方々におすすめしたいのが、レジデンスヴィラという別荘の取り組みです。シェアリングエコノミーがトレンドになっており、別荘もその一つです。今までにない企画にこだわって作っているので、ぜひ注目していただきたいです。

氏名
西垣俊平(にしがき しゅんぺい)
社名
株式会社にしがき
役職
代表取締役