キングラン株式会社
(画像=キングラン株式会社)
松原 達也(まつばら たつや)――代表取締役社長
1953 年5月31日生まれ。出身は大分県。
高校卒業後、大学に入学し、学生でありながら経営も行う。 大学卒業後、1979 年にキングラン株式会社に入社。入社 3 年後の1982 年にキングラン九州株式会社の社長に就任。その後、2003年にキングラン株式会社グループ本社の社長に就任し現在に至る。座右の銘として、三大主義「めげない、逃げない、負けない」を掲げ、現在も挑戦し続けている。
キングラングループは、「カーテン事業」を基軸とした、医療・福祉施設サポートのリーディングカンパニーとして、1972 年に設立いたしました。防炎カーテンのメンテナンス付きリース販売や、施設設備のトータルコーディネートを提供し、業界水準を上回る品質管理とサービスにより、業界トップシェアを誇ります。「王様が走る」という社名の通り、常に「KING=最高ランク」を「RUN=継続」させる企業として、人々へより快適な生活を届けるため、サービスを提供し続けています。

目次

  1. 創業からこれまでの事業変遷と貴社の強み
  2. 承継の経緯と当時の心意気
  3. ぶつかった壁やその乗り越え方
  4. 今後の新規事業や既存事業の拡大プラン
  5. メディアユーザーへ一言

創業からこれまでの事業変遷と貴社の強み

——創業からこれまでの事業の変遷、そして貴社の強みについてお聞かせいただければと思います。

キングラン株式会社 代表取締役社長・松原 達也氏(以下、社名・氏名略) 会社は1972年の創業ですから今年で53年目になりますが、私が入社したのは45年前の1979年。入社当時は社員が8人しかおらず、私はアルバイトから社員になったんです。将来九州で事業を展開したいという話を創業者にしたところ、「3年目に九州で会社を作ってほしい」と言われ、実際に熊本で独立して会社を設立しました。最初はパートさんと2人で始めましたが、今では社員は九州に580人、グループ全体では3000人ほどを数えるまでに成長しました。

売上も毎年増加し、コロナ禍でも利益を出し続けています。私たちのビジネスは労働集約型で、社員がいなければ成り立ちません。だからこそ、社員一人一人が重要な資産なんです。

——労働集約型のビジネスで成長されているということですが、経営のビジョンについてもお聞かせいただけますか?

松原 私たちの経営方針は「損して徳取れ」です。目先の利益にとらわれず、5年、10年、さらには30年先を見据えて行動することが大切だと思っています。そのため、上に立つ者には人徳が求められます。利益追求だけではなく、信頼を築くことが長期的な成功の鍵だと考えています。

これからも着実に成長していく予定で、5年で500億円、10年以内には1,000億円を目指しています。現在の売上は360億円ですが、今まさに大きく成長するための体制を整えているところです。

——カーテンの分野からスタートされて、現在はどのように事業領域を広げていかれているのでしょうか?

松原 約15年ほど前に、医療・福祉分野における「食」と「住」に挑戦することにしました。そう、「医食住」です。給食事業や建築関係、特に内装や改修工事といったリニューアル事業にも取り組んでいます。現在、他の売上が伸びてカーテンの売上は全体の半分以下になっていますが、全国の医療・福祉分野で60%以上のシェアを持っています。特に、厚生労働省が管理している施設のうち、約13,000軒と契約を結んでいます。ここに「食」と「住」の分野を拡大していく計画です。

キングラン株式会社
(画像=キングラン株式会社)

——なるほど、非常に大きなマーケットシェアを持たれていますね。そのシェアを確保できた背景にはどのような強みがあるとお考えですか?

松原 私たちは「素朴で地味な会社」なんです。それが強みだと思っています。自然体で、あまり目立たず、信頼を大切にして、コツコツと仕事を続けてきた結果だと思います。また、「儲かる」という漢字は「信者」と書きますが、多くのお客様の信頼を得ることで仕事が増え、結果的に利益が生まれるのだと思っています。

——目立たないけれども、しっかりと結果を出されているという点が強みなんですね。次に、社員を応援し、チャレンジを促すための人事施策について教えていただけますか?

松原 「仕事は半分、遊びは半分」という考え方を大切にしています。50%は仕事に集中し、残りの50%は遊びなさい、と社員に伝えています。人生はバランスが大切で、仕事を一生懸命やった分、遊ぶことも大事なんです。それが仕事の質を上げることにもつながりますしね。社員が自分の人生を大切にし、その上で会社を利用して成長してもらえればと思っています。

承継の経緯と当時の心意気

——次に事業承継についてお聞かせいただきたいと思います。

松原 私が、キングラングループの本社であるキングラン株式会社の社長に就任したのは、2003年です。事業承継の際には、多くの困難がありました。私が次に引き継ぐことになった時、会社内には同世代の仲間がいたので、反発や批判が少なくありませんでした。一生懸命応援してくれる人もいましたが、裏で不満や妬みを持つ人も多かったです。それが一番の悩みでしたね。

——それは大変なご苦労でしたね。そうした状況の中、どうやって乗り越えられたのでしょうか?

松原 正直、悔しくて涙を流したこともありましたが、それを社員に言うわけにはいきませんでした。結局、そういうことは自分自身の問題として受け止めるしかありません。しかし、それを経験したからこそ強くなれたとも思います。事業承継の際に精神的な強さが求められるのは確かです。

私自身、ナンバー2に離反されたり、金銭的な苦労も経験しました。それも今では勉強だったと思っています。若い頃の苦労や人生の途中での苦労も、長い目で見ればすべて学びだと感じています。

——なるほど、そのような経験が松原さんをさらに強くしたんですね。

松原 そうですね。転んでもただでは起きない、という気持ちは常に持っていました。そういった負けん気があったおかげで、どんな困難にも立ち向かう力が湧いてきました。負けるのは嫌いですし、それが良い結果を生んだのかもしれません。

——持ち前の負けず嫌いが、大きな力となって困難を乗り越える原動力になったということですね。涙を流しながらも、その強さで事業を守り抜いたということがよく伝わってきます。

ぶつかった壁やその乗り越え方

——次の質問に移らせていただきます。経営をされていく中で、ぶつかった壁やその乗り越え方についてお聞かせいただけますか?

松原 一番の苦労はやはり精神的なものですね。肉体的な苦労は、健康であればなんとか乗り越えられるものですが、メンタルの負担は大きいです。我々の世代は、肉体的にも精神的にも、ある意味で鍛えられてきました。今ではそれがパワハラに当たることがあるのかもしれませんが、当時はそれが当たり前の時代でした。

——なるほど、精神的な苦労が一番大変だったのですね。それをどうやって乗り越えられたのでしょうか?

松原 正直、逃げたいと思ったことも何度かありました。経営者の勉強会にも参加していましたが、残ったのは数人だけで、多くの創業者は廃業したりと、非常に厳しい状況でした。その中で自分も「よく生き残ったな」と思うことがあります。

——具体的なエピソードがあればお聞かせいただけますか?

松原 あまり良い話ではないですが、実際に二度ほどもう死んでしまいたいと思ったことがあります。経営が嫌で、人生そのものが嫌になってしまったんです。その時、社員に「自分がいなくなったら保険金が入るから、それで給料を支払ってほしい」と伝えました。すると社員から「それなら死ぬ気で仕事をやったらどうなんですか!?」と言われました。その言葉を聞いて、ハッとしたんです。実際に「死ぬ気で」やったことがなかったと気づきました。

それから、365日間、当時は本当に死ぬ気で働きました。その結果、驚くほどの利益が出て、社員たちも元気になりました。やはり、従業員やその家族の存在が、私を支え、奮い立たせてくれたんだと思います。

——社員の方々の支えが大きな力になったのですね。

松原 そうです。私は一人ではない、仲間がいるという意識があったからこそ、やってこられました。これからもその気持ちを持ち続け、次の世代にも引き継ぎたいと思っています。後継者にも「一人ではない」という思いを持ってほしいですね。社員とその家族を含めれば、1万人以上の人々が私たちと共にいるんです。彼らと一緒に過ごす時間や活動が、私にとって大きな意味を持っていて、大事にしたいと思っています。

今後の新規事業や既存事業の拡大プラン

——ここまでは過去のお話を伺いましたが、今後の新規事業や既存事業の拡大についてもお聞きしたいと思います。今後の展望や、既存事業の中で特に力を入れていきたい部分について教えてください。

松原 そうですね、先ほどもお話しした通り、医療・福祉分野における「医食住」のうち、特に「食」と「住」に挑戦しています。まだまだ広げられる分野が多いですし、そこに注力していきたいと考えています。

ただ、今後特に力を入れたいのは、誤解を恐れずに言うと「変人」を集めることです(笑)。普通の人たちは普通の世界にいるので、そこから新しい発見や斬新な発想が生まれにくいと思うんです。変わった視点を持つ人たち、普通ではない人たちを集めて、ユニークなアイデアや発想をぶつけ合いたいと思っています。

——「変人」という言葉が印象的ですが、どのような狙いがあるのでしょうか?

松原 変わった人たちは、常に違う視点を持っているんです。普通の人が見ないところを見て、突然変わったことを言う。そんな人たちを集めて、10年後でもいいので、何か新しいものを生み出せれば面白いなと思っています。私自身も「変人」だと思っていますし(笑)、これまで多くのシステムや商品を自分で考えてきました。それをさらに進化させていきたいですね。

——発想力や創造力を持つ人々と共に、長期的なビジネスを育てていくということですね。具体的に「変人」を集めるための取り組みはされているのでしょうか?

松原 そうですね、社内で「変人を集める会」をやろうとしたんですが、秘書に「そんなこと言ったら変人は来てくれませんよ」と言われました(笑)。そこで、特技を持った人を集めるようにしています。社内外で、特技や才能を持った人たちと一緒にアイデアを出し合う場を作りたいと思っています。

——とてもユニークな取り組みですね。最後に、ファイナンスや経済メディアの観点から、御社が上場企業のグループに入られた背景や今後の展望についてお聞かせください。

松原 上場企業のグループに入った理由は、業界の中での信用力という点と、しっかりした理念があったことです。また、“医・食・住”の領域においてのシナジー効果です。今は無き領域の創造を含めて“医・食・住”の新たなチャレンジというのが大きな理由ですね。それと、これからも順風満帆にいかないことも多いと思いますが、大きなグループに入ることで、経営の安定も図ることができると思っています。

——グループの支援が経営を支える大きな力となるのですね。

松原 グループ内には60社以上の企業がありますし、競争もありますが、それがまた良い刺激になっています。これからも社員とその家族のために、さらに事業を成長させていきたいと考えています。

メディアユーザーへ一言

——最後に、弊社のメディアユーザーに向けて、一言メッセージをいただけますか?

松原 そうですね。今、世界を見ても戦争や様々な問題が続いています。同じ人間がこういったことを繰り返しているのを見ると、非常に残念な気持ちになります。我々企業や個人がそれを直接止めることは難しいかもしれませんが、少なくとも自分たちにできることをしっかりと行い、社会に貢献していきたいと考えています。

また、繰り返しになりますが、私は「損して徳取れ」という考えを大事にしています。目先の利益を追い求めるのではなく、人としての在り方を大切にしていきたいです。それは、社員にも一番伝えたいことで、私たちがやるべきことは、ただ利益を追求するのではなく、人としての誠実さを持って仕事に取り組むことだと思っています。

氏名
松原 達也(まつばら たつや)
社名
キングラン株式会社
役職
代表取締役社長

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