山仁薬品株式会社
(画像=山仁薬品株式会社)
関谷 康子(せきや やすこ)――代表取締役社長
兵庫県芦屋市出身。 摂南大学薬学部を卒業後、杏林製薬株式会社に就職。 2009年、父の病をきっかけに山仁薬品へ入社し、翌年代表取締役(三代目)に就任。 顧客軸の差別化戦略と社内風土改革で、医薬品乾燥剤業界トップシェア企業へ変革。
1954年の創立以来、乾燥剤シリカゲル関連商品「ドライヤーン®」の製造販売を展開。 関谷の就任後は、製薬会社に特化し、安定した品質と供給、製品開発、危機管理体制を整え、多様なニーズに応え信頼と実績を築いてまいりました。 創業70年を機に「斬新なアイデアと意思ある実行力で、世の中の『不』を『快』にする」を新たな経営理念に掲げ、 今後は一般消費者向けの商品開発にも力を入れ、より多くの方々に貢献できる企業を目指しています。

目次

  1. 創業からこれまでの事業変遷と貴社の強み - 祖業と現在の事業内容
  2. 承継の経緯と当時の心意気
  3. ぶつかった壁やその乗り越え方
  4. 今後の新規事業や既存事業の拡大プラン
  5. メディアユーザーへ一言

創業からこれまでの事業変遷と貴社の強み - 祖業と現在の事業内容

——創業からこれまでの変遷について教えてください。

山仁薬品株式会社 代表取締役社長・関谷 康子氏(以下、社名・氏名略) 山仁薬品株式会社は、祖父が創業しました。当時、日本で初めてシリカゲルが上陸する際に、販売権を取得したことが始まりです。 創業者はオンリーワンのビジネスモデルを掲げ、シリカゲルの製造手法を編み出して事業を進めてきました。 私が引き継いでからは、製薬業界を基軸に、医薬品専用乾燥剤という新しいカテゴリーをゼロから構築しました。

——ファミリービジネスとしての強みについても教えてください。

関谷 私たちの会社は、戦略や新しいカテゴリーの構築において、非常に得意なDNAを持っていると感じています。自分たちが思いついたことを積極的に進めていくスピリッツがあります。このような精神は企業文化でもありますが、これは会社の強みであると思います。

山仁薬品株式会社
(画像=山仁薬品株式会社)

——企業文化についてもお話しされていましたが、どのように従業員に浸透させているのでしょうか?

関谷 企業文化は自然と出来上がるもので、すぐに変わるものではありません。理念の浸透や社風の改善には取り組んでいますが、企業文化そのものは従業員と共に作り上げていくものだと考えています。

承継の経緯と当時の心意気

——先代から引き継がれた時の状況や、その時の苦労についてお聞きしたいと思います。

関谷 そうですね。私たちの会社は、乾燥剤の中でも錠剤のタブレット型の乾燥剤をオンリーワン戦略でやってきました。その戦略の弊害として、オンリーワンの商品があると社風がぬるくなっていくというのが一つの問題でした。オンリーワンの商品があるのは悪くはないですが、それに甘えてしまうわけです。

先代も、わざわざお客さんに売り込みに行く必要はないと言っていました。お客さんが欲しがる場合に提供すればいいと。

売り込みに行くと値段を下げなければならない可能性があるので、営業はしなくていいという方針だったため、営業部隊が営業を知らないという問題がありました。私が引き継いで15年経ってようやくわかってきたのは、オンリーワンの商品があるという認識が社風をぬるま湯にしているということです。それが何十年も続いているのが一番の課題だと認識しています。

当時、組織の人間関係が良好では無いというのも問題でした。挨拶もしない、トイレ掃除もしないという状況でも、みんながいるのはオンリーワン商品があって給料がもらえるからです。営業に行かなくても給料はもらえる。営業をしに訪問することもないので、クレーム報告も上がってこないのです。

よっぽどのクレームは電話がかかってきますが、その時は営業がクレーム処理班のように対応していました。しかし訪問していないので、細かなクレームはお客さんも言う相手がいないのです。社員はクレームが多くないと思い込んでいます。

ぶつかった壁やその乗り越え方

——社風を変えるためにどのような施策を講じてきたのでしょうか?

関谷 乗り越えられているとは言えませんが、少しずつ学ぶ社風に変えていきました。隣の人とのコミュニケーションを密に取るようにし、掃除や挨拶を徹底するようにしました。経営者が変わった瞬間は一時的に社内の雰囲気も変わるかもしれませんが、時間が経つにつれて元に戻ることもあります。それでも、1つずつできることをコツコツと進めております。

山仁薬品株式会社
(画像=山仁薬品株式会社)

まずは自分一人でできることを始め、次に2人、3人でできることを進めていきます。そして、全体として取り入れようとするのが私のやり方です。

——社長自らが理想の姿を示していくことが重要だということですね。医薬業界専門の乾燥剤に着手されたのは、複数のオンリーワンを持つという考え方でしょうか?

関谷 複数のオンリーワンを持つと考えているわけではありません。 医薬業界専門の乾燥剤に着手したのは、自社の強みを生かすためです。製薬会社出身の私だからこそ、業界の裏事情を知っているので、その知識を活かした戦略を取りました。 医薬品向けの乾燥剤というのは当時存在していませんでしたので、そこをターゲットにしました。振り返ると、カテゴリー戦略だったと気づくことができました。

今後の新規事業や既存事業の拡大プラン

——今後の新しい展開についてお聞かせください。

関谷 2019年頃から、製薬会社を基軸にしたビジネスがこのままでは成り立たないのではないかという危機感を感じていました。その時、一度は乾燥剤事業をやめようかと考えたこともありました。しかし、一般市場にまだ広く出回っていないことに気づき、やり切ってから判断しようと決意しました。そこで、一般消費者向けの商品を展開することにしました。

当初は社内でも反対意見が多かったものの、商品が売れ始めると、社員も次第に協力的になり、一般市場に進出することに成功しました。今後は、一般の店舗で取り扱ってもらえるような商材を増やし、乾燥剤がどこでも手に入る市場を作るという戦略を進めています。

——最初のターゲットとしてはどのような用途を考えていますか?

関谷 現在は調味料専用の乾燥剤「カタマラーーン」を展開しています。塩や粉チーズなど、固まりやすい調味料を対象にした商品で、これまで使用者からも高い効果があるという評価をいただいています。

メディアユーザーへ一言

——読者の皆様へメッセージをお願いします。

関谷 仕事について考えるときに、何のために仕事をしているのか、自分たちの事業が誰の役立っているのかを追求してほしいと思います。従業員が使命感を持って働けるかどうかが大切です。

誰のために何のために働いているのかが明確になれば、採用にも困らなくなります。実際、最近の募集では1週間で7人の応募がありました。中小企業で、これだけの応募があったのはありがたいことです。しかし、これに満足せず、常に会社と社会をつなげていくことを考え続けたいと思います。

氏名
関谷 康子(せきや やすこ)
社名
山仁薬品株式会社
役職
代表取締役社長

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