株式会社折兼
(画像=株式会社折兼)
伊藤 崇雄(いとう たかお)――代表取締役
1972年11月生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。大学卒業後、東海銀行(現:三菱UFJ銀行)に入行。株式会社折兼には、2000年4月入社、2001年にショップ事業部 部長、2004年に常務取締役に就任後は、WMSや物流ABCのシステムを導入し、物流の改善を進める。代表取締役副社長を経て、2011年に4代目となる代表取締役に就任。現在は、株式会社パックスタイルをはじめ、10事業会社の代表を務める。 趣味は、ウォーキングとサウナ。
創業明治20年137年目を迎える企業。創業当時は、駅弁用の折箱の製造・販売からスタート。スーパーマーケットの台頭、コンビニエンスストア等と時代の変化とともに成長。3代目社長から「食品包装専門商社」に業態を変更。仕入先数2,000社、商品登録数は、35万アイテムを超える。現在では、業界初の環境配慮資材カタログ「wecco(ウィーコ)Vol.5を発刊。環境負荷の低い商品にも注力。受賞歴は、海ごみゼロアワード2021やグリーン購入大賞 優秀賞等多数。

目次

  1. 創業からこれまでの事業変遷と御社の強み
  2. 承継の経緯と当時の心意気
  3. ぶつかった壁やその乗り越え方
  4. 今後の新規事業や既存事業の拡大プラン
  5. メディアユーザーへ一言

創業からこれまでの事業変遷と御社の強み

ーー創業からこれまでの事業の変遷と御社の強みについて、教えていただければと思います。

株式会社折兼 代表取締役社長・伊藤 崇雄氏(以下、社名・氏名略) 当社は明治20年に、折り箱の製造メーカーとして創業しました。初代と二代目は木箱のみの製造販売をしていましたが、三代目になった時に木箱の需要が落ちてきたため、プラスチック製の食品容器に大きくシフトしました。例えばスーパーマーケットやコンビニで使われる食品トレーやお弁当容器などが中心です。現在は食品容器以外にも洗剤や割り箸などの消耗品や、食品製造現場で使う機械や備品など、食品業界に関わる食品以外の資材や衛生商品を扱っている問屋業がメインの事業となっています。

株式会社折兼
(画像=株式会社折兼)

ーー順調に成長をされてきているかと思いますが、御社の中での強みは何でしょうか?

伊藤:全国には約2,000社の同業者があると言われていますが、弊社の強みは大きく二つあります。一つ目は、我々のお客様であるスーパーマーケットや外食産業は全国展開されていることが多く、我々のグループは全国物流をカバーしている数少ない会社であり、全国展開しているチェーン店さんへの営業と物流で強みがあります。

二つ目は、包装資材だけを売っている問屋さんは多いですが、機械や備品の販売や、衛生管理のコンサルタント、そして環境配慮型商品の提案販売ということで、専門スタッフが揃っている問屋は当社だけです。食品業界の中で食品以外の部分で困ったことがあれば、機械・フィルム・デザイン・衛生・備品・エコの専門スタッフが課題を解決できることがもう一つの強みです。これら二点が同業者と差別化できており強みとなっています。

承継の経緯と当時の心意気

ーー折兼の四代目としてご活躍されていますが、継がれた当時の心境についても教えていただければと思います。

伊藤:私は38歳の時、今から約13年前に社長に就任しました。同業の中では平均より5年から10年早く社長になった感じです。当時、業界の中でもかなり若い社長として有名でした。周りに先んじて社長に就任した5年間を、非常に有意義に使えたのかなと思っています。

特に、私たちの扱う商品は約400,000アイテムもあり、非常に細かく幅広い中で、IT化やDX化を進めていく必要がありました。当時はIT化でしたが、今はDX化と言いますね。また、企業の組織もどんどん大きくなっていく中で、組織の整備や販路の拡大も必要でした。ネット販売など、新しい販路についても考えていく必要がありました。

経営者は年代によって、やるべきことや選択肢が違ってくると思います。 私は若いうちに社長になれたことによって、食品包装業界ではなかったサービスや社内の体制、ITやDX化といった新しいことに取り組むことができました。

例えば、私がもう少し年を重ねていくと、生まれた時からインターネットがあるZ世代やAI世代といった方々と協力していかなければならない時代が来るでしょう。私が社長に就任した時がちょうどITやDXのさまざまなソリューションが登場する時期でしたので、そのタイミングで変革を進めることができました。

ぶつかった壁やその乗り越え方

ーー実際にどのような課題にぶつかり、どのように乗り越えられてきたのでしょうか。

伊藤:私は38歳で社長になったとき、会社の幹部はほとんど50歳以上で、ジェネレーションギャップがあったと思います。長い間、この業界で成功してきた会社としては、成功体験もあって、それを維持しながらも新しいものにチャレンジしていく精神が少し欠けていたと思います。

社長就任後は、幹部の方々の経験や今までの勝ちパターンを見直さなければいけない時期が来ていて、そこに対する反発や違和感は確かにあったと思います。

ーー実際に、そうした反発はどのように調整されたのでしょうか?

伊藤:やはり幹部の方々との対話や、経営計画、事業計画を分かりやすく示すことが重要でした。地道に対話を重ね、抵抗や違和感を乗り越えてきました。また、経営者としての説明責任を果たし、着実に成果を積み上げていくことで、周りの方々が協力的になってくれました。

ーー経営される中でさまざまな逆境もあったと思いますが、特にコロナ禍はどのように乗り越えられたのでしょうか?

伊藤:コロナ禍では、マスクや使い捨て手袋が品薄になる中、当社は海外の協力工場と直接取引を行っていたため、日本国内で品薄になっているときにも欠品せず、商品を安定供給することができました。これが全国で評判になり、Webからも多くの問い合わせをいただくことができました。

また、デリバリー系の新しいサービスが出てきたことで、当社が扱っている使い捨てプラスチック製容器が急伸しました。自社ECサイトでは、営業ができなくなった飲食店からの問い合わせが増え、サーバーがダウンするほどの注文がありましたが、無事に対応し、全国の飲食店に供給を続けることができました。これにより、当社の信用がさらに向上したと思っています。

今後の新規事業や既存事業の拡大プラン

ーー歴史がありながらも新しいことにどんどん取り組まれていると感じますが、今後の新規事業や既存の事業拡大について教えていただけますか。

伊藤:現在、事業はおかげさまで順調に伸ばしていますし、M&Aに関する相談もかなり増えています。私の代になってからは、7社のM&Aを行い、そのノウハウも高まってきています。この業界には約2,000社が残っていますが、人手不足やシステム投資が大規模に行われないと事業がうまくいかないため、M&Aのニーズが高まってくると思っています。全国の同業者で経営に悩まれている会社をまとめて発展させていくことが、今の当社の最大の使命だと考えています。

株式会社折兼
(画像=株式会社折兼)

ーー伊藤様が代表に就任されたあたりから、積極的にM&Aが行われていますが、何かきっかけがありましたか?

伊藤:きっかけは、お客様であるスーパーマーケットや外食産業が巨大化し、全国の物流と営業協力が必要になったことです。ローカルの同業者は淘汰されていく中、私たちは全国展開しているチェーン店さんと取引を進めなければなりません。そのため、M&Aを通じて全国展開を進めることが必要になりました。

ーーM&Aでグループに参画する企業を選ぶ際、どのようなポイントに着目していますか?

伊藤:私たちの会社は137年間、コツコツと信頼を積み重ねてきました。そのため、グループに参画していただく企業も真面目で、お客様の課題解決のために集中できる企業が理想です。売上や利益だけでなく、お客様へのサービスの向上を真剣に取り組んでいる経営者や社員がいることが第一条件です。

ーーこれまでの取り組みで売上が倍近く伸ばされましたが、今後さらに発展させるためにIPOや追加のファイナンス戦略は視野に入れていますか?

伊藤:現状、資金面では自己資金で賄っており、ファイナンスについては大きな問題はありません。また、全国からのM&A相談も多く受けているため、相談があった際には経営者と当社の理念や価値観をしっかり話し合いたいと考えています。上場は考えておらず、意思決定のスピードを重視しています。今後も機動力を活かしつつ、経営判断をスピーディーに進めていきたいと思っています。

ーーグループがどんどん増える中で、シナジーを生み出すことやPMIが重要なポイントになりますよね。具体的にどのような取り組みをされていますか?

伊藤:当社の場合、M&A後も各企業の経営方法を生かしていくことが基本です。そのため、グループ内での経営者、特に社長たちの経営リテラシーを高めることが重要です。現在は社長会を開催し、経営の基本から数字面でのリテラシー向上や、各社の強み・弱みを共有しています。経営者としてのリテラシー向上は今後の課題となっています。

メディアユーザーへ一言

ーー最後に、全国の経営者や後継社長をはじめとする読者の皆様へ、アドバイスをお願いします。

伊藤:私は自分の父親の姿を見て、ある程度自分が社長になるだろうということをイメージして生きてきたと思います。そのため、情報のアンテナが高いと思っています。政治家の方でも、オーナーシップを持っている方が一番いいと思っていますし、私たちの業界でも、代々事業を引き継いでいる会社の方が成功していると感じています。したがって、オーナーの事業承継はいいものだと思っています。

ただ、会社を動かすのは自分だけの力ではできないので、社員の力が基本的なベースになってきます。したがって、社員の考えや意見を大切にし、対話を重ねていかないと、会社はうまく回っていかないと思っています。そのために、スピーディーに対応する部分と、時間をかけてじっくり取り組む部分の使い分けが重要だと思っています。周りを見ても、焦りすぎて失敗する方もいれば、社員の話を聞きすぎて決定ができずに失敗する方もいます。このバランス感覚をうまく持つことが大切だと思います。

ーー本日は貴重なお話をありがとうございました。

氏名
伊藤 崇雄(いとう たかお)
社名
株式会社折兼
役職
代表取締役

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