営業利益率
(画像=NicoElNino/Shutterstock.com)

企業の経営活動の成果である利益率には何段階もの指標がある。その中でも本業での儲けの割合を表す「営業利益率」に着目する企業が多い。本記事では営業利益や営業利益率の基礎知識、営業利益率を高める方法について解説する。

営業利益とは?企業経営と利益率

財務指標の中で利益率にはいくつかの種類があるが、それぞれに企業経営上における意味合いが異なる。

5段階の利益率

企業が経営活動を行う中で顧客に対してモノやサービスを売ったときの収入(売上高)から売るための活動に要した支出を除いた金額が利益である。利益額がプラスであれば黒字でありマイナスであれば赤字ということだ。そして、「どの程度の黒字(赤字)であったのか」を示すものが、売上高に占める利益額の割合を表した利益率である。一般的に企業の損益計算書上で表される利益率は、以下の5つだ。

・売上総利益率
・営業利益率
・経常利益率
・税引き前当期純利益率
・当期純利益率

THE OWNER編集部

売上総利益率とは

売上高に占める売上総利益の割合を表したものが売上総利益率である。売上総利益とは、売上高から売上原価を除いた残りの金額のことであり、粗利(あらり)という言い方をすることも多い。売上原価とは、原材料費や仕入れ商品の代金、外注費などの企業が売上を得るために直接的に要した費用を合計したものである。

営業利益率とは

売上高に占める営業利益の割合を表したものが営業利益率である。営業利益とは売上総利益から販売管理費を除いた残りの金額のことだ。販売管理費とは企業が経営活動を行うことに付随して発生する費用の合計である。売上高と連動して金額が変動する外注費用や販売手数料、消耗品費などの変動経費と売上高の多寡に関係なく一定の金額が発生する人件費や地代家賃、保険料などの固定経費から構成されている。

販売管理費のことを営業経費という言い方をすることもある。例えば、自社で1個1万円の商品を製造して販売したケースで営業利益と営業利益率を考えてみよう。

勘定項目金額
売上高1万円
原材料費7,000円
製造人件費1,000円
梱包費用500円
送料1,000円

・営業利益=売上総利益{売上高-売上原価(原材料費、製造人件費)}-販売管理費(梱包費用、送料)
     ={1万円-(7,000円+1,000円)}-(500円+1,000円)
     =500円

・営業利益率=営業利益÷売上高×100
=500円÷1万円×100
=5%

営業利益率は、企業本来の実力を測る指標として見ることができる。営業利益率は業種によっても平均値が異なる傾向だが一般的に営業利益率が高い場合、売上原価や通常発生する事業経費を差し引いた後も「その割合だけ利益が企業のキャッシュとして手元に残る」ということになる。つまり、本業で利益を稼ぐ力が高いということになる。

経常利益率とは

売上高に占める経常利益の割合を表したものが経常利益率である。経常利益とは、営業利益から営業外損益を除いた残りの金額のことだ。営業外損益とは、経営活動における金融や財務に関して発生する収益と費用の合計であり、受取利息や雑収入などの営業外収益と支払利息や手形割引料などの営業外費用から構成される。

税引き前当期純利益率とは

売上高に占める税引き前当期純利益の割合を表したものが税引き前当期純利益率である。税引き前当期純利益とは、経常利益から特別損益を除いた残りの金額のことだ。特別損益とは、臨時に発生した利益や損失の合計であり有価証券売却益などの特別利益と有価証券売却損や早期退職者への割増退職金などの特別損失から構成される。

当期純利益率とは

売上高に占める当期純利益の割合を表したものが当期純利益率である。当期純利益とは、税引き前当期純利益から法人税などの支払いを除いた残りの金額のことだ。当期純利益が企業の手元に残る正味の利益であり、それに対して企業は以下のような形で処分を行っている。

・翌期以降の事業投資
・株主への配当
・従業員への決算賞与
・社内留保

なぜ営業利益率は重要?

本業での儲けの度合いを表す「営業利益率」は、企業経営においてなぜ重要な指標なのだろうか。ここでは営業利益率が企業にとって重要な理由について説明する。

中小企業は利益率を重視した経営が望ましい

ビジネスの目的は利益を得ることだ。利益とは、売上高から経営に関わるコストを差し引いた残りの金額のことである。企業は利益を生み出すことで今後の経営に対する投資や従業員、株主に対する還元、納税を行うことが可能だ。例えば、利益率が低い企業には、以下のようなリスクが生じかねない。

・経営の環境が変化にともない原価や経費が高騰した場合に赤字に陥りやすくなる
・手元にキャッシュが残りにくくなり借り入れに依存した経営に陥りやすくなる

利益は1円でも多いほうがよいのだが、中小企業の場合は規模が小さいために市場において大きなシェアを握ることが難しく、薄利多売により総利益額を拡大する戦略はなじまないだろう。そのため、中小企業は効率の良い経営を行うことで営業利益率を高め、それにより総利益額を拡大する戦略を目指すことが望ましい。

営業利益率が重要な理由

自宅のアパートの1室において事業主が自分だけで仕入れた商品をネットで販売する事業であれば話は分かりやすい。「販売価格から仕入れ価格を差し引いた残りの金額」に「販売できた商品の個数」をかけた金額が最終的に得られる利益の総額に近い金額になるため、売上総利益率が重要な指標ということになる。

しかし、一般的な企業経営においては、オフィスを借りたり従業員を雇用したりすることが必要だ。また仕事を受注するために移動交通費や通信費用、宣伝広告費用などさまざまな経費が生じてくる。営業利益は、経営を行ううえで通常発生するコストをすべてまかなった後で一定のお金が企業の手元に残るということだ。

つまり、営業利益率は「企業の儲ける力」そのものである。営業利益率が高いと一般的に企業の経営は安定する。

営業利益率の高い企業

営業利益率の高い企業が多く存在する。例えば、IT業界や金融関連業界、不動産業界、BtoB向けのニュービジネスに関連した業界などの需要が拡大している市場向けの事業を手掛けることで成長を遂げている企業などだ。「2019年日本企業営業利益率ランキング」によると全国の主要企業の中で営業利益率が30%を超える企業は62社存在する。

営業利益率は高いほどよい?裏に潜むリスク

前節で「営業利益率は重要な指標かつ一般的に営業利益率が高ければ経営は安定する」と解説した。しかし、営業利益率が高くても経営的に安心できないケースもある。

売上総利益率(粗利率)が高い場合

売上総利益率が高ければ総じて営業利益率も高くなる。販売管理費(営業経費)は、主に売上高に連動して変動する変動経費と売上高の多寡に関係なく一定の金額が発生する固定経費の2種類だ。売上総利益率が高いことが理由で営業利益率が高い場合は、売上高が減少することで赤字に陥りやすくなる可能性が潜んでいる。

例えば、売上総利益率が80%、営業利益率が10%であるA社があったとする。A社の通常の売上高が1,000万円であった場合と、売上高が20%減少して販売管理費が変わらない場合の収益構造を比較してみよう。

勘定項目通常の売上高の場合売上高が20%減少した場合
売上高1,000万円800万円
売上総利益800万円(1,000万円×80%)640万円(800万円×80%)
販売管理費700万円
営業利益100万円(1,000万円×10%)▲60万円(640万円-700万円)

すなわちA社は▲60万円の赤字に転落してしまうのだ。例えば、A社の変動経費と固定経費の割合が「50%:50%」であった場合、変動経費部分だけで60万円以上の削減が必要になる。割合にすると変動経費全体の約17.2%(60万円÷350万円※)以上の削減を実現しない限り赤字を回避することができない。※350万円=販売管理費700万円×50%(変動経費の割合が50%のため)

一般的に10%という営業利益率は悪くはない数字だ。しかし、営業利益率の高さが売上総利益率の高さが起因している場合は、売上高の変化に注意する必要がある。

必要なことに対してお金を使っていない場合

一般的に販売管理費を削減すれば営業利益率は高くなる。しかし、むやみに減らしてはならない販売管理費もあるため注意が必要だ。代表的なものは「人件費」である。企業の活動は、従業員が担っているため、雇用が安定しないと経営も安定しない。もし従業員の仕事の成果や能力に見合った賃金を支払わずに経営を続けた場合は、会社から人材が離れていき経営は先細りしていくだろう。

ましてや日本のように総人口の減少と少子高齢化が相まって労働人口が減り続けていく社会においては、人材の流出は経営に致命的な影響を与える。人件費が適正でないことで営業利益率を高める経営は、健全であるとはいえない。売上高を拡大していくためには、売るモノやサービスの市場へのアピール、新たなモノやサービスを開発するための研究に対しても積極的にお金を使っていくことが必要だ。

現在は、経営環境が変化するスピードの速い時代のため、これらのことを怠るとライバルとの競争に負け、市場から淘汰されてしまう恐れがある。それゆえに、人件費を必要以上に削減して営業利益率を高める経営は健全であるとはいえない。

営業利益率を高める方法4選

営業利益率を高めるためには、「売上が生じる効率性を高める」「利益が生じる効率性を高める」といったことが必要だ。具体的には、以下の4つの方法が考えられる。

売上が生じる効率性を高める(販売数量を増やす)

コストが増える以上に売上高を増やすことができれば営業利益率は向上する。売上高は販売数量と販売単価の積で構成されるため、販売数量を増やすことが営業利益率を高めることにつながるのだ。販売数量を増やすためには、宣伝広告を強化し「売るモノやサービスの認知度を高める」「営業を強化して販売できる先を増やす」などの対応が効果的だ。

販売単価を下げることによって販売数量を増やすことも考えられる。なぜなら販売単価が下がっても総売上高が大幅に増加すれば営業利益率の向上につながるからだ。販売数量を増やすことは、大量仕入れによる原材料や仕入れ商品の単価を引き下げる効果も生み出す。それにより売上総利益率が向上すれば、営業利益率も向上する。

売上が生じる効率性を高める(販売単価を高める)

販売単価を上げることで総売上高を増やすことができれば営業利益率は高くなる。つまり値上げを行うということだ。しかし、値上げは慎重に行う必要がある。顧客が売るモノやサービスに対して値上げに見合うだけの価値を感じなかった場合、販売数量が大幅に落ち込み、総売上高の減少で営業利益率が低下してしまうことがあるからだ。

販売単価を上げるのであれば顧客が納得する値上げの理由、つまり付加価値を明確にする必要がある。

利益が生じる効率性を高める(経費の削減)

販売管理費を少なくする、すなわち経費を削減することにより営業利益率は高くなる。経費には変動経費と固定経費があるが、固定経費の削減が営業利益率を高めることに対してより効果的である。なぜなら売上高に関係なく一定の金額が発生する固定経費の水準が下がることで利益が出やすくなるからだ。固定経費を削減することに関しては以下のような内容が考えられる。

・社内での消費を節約することによって水道光熱費や通信費を減らす
・契約の見直しを行うことによって地代家賃や保険料を減らす  など

一方、安易に減らしてはならない固定経費もある。例えば、人件費は給料カットなどによる一人当たりの人件費の削減を行った場合、人材の流出につながるだろう。外注費や販売手数料などの変動経費に関しても、業務の効率化を実現させたうえで内製化を進めることなどにより売上高に占める割合を減らすことができれば、営業利益率は高くなる。

利益が生じる効率性を高める(販売構成割合の変更)

一般的に企業には何種類かの販売商品がある。その中の営業利益率の高いモノやサービスの販売構成割合を高くすることで企業全体の営業利益率を高めることができる。例えば、営業利益率が8%の商品Aの構成割合が70%、営業利益率が10%の商品Bの構成割合が30%だった場合、全体での営業利益率は8%×0.7+10%×0.3=8.6%だ。

しかし、構成割合を商品Aが30%、商品Bを70%に変えた場合、全体での営業利益率は8%×0.3+10%×0.7=9.4%に改善される。利益率の高いモノやサービスの販売に力を入れていくことで会社としての営業利益率が向上する可能性が高まるだろう。

営業利益率を高めた企業事例3選

営業利益率は、環境の変化に伴い変わっていく。一方企業努力を行うことで営業利益率を高めていく必要がある。

事例1 値上げによって営業利益率を改善/ヤマトホールディングス株式会社

物流業界大手のヤマトホールディングス株式会社は、業界全体における絶対的な運転手不足により従業員の残業代や外部委託費が高騰し収益性が悪化していた。そのため、2017年に配送料の値上げを断行。平均的な値上げ幅は18.6%であり、それにより荷物の取り扱い総量が6%落ち込んだが、総売上高が8%増加し、営業利益率に関しては、2017年度は-1.8%の赤字だったのが、2018年度は3.0%の黒字に改善された。

値上げにより運転手の労働条件が改善され、新たな人員を確保できたことで安定した荷物の配送体制を維持することが可能となった。結果的に値上げ後に荷物の取り扱い総量の落ち込みを抑えることにも成功した。

事例2 経費の削減によって営業利益率を改善/株式会社リンガーハット

長崎ちゃんぽん専門店を全国に展開する株式会社リンガーハットは、バルブ経済崩壊後にデフレが進んだことで販売価格の安い牛丼チェーンなどに顧客を奪われた。2004年度からの6年間に4度赤字決算に陥るなど収益性が悪化したため徹底した経費削減(コストカット)を断行。コストカットでは、以下のような内容のことを行った。

・事業場や工場の集約を行ったことによる事業経費の削減
・作業の効率化に取り組み1店舗当たりの人員を削減したことによる人件費の削減
・賃料の安いフードコート等への出店を増やしたことによる新規出店コストの削減
・製造機械の内製化を行ったことによる設備関連経費の削減

経費の削減と同時に行った「国産野菜100%への切り替え」「野菜の増量」などによる値上げも功を奏し、2009年度には3.0%だった営業利益率が2016年度には7.7%にまで改善された。

事例3 販売構成割合の変更によって営業利益率を改善/セブンイレブン

コンビニエンスストアー大手のセブンイレブンは、業界内での競争激化により収益性が伸び悩み、その状況を打破するためにプライベートブランドの開発に取り組んだ。メーカーの開発商品(ナショナルブランド)はメーカー側の宣伝広告費などが上乗せされることで仕入れ価格が高くなり商品そのものの利益率も低くなる。

一方で自社開発商品(プライベートブランド)は自社の売り場で自社の商品を販売することが可能なため宣伝広告費が不要であり、商品そのものの利益率を高くすることが可能だ。セブンイレブンは、2013年度よりプライベートブランド商品の柱である「セブンプレミアム」の品ぞろえ強化を推し進めプライベートブランド商品の売上高を大幅に拡大することに成功した。

それにより、2012年度は30.2%だった営業利益率が2013年度は31.3%に向上し、その後も業界トップクラスの営業利益率を維持し続けている。

営業利益率に着目し、経営の効率化を図ることが企業を存続させるカギ

営業利益率は、金融機関や投資家などからも「企業が本業で利益を生み出す力の度合いを表すもの」として注目される指標である。収益性の高さは経営を安定化させ、企業の存続へとつながっていく。「営業利益率を重視した経営を行う企業は、生き残る可能性が高くなる」といっても過言ではないのだ。

文・大庭真一郎(中小企業診断士、社会保険労務士)