創業1世紀を超え、製造許可が必要な第一種圧力容器などでトップを走る亀山鉄工所(仙台市青葉区)は、長年のノウハウを生かした新型納豆蒸煮釜の全国展開を図っている。
設備導入後に問題が生じた際の対応の早さやメンテナンスでもユーザー評価が高く、東北・関東圏では工事まで一貫して完了できるのが強みだ。19年に新型納豆蒸煮釜を開発して以降、同社の機敏な対応力を評価した納豆メーカーが同社製品を他社にも紹介するなど、好循環が生まれている。
実は同社は納豆蒸煮釜のパイオニア的存在だ。同社開発室の玉手淳次長は、「昭和30年代に遡り、同じく仙台市に社屋を構える納豆菌製造・宮城野納豆製造所の2代目社長と当社の先々々代が納豆釜(三浦式回転型納豆製造缶)を開発し特許を取得した」と歴史を説明する。
これは、現在普及している納豆蒸煮釜の原型に当たるものだ。同社はその後、石油プラント工事といった他分野へ注力するなど、さまざまな理由で食品業界向け設備から退いたが、昨今の蒸煮釜製造大手の撤退を受け、製造中断後もメンテナンスを継続していたことによる信頼とノウハウを有する同社に製造再開を望む声が寄せられた経緯がある。
〈省力化・作業性向上の新型を全国展開へ、工事関係・継続的なアフターケアの全て担う〉
新たに納豆蒸煮釜を開発するに当たっては、製造許可が必要で供給できるメーカーが決して多くない第一種圧力容器を手掛けてきたノウハウを引き継ぎつつ、昨今の納豆製造のニーズに照準を合わせた。
その新型自動圧力蒸煮釜「XJK」シリーズは、手動だと重労働かつ危険が伴う蓋の開閉を自動化したほか、電動傾動方式を採用し釜を任意の角度に保持できるようにし、省力化・作業性の向上で人手不足に配慮する。PLC(プログラマブルロジックコントローラ)によるプログラム制御で操作ミスも防ぐ。同シリーズは納豆に限らず、煮物やラーメンスープ、レトルト製造など幅広い用途に対応できるという。
また、一般的に食品設備を新たに導入すると、工事は他の業者に依頼しなくてはならないケースが多く、工場現場の手間になる。一方、同社は設計・開発に加え、設備の据え付けや既設の撤去といった工事関係、継続的なアフターケアの全てを担える。ただ関東以南の場合、工事まで対応することは困難であるため、全国の大豆加工事業者にパイプがあり、選別機などを手掛ける原田産業(埼玉県上尾市)と協力関係を構築し、全国からのオーダーに応えていく構えだ。
納豆の日配という特性上、同社の機敏なアフターケアは工場長などの信頼を得ている。玉手次長、設計部の庄司静真氏は転職組で、2人とも「カメヤマ(同社の愛称)の『何かあったらすぐに行く』という、そのスピード感には驚いた」と口をそろえる。「創業からの社風なのだろう」(庄司氏)とも話す。
食品向け機器では蒸煮釜のほかにも、対象物を温める熱交換器を取り扱ってきたことから、納豆菌をかき混ぜて昇温、適温を維持したり、時間が経つと死滅する納豆菌の制御が可能な機器についても、新たにシステム構築し納めている。
今後の戦略について、第1種圧力容器で培った技術を活かし、製麺や製餡、レトルト調理といった他の食品分野にも進出する考えだ。
〈大豆油糧日報2024年6月27日付〉