〈レタス端材由来の製品も開発、未利用資源活用でSDGsにも貢献〉
日油(株)(沢村孝司社長)はこのほど、小麦粉製品向けの「ルテイン配合改質剤」シリーズを発売した。
ルテインは植物に含まれる色素の一種で、一般的には目を保護する成分としてサプリメントなどに利用されている。同社はルテインが小麦粉のたんぱく質に作用し、小麦粉を使った製品の食感を変えることを解明。パン・麺・菓子向けの「ルテイン配合改質剤」シリーズ6品を開発した(特許出願済)。
同社によると、ルテインを食品の改質剤に利用するケースは「国内で唯一」。少量で効果を発揮することなどから、従来の改良剤からの置き換えによるコストダウン効果などを訴求していく。通常は廃棄されるレタスの端材を使用した製品もラインナップしており、食品ロスの削減などSDGsの観点からもPRしていく考えだ。
6月19日に開催した発表会で機能食品事業部食品研究所の豆田祐二所長は、「今後も食感改良によるおいしさの実現のみならず、さらなる未利用資源の探索・活用による環境負荷低減や、(ユーザーの)課題解決に貢献できる食品機能材の開発に取り組んでいく」などと意気込みを語った。
〈開発経緯・ルテインの作用の解明〉
日油は主力の機能性油脂事業で培った技術を活用し、小麦粉製品向けの食品機能材を展開している。そうした中、同社は生産時点で廃棄される規格外の食品=未利用資源に着目し、「未利用資源のアップサイクルへの貢献」「日油ならではの製品開発」を切り口に製パン・製菓用改質剤の開発に着手した。
レタスの端材やバナナの皮、規格外のニンニクといった未利用資源を調査する中で、ルテインが小麦粉生地の物性を変える可能性を発見した。大阪産業技術研究所との共同研究で、ルテインがたんぱく質に吸着する性質を持ち、小麦グルテン内のたんぱく質分子間の相互作用を変化させることを確認。ルテインを添加することで、小麦グルテンの弾性・粘性が向上することを発見した。
具体的には、▽グルテンのネットワークが強固になりうどんのコシが向上する、▽たんぱく質の配列が均一になるため、パン生地の作業性向上や焼成後の物性改良につながる――などの効果が明らかになった。
〈「ルテイン配合改質剤」シリーズ〉
製菓用「フワキープ」は既に大手メーカーで採用されており、他の製品も提案を進めている。なお、製パン用「LP-V」はレタスの端材を活用した「環境配慮型製品」で、その他製品にはマリーゴールド由来のルテインを使用している。
〈1〉タフィー〈麺用〉
小麦粉とミックスしやすい粉末状の製品で、少量で麺のコシ向上効果を発揮(推奨添加量は小麦粉に対し0.5~1.5%)。チルド保管でもコシが持続することが確認されている。「タフィーは“着色料”表示になるため既に使用している着色料から置き換えるだけで食感改良ができ、新たな添加物表示が必要ない。この点を評価いただき、中華麺メーカーからの採用が内定している」(担当者)。
〈2〉フワキープ〈製菓用〉
鶏卵と一部置き換えて使用するペースト状の製品(水で希釈して使用)。菓子のボリュームやソフトさを損なわずに「しっとりとした食感」に仕上がる。「現在の鶏卵相場が一時より落ち着いていることを踏まえると、(卵とフワキープを利用した場合の)コストは同等程度だが、食感などコスト以外の面でも評価をいただいている」。
〈3〉メルティソフト
発酵バターのような風味を付与するペースト状の製品で、「ソフトで良好な口どけ感」を実現する。ペースト状のため分散性が良く、作業しやすいことも特徴だ。
〈4〉プルミエソフト〈製パン用〉
「しっとりソフトな食感」を付与。食感の経時変化を抑制し、賞味期限延長にもつながる。少量の添加で効果を発揮(推奨添加量は0.5~1.5%)。分散性が高いため、中種から本捏までどのタイミングでも使用可能だ。
〈5〉ロールトップ
パンのケービング(横折れ)や、表面のシワを抑制する。こちらも少量の添加(推奨添加量は0.5~1.5%)で効果を発揮する。
〈6〉LP-V
レタス粉末を配合した製品。パン生地の物性や食感を改良する効果があり、ペースト状のため分散性が良好。少量の添加(推奨添加量は0.5~1.5%)で効果が得られる。植物工場で発生するレタスの端材を利用しており、SDGsへの貢献を謳える点も特徴だ。なお、経時耐性はない点に留意。
〈米麦日報2024年6月21日付〉