食品産業新聞社
(画像=食品産業新聞社)

かどや製油は6月5日、オンラインで増収増益となった24年3月期通期決算の説明会を開催した。

久米敦司社長は「原料価格の高騰などによる影響を、適正価格の確保と経費の抑制により吸収した結果」と総括した。25年3月期は増収減益を計画している。原料価格の高止まりと円安傾向で厳しい事業環境が続く見通しとする中、「業界ナンバーワンのプレゼンスを維持・強化・拡大すべく、マーケティング投資を再活性化していく」と方針を語った。

さらなる価格改定の可能性については、「今後の為替動向や原料、製造コストの上昇幅、消費者や市場の動向を慎重に見極めながら、要否について判断していきたい」とした。

通期実績の概況は、高野純平執行役員管理本部長が説明した。24年3月期の連結売上高は5.9%増の356億円、経常利益は5.5%増の34億円となった。増収の要因として、販売価格の是正の取り組みや輸出の販売増を挙げた。増益要因は、原材料価格の上昇で売上原価は増加したが、販管費の減少や適正価格販売に注力したことにより、増収となったことを挙げた。

セグメント別では、ごま油事業、食品ごま事業ともに増収増益となった。ごま油事業では、家庭用の販売数量は、販売価格の是正で単価が上昇したものの、数量減が大きく、売上高も減少した。業務用の販売数量は減少したが、単価上昇により、売上高は増加した。輸出用の販売数量は主力である北米市場の成長を着実に取り込んだことで増加し、売上高も増加した。

食品ごま事業は、23年10月からグループ内の業務効率化のため、家庭用食品ごまとねり胡麻は100%子会社のカタギ食品のブランドに統合し、販売を一本化している。両社ともに販売価格の是正に努め、増収となったものの、販売数量は両社合計で約6%減となった。なお、25年3月期の業績見通しについては、売上高は7.9%増の385億円、経常利益は23.7%減の25億円の増収減益を計画している。

〈脱脂ごま利用の加工食品開発を複数協議、業務用は新しいメニュー・レシピ提案を強化

中期経営計画の進捗については北川淳一執行役員経営企画部長が説明した。そのうち、アップサイクル事業の取り組みについて、現在、主に飼料用に販売している搾油後の脱脂ごまを利用した加工食品の開発に向けて、複数のパートナー企業と具体的な協議を開始しているとした。プロテインバーやグラノーラなどの共同開発を検討しているという。

D2C事業については、「ごまラボ」と「セサミウェブ」の会員数が5万人を突破しており、6月末に「DHA&EPA+ごまセサミンプレミアム」を発売する。海外事業の強化も着実に進めている。同社のごま油の輸出金額は約60億円で売上高の17%を占める。約9割が北米向けだ。米国にはごま油メーカーはなく、日本、メキシコ、台湾、インドなどからの輸出品で構成されている。同社の米国でのシェアは約22%だ。

米国ごま油市場は拡大傾向で、18年の1.3億ドルから22年には1.6億ドルと着実に成長しているといい、「新たな需要を掘り起こすため、加工食品メーカー向けの拡販を視野に、米国での委託充填スキームの実証実験を開始している」とした。

なお、足元の原料状況については、「21年以降、右肩上がりの高騰を続けている。特に昨年度は主産地アフリカが天候不順で減産し、スーダンでの内戦など地政学リスクが顕在化し、一時期2,000ドルを超えた。足元では1,850ドル程度とやや軟化している。相場の見通しは主産地の作柄が影響し、秋頃の収穫がどの程度になるか見通すのは時期尚早だが、異常気象が発生しやすい環境、地政学リスクが高まっている背景、ごま油やごまの世界需要は拡大傾向にあるので、需給は引き締まった状況が続き、大幅な価格下落は想定しにくい」と見通しを語った。

マーケティング投資の具体的な取り組みについては、「純正、濃い口、健やかごま油、太白といったバラエティがあるが、油種ごとにキャンペーンを実施する形で、きめ細かくマーケティング施策を実施していく。小売店に対しても価格改定後の販売価格に合わせた販売促進の提案を推進していく。業務用では引き続き、ごま油を使った新しいメニューやレシピの提案を強化していくことで、市場自体を底上げしていきたい」とした。

〈大豆油糧日報2024年6月7日付〉