〈出荷頭数の減少で相場は580~590円の展開か〉
ことしのゴールデンウィーク(GW)は、アフターコロナ社会となり、全国各地の観光地・行楽施設では多くの人出に恵まれ、外食需要は好調だったとされている。対照的に小売需要はパッとせず、外出や外食への支出増の反動から、日常使い品の豚肉の売行きは都市部・地方ともに振るわなかったもようだ。4月後半のパーツの荷動きも、依然としてウデ・モモのスソ物中心となり、ロースをはじめ中部位は、GW直前になっても改善しなかったという声が多い。一方、枝肉相場は出荷頭数が少ないなかで、スソ物を確保するため枝肉を集めることとなり、関東3市場の枝肉相場は4月4週目に600円台(上物税抜き)を付け、最終日の4月30日には639円に達した。
5月は基本的にGWの出費の反動で消費者の節約志向が一段と強まる流れにある。この状況は本来、豚肉にとって追い風といえるはずだが、生活防衛意識の高まりで、豚小間など単価の安い商品に集中するとみられ、中部位の販売は苦戦を強いられそうだ。これに対して、5月の全国出荷頭数は昨年の猛暑の影響で少ないとみられており、需要とかい離した相場展開となりそう。もっとも、この末端需要の弱さが中旬以降の相場に影響し、500円台半ばまで値下がりする可能性も高い。このため、前月から上げても例年よりは小幅な上昇になるとみられ、5月の平均相場は上物税抜きで580~590円と予想される。
〈供給見通し〉
農水省の肉豚出荷予測によると、5月の肉豚出荷頭数は前年同月比2%減の133.2万頭としている。GW明けの2週目は1日当たりの出荷が多いが、3週以降は徐々に減少し、下旬には1日当たり6万頭前後の日も出てくるとみられる。産地では昨年の記録的な猛暑による受胎率の低下の影響がみられ、当初の出荷計画を1割程度下方修正している生産者も増えているようだ。地域によってはPED(豚流行性下痢)の発生も聞かれる。
また、気象庁の季節予報によると、向こう1カ月(5月4日~6月3日)の気温は全国的に平年よりも高い日が多いとしている。出荷適齢を迎える母数(在庫)自体が少ないうえに、暑熱による増体不良のダブルパンチとなり、今後の出荷・上場頭数の動向が枝肉相場にどう影響するか注目されるところ。農畜産業振興機構の豚肉需給予測によると、5月のチルド豚肉の輸入量は3.2万t(前年同月比8.7%減)、フローズンが4.7万t(同13.8%減)と、ともに外貨高・為替の影響で前年実績を下回るとみられ、当面、市中在庫のひっ迫感が続きそうだ。
〈需要見通し〉
輸入量の減少とコスト高もあり、国産豚肉の需要は基本的に堅調と予想される。しかし問題は“売れる部位”だ。消費者の生活防衛意識は根強く、量販店で売れるのは単価の安い豚小間などが中心で、ロースの切り身やバラのスライスといった比較的単価の張る商品の売行きは弱いようだ。実際にGWが明けた後も末端からの発注は少なく、スソ物やひき材など安価な商品に集中しているという。ロース、バラに加え、在庫ハンドリングの良いカタロースの荷動きさえも弱く、いまの豚価水準では凍結回しなどできないため、問屋筋では価格対応やスソ物とのセットで何とか納入してもらっている状況だ。それでも、今後の末端消費次第では投げ玉が発生する可能性もある。ひき材も大貫正肉では700円台後半の加熱相場となっている。解凍品を含めた輸入品もコスト高で価格訴求が難しく、中間流通にとっては国産・輸入ともに厳しい商いとなりそうだ。
〈価格見通し〉
連休明け後の5月2週目は出荷・上場頭数が増加する半面、前述の通り、中部位を中心に需要が弱く、補充買いの動きも少ない。5月は例年、出荷頭数の減少に伴いジリ高で推移するパターンとなるが、ことしは枝高・パーツ安による逆ザヤ拡大から、中旬にかけて相場が下落する可能性があり、中旬と下旬の価格差が大きいとみられる。現段階では、上旬と下旬は上物税抜きで600円前後、中旬は500円半ばまで下げることで、月間平均580~590円前後と想定される。
〈畜産日報2024年5月8日付〉