「D2C」という言葉が流行るはるか以前から、オリジナル商品を自社ECサイトで販売し、お客さまとのつながりを持ってブランドを成長させてきた企業さまは少なくありません。
ある企業さまはミカンの6次産業を実現。また別の企業さまは、ビールのサブスクリプションで多くのファンを獲得することに成功しています。
自社ECサイトの売り上げを伸ばしてきた企業さまは、ネットショップの運営においてどのようなことを大切にしているのでしょうか。広告やSEOといった施策レベルのお話ではなく、自社ECサイトを伸ばすために重視している考え方や、EC事業に向き合う心構えがあるはずです。
そこで今回、自社ECを伸ばしている株式会社早和果樹園さま、株式会社クロシェさま、有限会社フレックスさま、株式会社ヤッホーブルーイングさま、株式会社小島屋さまの5社にインタビューを行いました。こちらの5社は「第13回 ネットショップグランプリ」を受賞し、業界関係者からも高く評価されています。これから自社ECを伸ばしたい企業さまは、自社ECで成功した “先輩企業”の言葉からヒントを見つけてください。
「第13回 ネットショップグランプリ」の表彰式のレポート記事も公開しています。各社の受賞理由や、受賞の喜びの声などを紹介していますのでこちらもぜひご覧ください。
目次
自社ECは「コツコツ継続」が大事
和歌山県産「有田みかん」の栽培から加工食品の製造販売まで手がける株式会社早和果樹園さま。生産から加工、販売まで行う6次産業を実現し、地域経済の活性化や雇用創出にも貢献している同社は、これまで数々のメディアに取り上げられてきたほか、2020年には第21回全国果樹技術・経営コンクールで最高賞の「農林水産大臣賞」を受賞するなど行政からも高く評価されています。
早和果樹園さまの前身は、1979年に7戸のミカン専業農家によって創業した「早和共撰組合」。2000年に法人化し、その7年後の2007年に自社ECサイトを立ち上げました。
そこから14年間にわたり、自社ECサイトの売上拡大に努めてきた秋竹俊伸社長は、ご自身の経験を振り返りながら「自社ECを伸ばす秘訣は、地道な施策をコツコツと積み重ねること」と語りました。
自社ECサイトはECモールとは違い「コツコツ感」が大事です。少しでも時間があればサイトを更新し、何かのネタがあればメルマガを打つ。集客、接客、追客の施策をコツコツと継続していたら、ネットショップグランプリを受賞できるほど、思わぬ高みに登っていた。そんな感覚です。時間はかかるけれど、労力をかけた分だけ成果が返ってくるのが自社ECサイトの良いところ。これから自社ECに取り組む人は、腐らずにコツコツと前を向いて進んでいけば、いつか良い景色が見えると思います(秋竹社長)
早和果樹園さまは自社ECサイトで「早和果樹園のストーリーを伝える」ことも意識しているそうです。現在、自社ECサイトの運営を担当している青山航大さんは、自社ECサイトの役割を次のように語りました。
自社ECサイトはECモールよりもお客さまとの距離が近く、直接コミュニケーションを取りやすいことがメリットだと思います。早和果樹園のことを好きになってもらえるように、モノづくりのストーリーや弊社の理念をお客さまに伝えることを意識して自社ECサイトを運営しています(青山さん)
自社ECリニューアルの成功要因は「お客さまを理解」したこと
パジャマの企画から製造、販売まで手がける製造小売業の有限会社フレックスさま。2002年の設立当初からEC事業を手がけており、現在は「パジャマ屋」の屋号で自社EC、楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピングなど複数のネットショップを運営しています。
同社は2020年4月に自社ECサイトをリニューアルオープンし、自社ECの売り上げをリニューアル前の2倍以上に伸ばしました。
自社ECサイトのリニューアルでこだわったことの1つは、商品を探しやすく、選びやすいサイトを作ること。素材や形で商品を絞り込めるほか、パジャマを着用するシーンやギフトのシーンごとに商品を選べるように特集ページを制作。さらに、「私たちが大切にしていること」というコンテンツページを作り、ものづくりへのこだわり、バックヤードの取り組み、スタッフの人となりなどを紹介しています。
商品を大切に作っていることや、商品をお手元に届けるまで大切に作業していることを伝えるなど、購入前の不安を取り除くことを心がけたそうです。
EC担当の高柳さんは、自社ECのリニューアルが成功した要因は顧客のペルソナを考え抜き、顧客が求めているコンテンツを作ったことだと語りました。
商品を試着できないECサイトでは、文字と画像で商品の魅力や特徴を伝えなくてはいけません。商品の魅力を伝えるコンテンツを作る上で大事なことは、「お客さまは、どのような人なのか」「何を求めているのか」を考え抜くことだと思います。お客さまのことをしっかり理解できていないと、どのようなコンテンツを作れば良いか判断できません。自社ECサイトのリニューアルが成功したのは、お客さまのことを理解し、お客さまのために何をすべきかを、スタッフみんなで考えたからだと思います(高柳さん)
自社ECサイトをリニューアルする以前は楽天市場がEC売上の7割以上を占め、自社ECサイトの売り上げは2割以下にとどまっていました。しかし、現在は自社ECの売り上げがEC事業の約4割まで拡大し、EC事業全体の成長に貢献しているそうです。
リニューアル後は自社ECサイトの売り上げが一気に伸びたわけではなく、じわりじわりと伸びているとのこと。その点について同社の熊坂泉さんは、自社ECサイトの運営は「諦めずに継続すること」も重要だと語りました。
自社ECサイトをリニューアルしてから、売り上げがじわじわ、じわじわと伸び続けています。ECモールと違い、自社ECサイトの売り上げは急激には伸びません。大切なのは、お客さまのために必要な施策を続けること。時間がかかっても諦めずに続けていれば、いつか、広告に頼らなくてもお客さまが来店してくださるお店を作ることができると思います(熊坂泉さん)
店舗スタッフがオンラインでも活躍できる環境を整備
レディースアパレルブランドの「farfalle(ファルファーレ)」「TRECODE(トレコード)」「ENTO(エント)」「JasminSpeaks(ジャスミンスピークス)」を展開している株式会社クロシェさま。直営店10店舗を運営しているほか、全国の百貨店でポップアップショップを開くなど、対面での接客を軸にブランドのファンを増やしてきました。
クロシェさまは2020年春以降、新型コロナウイルス感染拡大の影響で直営店や百貨店催事での販売を行いにくくなったことを受け、店舗スタッフさんによるオンライン接客を強化しています。2020年4月からインスタライブを開始したほか、2020年10月にはコーディネート投稿プラットフォーム「STAFF START」を導入。こうした店舗スタッフによるオンライン接客を起点としたECサイトへの送客を強化した結果、2020年度の自社ECサイトの売上高は前年比約1.5倍に増えました。
EC事業の推進を担当している村岡乃里江さんは、実店舗を持つ企業が自社ECを伸ばすには、店舗スタッフがオンラインでも活躍できる環境を整えることが重要だと語りました。
弊社のように実店舗中心の企業がEC事業を伸ばすには、店舗スタッフとECサイトの連携は欠かせません。しかし、店舗スタッフに対して、ライブコマースやSNS投稿などをただお願いするだけでは上手くいかないと思います。実店舗の仕事が忙しくて手が回らない場合もあるでしょうし、SNSの投稿に苦手意識を持っている人もいるからです。重要なのは、新しい働き方を促す環境を整えること。オンライン接客ツールの導入や、人事評価制度の見直しを含めて、店舗スタッフがオンラインでも活躍しやすい環境を作ることが必要だと考えています(村岡さん)
自社ECサイトは「ファンづくり」の場所
クラフトビールブランド「よなよなエール」などを展開している株式会社ヤッホーブルーイングさま。スーパーマーケットやコンビニといった一般流通への卸売りが中心ですが、1997年の創業当初から楽天市場に出店し、2007年には「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー」を受賞するなどECにも力を入れているビールメーカーです。
2013年には「よなよなの里 本店」(自社ECサイト)を開設し、お試しセットやギフト商品などを販売。国内では非常に珍しいクラフトビールのサブスクリプションサービス「よなよな月の生活」を自社EC限定で実施し、大成功を収めています。
同社は2019年7年に自社ECサイトをリニューアルオープンしました。ECサイトのトップページに「読み物」のページを設置し、スタッフさんが書いたビールやイベントなどに関する記事を高い頻度で配信するなど、コンテンツ重視のECサイトへと刷新。ECサイトの役割を「販売」に限定せず、作り手としての思いや、クラフトビールの情報を発信する場所へと生まれ変わらせました。
同社は卸売りを行うメーカーゆえに、自社ECサイトでは値引きを行えないなど制約も少なくありません。そういった中で、自社ECサイトは単なる販売チャネルではなく「ファンづくりの場所」と位置付けているそうです。
自社ECサイトでは常連さんを増やすことや、ファンを作ることに重点を置いています。売り上げを伸ばすために広告を打つとか、デジタルマーケティングの施策を打つよりも前に、とにかくファンづくりに専念してきました」(望月卓郎さん)
2020年はリニューアル効果に加え、コロナ禍でECの需要が高まったこともあり、自社ECサイトの売上高は前年比1.5倍に拡大しました。飲み比べセット「クラフトビールはじめてセット」の注文数は前年比5倍、「よなよな月の生活」の新規入会者数は前年比2倍に増えたそうです。
ファン作りを大切にしている同社は、クラフトビールの工場見学や、ビールファンが集うイベント「超宴」を開催するなど、オンライン・オフラインを問わず顧客接点の創出に取り組んでいます。同社は自社ECサイトの役割として、さまざまな活動を通じて接点を持った顧客とつながりを持つためのプラットフォームを目指しているそうです。
何かのきっかけで会社や商品のことを知ってくださった方が、自社ECサイトを訪れて会員登録していただけるのが理想です。そのために自社ECサイトのコンテンツを拡充し、さまざまなサービスを提供しています。ただし、会員登録してくださったすべてのお客さまに、その場で商品を買っていただこうとは思っていません。まずはお客さまとのつながりを持ち、何かのきっかけがあったときに、実店舗であれECサイトであれ、商品を買っていただける関係性を維持しておくことが重要だと思っています(望月さん)
本店とモールは根本的に違う。自社ECサイトこそ戦略が大事
1948年から東京上野・アメ横で店舗を構え、ドライフルーツやナッツを販売している株式会社小島屋さま。2004年に楽天市場へ出店してEC事業を開始し、モールECで大成功を収めた同社は、2010年から自社ECサイトにも注力しています。
2014年と2020年の2度のリニューアルを経て、自社ECサイトの売上比率をEC事業全体の約3割まで拡大させた小島屋さま。モールECと自社ECの両方で実績を持つ同社の小島靖久さんは「自社ECサイトこそ戦略が重要」と語りました。
ECモールで売り上げを伸ばすには、広告やポイント、安売りなどの施策をひたすら実行するのが王道です。一方で自社ECサイトは、広告や安売りを仕掛けたからといってお客さんが来てくれるとは限りません。自社ECで必要なことは、「何をどう売るのか」「お客さんをどのように集めるのか」といった戦略を立てること。そのために、例えば3C分析などをしっかり行って、自社のポジショニングやターゲットを明確に定めることが売り上げを伸ばすポイントだと思います(小島さん)
「第13回ネットショップグランプリ」を受賞した際、スマホサイトの導線設計が高く評価された小島屋さま。スマホサイトが評価されたことに喜びながらも、ECサイトの導線改善は道半ばであることも強調しました。
ECサイトの導線設計は、最終的にはカート周辺が重要だと思っています。カートに進んでもらうための仕掛けや、カゴ落ちさせない工夫など、細かいところはまだまだ突き詰めていかなくてはいけません。この辺りはカートシステムの機能や仕様にも依存するので、フューチャーショップさんにも期待したいところです(小島さん)
futureshopへの感想は?率直なご意見をうかがいました
今回インタビューした5社は、futureshopで自社ECサイトを構築していただいた企業さまです。インタビューではfutureshopに対する各社さまの感想もうかがいました。その一部をご紹介します。(※2021年4月10日受賞当時の情報)
株式会社早和果樹園さま
秋竹さま
有限会社フレックスさま
高柳さま
株式会社クロシェさま
村岡さま
株式会社ヤッホーブルーイングさま
望月さま
株式会社小島屋さま
小島さま
まとめ
今回のインタビューで皆さんが語ってくださった内容は、自社ECを伸ばしてきた経験に裏打ちされたものであり、地に足のついた言葉の重みを感じました。コツコツと施策を続けること、店舗スタッフがオンラインでも活躍できる環境を整えること、顧客のことをしっかり理解すること、ファンづくりに取り組むこと、オリジナルの戦略を持つこと。5社が店舗運営で大切にしているこれらのことは、自社ECを伸ばしていきたい企業さまのヒントになるのではないでしょうか。
株式会社フューチャーショップは自社ECやD2CのためのSaaS型プラットフォーム「futureshop」と、オムニチャネルを実現する「futureshop omni-channel」を提供しています。自社ECサイトの新規立ち上げや、ECシステムのリプレイスを検討している方はお気軽にご相談ください。
D2Cについては、こちらの記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
【2023年最新版】D2Cとは?概要・導入するメリット・成功のためのマーケティング施策までを紹介
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