2023年ベトナムのクロスボーダーM&A動向

日本M&Aセンターのコンサルタントは日本企業によるベトナム企業との資本業務提携のお手伝いを十数年前から行っており、現在ではベトナム現地に子会社を構え、多くのケースを見てきました。 ここからは、近年の傾向についてお伝えします。

ソフトウェア・情報サービス業が減少し、食品関連が急増

2023年の20件ほどのM&Aの業界別にみると、2022年までは毎年10件近くあったソフトウェア・IT企業へのM&Aが減り、2023年は半分程度になっています。経済成長により人件費が上がり、廉価なオフショア開発技術者の獲得を目的としたM&Aが一段落したことが理由の1つと推測します。 同様に、物価高と人件費増を理由に、製造業へのM&Aも減少傾向にあります。

特筆すべきは、食品卸企業へのM&Aが急増し、もっとも件数が多いカテゴリーになっている点です。 日本とほぼ同じ人口を有しているのに国民の年齢中央値が若い(約33歳※4)ベトナムは、2035年まで人口が増加すると言われており、人口減による国内消費減少に苦しむ日本とは対照的な存在です。日本国内の食品製造業、食品流通業がベトナムの成長マーケットを取りにいく流れは、しばらく続くと思います。

今までベトナムM&Aにおいて人気があった不動産・建設業界は先述の国内経済不況によって投資が見送られたと思われ、2023年は公表ベースで事例を見つけることができませんでした。 ※4 Median age of population(United Nations)

ニュースで読む2023年ベトナムのクロスボーダーM&A

ここからは、日本M&AセンターのM&Aマガジンから、日本企業とベトナム企業におけるクロスボーダーM&Aのニュースを引用して、2023年の事例として紹介します。

イオンフィナンシャルサービスとPTFの事例

イオンフィナンシャルサービス株式会社(8570)は、Post and Telecommunication Finance Company Limited(ベトナム ハノイ、以下PTF)の持分を取得し、完全子会社とする持分譲渡契約の締結を決定した。 〔中略〕 イオングループでは、ベトナムを海外戦略の重要国と位置付け、小売事業の店舗網を拡大している。 現地で個人向けローン事業を展開するPTFを子会社化することで、ベトナムにおける事業の成長を図る。

引用元:イオンフィナンシャルサービス、ベトナムの金融企業PTFを完全子会社化へ(M&Aマガジン、 2023年10月20日付)

双日とDaiTanVietの事例

双日株式会社(2768)は、双日アジア会社および双日ベトナム会社と共同で、ベトナムの業務用食品卸 DaiTanViet Joint Stock Company(ベトナム ホーチミン、以下「DaiTanViet」)の全株式を取得した。 〔中略〕 ベトナムは経済成長にともない、近代的な小売業態が急速に発展している。 DaiTanVietの買収で、双日は、総合食品卸の形成と、バリューチェーンの強化を図る。

引用元:双日、ベトナム業務用食品卸大手DaiTanVietを買収(M&Aマガジン、 2023年11月22日付)