インサイダー情報の取扱い
(画像=Mikbiz/Shutterstock.com)

一昨年(2012年)、大手証券会杜から一部の投資家へインサイダー情報が漏えいしている問題が発覚し、世間の耳目を集めた。

これまでの事例を踏まえ、昨年(2013年) 6月、金融商品取引法(金商法)が改正された。これまでは規制対象とされなかったインサイダー情報を他人へ伝達する行為(情報伝達行為)や、インサイダー情報があることを仄めかして取引を推奨する行為(「詳しいことは言えませんが、今のうちに当社の株を買ったら儲かりますよ」など)(取引推奨行為)があらたに規制の対象とされることとなった。

法で禁止されるのは、これらの情報伝達行為や取引推奨行為のうち、相手方にインサイダー取引等を行わせて利益を得させる目的をもってなされた行為である。また、処罰の対象とされるのは、それらの行為によって実際にその相手方がインサイダー取引等を行った場合に限られる。

このような不埒な目的をもってインサイダー情報を外部に漏らすこと自体は、従前から各社の内部規程等においても禁止されているはずであるから、今回の法改正によっても従前の実務が大幅に変更されることにはならない。しかし、ひとたび不正なインサイダー取引が発生してしまった場合には、その情報源となった情報伝達者の行為についても、嫌疑の目が向けられるリスクは避けられない。また、後日、いくら当事者同士が「インサイダー取引等を行わせて利益を得させる目的はなかった」と主張しても客観的な状況次第では、処罰の対象とされてしまうリスクが否定できない。

ところで、M&A実務では、関係各所への根回しのため、公表前に外部者に対しM&A実施に関する説明を行う場面も少なくない。M&A 実施に関する情報は、インサイダー情報に該当するから、最悪の場合には、5年以下の懲役及び500万円以下の罰金が科せられるリスクがある。今まで以上に慎重な対応をとることが必要になろう。

〈参考金商法改正を踏まえた実務上のポイント〉
①M&A情報等の重要情報は、知る必要のない者には知らせない。
②外部者への伝達が必要な場合には、事前に、情報を知らせる相手方、時期、内容及び方法等について、法務部門がチェックを行う。
③実際に外部者へ情報伝達する場合は、書面によるものとし、その情報伝達の宛先及び目的を明示しておく。
④外部者へ情報伝達した場合、経過に関する記録を作成し保存しておく。

大場寿人(弁護士 三宅坂総合法律事務所)