グローパルトップクラス企業
(画像=T.Dallas/Shutterstock.com)

株式会社アウトソーシング(東証1部2427、以下「OS」) は、1997年創業、メーカーの生産性向上のためのアウトソーシング事業を行い、国内外にグループ会社58社、連結社員数が25,606人 (2015年9月30日現在)という規模に成長している。急成長を遂げているOSの戦略やROE向上に向けた取り組みを、同社が積極的に推進するM&Aの中心的人物である、専務取締役茂手木雅樹氏に伺った。

(聞き手:日本M&Aセンター 事業法人部上席課長 栗原弘行)

国内は高付加価値追求

— 業界動向をふまえた貴社の経営課題や業界再編の見方はどのようなものでしょうか。

グローバル化や人口減少により、日本のものづくりは変化しています。海外への生産移管により電機メーカ一を筆頭に製造アウトソーシング業界はシュリンクしているので、日本国内では付加価値の高い自動車関連産業や、成長が見込まれるITなので、私をはじめとしたチームで直接PMIに取り組みます。またグループ企業間でも連携をはかることで、全社的にシナジ一を発揮できる環境作りをし、パフォーマンスをあげていくようにしています。

M&A で重要なのはPMI

ー貴社のM&Aへの考え方についてお聞かせください。

オーガニック成長だけでは限界がありますから、環境変化に応じた事業構造の変革と、スピード感のある規模拡大のため、M&Aを加速していく必要があります。

当社の業績は顧客の事業環境に依存する部分が大きいので、ボラティリティリスクについては常に意識しています。
当社は人材アウトソーシングのノウハウを持っていますから、顧客業界・拠点にかかわらず人材を活かせる強みがあります。その意味で人材ストックの厚みを増していくことが当社の成長モデルそのものです 。当社はどんな業界でも自分たちのノウハウを活かせますから、新たな分野への進出であってもシナジ一を創出できるM&Aが最も良い手段だと思います。

M&A後のPMIも重視しています。企業の文化を覆すのはとても難しいと思っているので、買収後、対象企業に我々のやり方を伝えるというよりは、我々が相手のやり方を覚えるというスタンスをとっています。対象企業の強みを知り、その強みの活かし方のアドバイスをしていくという方法です。1年前までは、M&A後3ヶ月くらいは私自身が直接対象企業の社員と交流を図っていましたが、いまはノウハウが確立されてきているので、同業種のM&Aの場合は担当役員にPMIを任せています。新たな領域のM&Aや海外企業の場合は、人の力に頼る部分が大きいので、私をはじめとしたチームで直接PMIに取り組みます。またグループ企業間でも連携をはかることで、全社的にシナジーを発揮できる環境づくりをし、パフォーマンスをあげていくようにしています。

独自のM&A ポリシーの実行 =ROE向上

ーROE向上のために取り組まれていることは?

ROEは当然意識していますが、ROE向上を目的に特別に何かを実施しているわけではりあません。当社のM&Aポリシーに沿ってM&Aを実行し、着実に成長し続けてきたことが、ROE向上に表れてきていると思います。国内では、M&A件数を重ねたことでノウハウを蓄積し、M&A後に価値を最大化するモデルが出来上がってきているので、M&A件数の増加がROE向上につながっています。

ただ、ROEをスムーズに高めるのは簡単な事ではありません。当社においても5年間のシミュレーションを行っていますが、資本政策を所与のものとしてオーガニックに利益を上げただけではROEは低下していきます。ROEを高めるためには、『戦略的な成長戦略』と『自己資本の戦略的な活用(投資)』が必要になります 。これを両立するためには『戦略的な成長戦略に基づくM&A』が最も効果的です。
当社では、『成長戦略支援』を積極的に行うと同時に、株式交換やレバレッジの効く買収が可能なスキームの提供等を通じて、上場企業のROE 向上に向けたアドバイスも積極的に行ってまいります。

茂木まさき
(画像=Futureより)

27兆円の市場を視野に

ー今後の戦略をどのようにお考えでしょうか。

国内では、業界再編に徹底的に取り組んでいきます。再編が進む中で生き残っていくためには、規模が重要ですから、M&Aでスピード感ある成長を目指します。当社の売上規模の拡大につれ、相手企業の規模も変化してきており、2年前は10億円規模の売上の企業の買収が大半でしたが、1年前は50億円規模の企業、現在は200〜300億円規模の企業とM&Aが可能になってきていて、良いスパイラルに入っていると思います。

海外ですが、欧米の人材派遣事業は27兆円もの市場があり、さらに人材派遣を活用しようという動きが増えてきています。メーカーのライフサイクルが短くなり雇用が流動化しているため、日本同様にニーズがあります。メイドインジャパンの価値は高いので、日本のメーカーと共に歩んできた当社は興味を持たれやすいようです。

また、欧州の派遣単価は国内の倍なので、日本と同じ売上規模の企業でも実際のマネージメントレベルはその半分であり、当社が提供できるノウハウがたくさんあります。海外でも存在感を高め、グローバルでもトップクラスの企業を目指したいと思います。

ー本日はありがとうございました。ROEを向上させるため、というよりも成長のためにやるべきことを実行し、結果ROE向上につながったということがよくわかりました。今後の海外展開も楽しみです。

栗原弘行(事業法人部上席課長 株式会社日本M&Aセンター)

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