矢野経済研究所
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2018年度の輸液ポンプ出荷台数は前年度比102.1%の38,875台、シリンジポンプ出荷台数は同94.4%の19,925台

~汎用型の医療用ポンプは、ME機器中央管理室での集中購買・一括管理が進展~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の医療用ポンプ市場を調査し、品目別の市場動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。ここでは、輸液ポンプ、シリンジポンプの出荷動向について公表する。

輸液ポンプ市場推移・予測

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1.市場概況

近年、輸液治療の拡大により輸液ポンプが使用される機会が増え、またその他多くの治療に輸液ポンプが用いられるようになったことから、病棟や手術室、集中治療室、カテーテル室など様々なセクションで利用されるようになり、輸液ポンプの市場は増加傾向が続いている。加えて、中心静脈輸液や経腸栄養輸液などの目的特化型の輸液ポンプが院内だけではなく、在宅医療分野で需要が高まっており、機器のレンタル対応を行うディーラー網が整備されたことで、使用施設・患者数が増加する背景となっている。2018年度の国内輸液ポンプ出荷台数(メーカー出荷台数ベース)は前年度比102.1%の38,875台、2019年度は同105.2%の40,890台になると予測する。

また、輸液ポンプよりも微量な注入を行う場合に用いられる医療用ポンプとしてシリンジポンプがあり、正確な投与を必要とする薬剤が増加してきたことに加え、医療管理体制の拡充を背景として、シリンジポンプの使用頻度も増加傾向が続いている。2018年度の国内シリンジポンプ出荷台数(メーカー出荷台数ベース)は前年度比94.4%19,925台にとどまったものの、2019年度は同105.4%の21,000台になると予測する。

輸液ポンプ・シリンジポンプ以外にも、人工心肺装置やIABP(Intra-Aortic Balloon Pumping:大動脈内バルーンパンピング)装置、人工透析装置、血液浄化・濾過装置、手術室や集中治療室で使用される高低体温維持装置、放射線科の画像診断の際に使用される造影剤注入・注腸装置など、専用治療を目的とする多くの種類の医療用ポンプが使用されている。

2.注目トピック

スマート医療ポンプの導入動向

ITシステムを搭載し、Wi-Fi通信機能を利用して薬剤投与履歴をリアルタイムに医療記録として転送するスマートポンプは、主に汎用型の輸液ポンプや一般据置型のシリンジポンプとして導入されている。近年、販売台数も増加していると推測され、装置1台当たりの単価は上昇するものの、普及率がどこまで上昇するかが、注目されている。

3.将来展望

汎用型の医療用ポンプ(ペリスタルティックフィンガー型の輸液ポンプ、一般据え置き型シリンジポンプ等)については、ME機器中央管理室での集中購入・一括管理が進み、同一メーカー・同一型式に統一した上で数百台の医療用ポンプを一斉更新する医療施設や、その後も同一型式を追加購入するケースが増えてきており、今後も比較的安定した市場として推移する見通しである。
一方で、2025年に向けて医療機関の病床機能の再編が予定されており、高度急性期への移行は現在の一般病床90万床のうち18万床に集約され、多くの一般病床が減床または長期療養への転換も想定されることから、これらの機能再編が今後の医療用ポンプ市場の見通しに影響を及ぼす可能性も懸念される。